第二十三話「巫女=神子【Shrine Maiden】」・3
※注:真ん中辺りから地の文がひらがなになります。読みにくいかと思いますがご了承ください。
――△▼△――
ここは、クロノスの地下研究所の一角にある実験室。ここには様々な器具が揃っており、うっかり手を触れてしまったら大変なことになりそうな雰囲気のある物がたくさん置かれていた。そこに、二人の科学者の姿・・・・・・。レイヴォル博士とオルグロス博士だ。そんな二人の目の前には一つの台座が置いてあり、そこにはマインド・コントロールをかけられた状態の鈴華がいた。
「ではそろそろ始めるか。まずは麻酔からだ」
「了解・・・・・・」
コクリと頷いたオルグロスが麻酔針を鈴華の白く細い腕に突き刺す。そして、ゆっくりとピストンを押していった。
すると、鈴華が少し目を動かしたかと思うと、目を閉じて寝てしまった。
「よし・・・・・・ではこれからDNAサンプルを手に入れるぞ」
「ああ・・・・・・しかし、まだ材料がもう一人来ていないが?」
「なぁ~に、もう少しで来る。先にこちらを片してしまおう」
「そうだな」
ニヤリと笑みを浮かべながらレイヴォルが衛生マスクを着けるのを見て、コクリと頷いてオルグロスもマスクを着けた。
とそこに、ハァハァと呼吸を乱しながらアルフレッドが入ってきた。
「遅かったなアルフレッド」
「うっさいな~、これでも大変だったんだからね? ボクの貞操の危機だったんだから!!」
肩で息をしながらアルフレッドがレイヴォルに文句を言う。すると、レイヴォルはニッと口の端を吊り上げて言った。
「よかったな・・・・・・。美少女に襲われるというのもまた一興だぞ?」
「何言ってんだよ! ボクは――」
「クク、男・・・・・・だろ?」
「うっ・・・・・・そ、そうだよ? ボクは男さ!!」
危うく本音を口走りそうになったところにレイヴォルの言葉が被り、アルフレッドは少し安堵した。そう悪態をついたと周囲からは見えるだろうが、アルフレッドからしてみれば実際には助け舟を出してもらったに等しいのだ。
「レイヴォル。そろそろ始めなければ・・・・・・麻酔の時間も考えろ」
「フン、分かっている。ところで、例の研究は進んでいるのか?」
「ああ・・・・・・。この女の不死身の力を少しでも解析出来れば、確実に人間を不死身のゾンビにする薬が開発出来る」
オルグロスは片手にメスを持ち、鈴華の下腹部に切り込みを入れながらそう呟く。
「ち、ちょっと二人とも! 集中しないと余計な部分を傷つけたりしないの?」
「案ずるなアルフレッド。それに、例え傷つけたとしてもこいつは不死身だ。傷など数時間、いや数分もあれば治るだろう」
「その通りだ。それと、お前は外でノイズと待っていろ。衛生服を着ていなければ菌がこの神聖な体を怪我しかねん」
「ムカッ! なんだよその言い方! アムのバカ!!」
青筋を立てて叫んだアルフレッドは、踵を返してその場から出て行った。
「おれの名前はアムではなく『アダム=オルグロス』だ。変な呼び名をつけるんじゃない」
丸めがねを光らせながら眉を吊り上げ文句を言うオルグロスだが、その時には既にアルフレッドの姿はなかった。
レイヴォルは、作業をオルグロスに任せてスースーと寝息を立てているミーミルを抱き上げた。
「そいつがもう一つの材料か・・・・・・」
半眼で人を人とではなく、実験台・・・・・・実験材料としか見ていない様子のオルグロスが、ミーミルをそんな目で眺める。
「こいつは王族だ。こいつの持つ力と鈴華の持つ巫女の力。そしてあと一つ・・・・・・ここにある神族の力があれば素晴らしい物が完成するのだ。そう、最強の兵器がな・・・・・・」
「――ッ!? ま、まさか・・・・・・レイヴォル、お前がやろうとしているのは・・・・・・」
「ふっ、そうだ。神王一族の帝王を生み出すのだ!」
「なるほど・・・・・・初代神王一族の帝王――神崎王都は、不死身でないがために死んでしまった。だから、二代目は不死身として誕生させるというわけか。だが、巫女の力はどちらかにしか作用しない。巫女×王族♂、巫女×神族♂ならば不死身の力を持った王族と神族をそれぞれ生み出せるが、神王一族を生み出すことは出来ない。だからこそ、王族の卵子と神族の精子を巫女の力を媒体にするという人工的な方法を使い、二つの力を持つ神王一族を生み出すということか。だが、そうなれば相当な力を持つ兵器が誕生してしまうぞ? 手綱を操れるのか?」
「なぁに・・・・・・案ずるな。そのために俺達は“アレ”を開発しただろう?」
「ま・・・・・・まさか! あの首輪か?」
信じられないと言った顔でレイヴォルに訊くオルグロス。レイヴォルはコクリ頷いて言う。
「その通りだ。あれさえあれば、どんなやつでも簡単に操れる。それに、いざとなればあの巨大装置を使って心を粉砕すればいい」
「だから、ゼミネンヴェンジーにあの装置を運ぶよう命令したのか?」
ハッとなって疑問を抱いていたことについて追求するオルグロスに、レイヴォルは目を細めて言った。
「そうだ。あの装置には逆えん。現に、神族のあいつも心を失ったのだからな・・・・・・」
「お墨付きというわけか・・・・・・。ならば確実だな。それは実に楽しみだ。一体どんな兵器が誕生するのか・・・・・・」
「それは完成してからのお楽しみというわけだ。そして、完成した時には既にこの世界を手に入れたも同然だ!!」
不気味な笑い声が実験室に響き渡り、その笑い声は待合室で退屈そうにしているノイズ=ヴィンセントとアルフレッド=ユニヴァーンにも聞こえていた。
――△▼△――
ある日の朝・・・・・・。レイヴォルはある場所にやってきていた。それは、クローン製造室だった。そこには、鈴華のDNAサンプルや、あらゆる道具を使用して生み出された鈴華のクローンがカプセルに入って眠っていた。カプセルは不気味な緑色に光り輝き、体全身をその液体で満たされていた。口には呼吸装置を取り付けられ、そこからゴボゴボと泡が吹き出ている。呼吸をして生きている証だ。
「さてと・・・・・・あのクソジジイに言われた通り、鈴華のクローンを作ったはいいが、問題はちゃんと不死身の力を持っているかどうかだ・・・・・・。持っていなければただの失敗作に過ぎん。まぁいい。そうなれば、闇商人にでも売りさばいて研究資金にすればいいだけのことだ。何せ、こいつの体はまだ十分に役立つのだからな。あいつらが欲しがらないわけがない」
白衣のポケットに手を突っ込んだままそう呟くレイヴォルのメガネは、怪しく光り輝いていた。
次にレイヴォルは、別のカプセルの前に立った。
「ついに完成したのだな・・・・・・。だが、一つ許せないことがある。全く、なぜこうも成長が遅い? これでは肝心な力が発揮出来ないかもしれない!! くそ!! 急成長促進剤を注入したはずだが・・・・・・効き目がないのか? まだまだ分からないことだらけだ。これでは研究レポートをまとめられん。この実験が成功すれば、もっと別の実験もできるはずなのだ。何としてでもこの実験を成功させ、オルグロスの始めている実験も成功させる。そうすれば、確実にこの世界は俺達――いや、俺の物になる!! 覚悟しろ、神族の者共・・・・・・。この俺に力を与えなかったこと・・・・・・必ず後悔させてやる! くく、ンフフフ・・・・・・フハハハハハハハハ!!!!」
レイヴォルの高笑いはしばらくの間、クローン製造室に響き渡った。
――▽▲▽――
――ここは、どこ? あたたかい。このあたたかさはなに?
――これはお前の母親の温かさだ。
――わたしの、ははおや? あなたはだれ?
――お前を作り出した者だ。
――つくり、だした? どういうこと? ここはどこなの? わたしは、だれ?
――お前は俺のために作り出された兵器だ。神王一族二代目帝王――『神崎 妃愛』。それがお前の名前だ。
――かんざき・・・・・・ひめ。ひめは、へいきなの?
――そうだ。お前には『|Sevens・Crown』に入ってもらう。そして、そのリーダーとして王達を率いてもらいたいのだ。
――せぶんず・くらうん? りーだー? ひめには、おうをひきいることはできないよ。
――そんなことはない。お前の力は俺が一番知っている。お前には不死身の力だけでなく、巫女の持つ七力が携わっている。その七つの属性の力を活かせば、混合属性を作り出して攻撃することが出来る。少なくとも、七つ以上の属性を操ることが出来るということだ。それに、お前にはとある防具や武器を用意させてもらった。それを使えば、確実に神族を滅ぼすことが出来るはずだ!! 協力してもらえないか?
――・・・・・・。わかった、いいよ。ひめでよければ。こまってるんでしょ? こまってるひとは・・・・・・たすける。なぜか、そうしないといけないきがする。でも、ひとつ、おねがいきいてもらえない?
――お願い?
――うん。ひめ・・・・・・ままに、あいたいの。あわせて・・・・・・。
――・・・・・・。いいだろう、ほんの少しの間だけだがな・・・・・・。
――いいよ。
――少し待っていろ。すぐにお前の母親を連れてきてやる。
――ゴボゴボ・・・・・・。ひめは、どうしてこんなところにいるんだろう? それに、ままがこのあたたかさなら、ままは、すぐちかくにいるんじゃないの? ひめは、なんのためにうまれたの? つくり、だした? うまれたんじゃ、ないの? わからない・・・・・・。ひめには、わからない・・・・・・・・・・・・。
――・・・・・・ろ、起きろ、妃愛。
――え? ・・・・・・つれてきて、くれたの?
――ああ・・・・・・。そろそろ、テレパシーで会話するのも疲れてきた。起きてもらえないか?
――てれぱしー?
――まぁ、所謂脳内で会話をするようなものだと考えてくれればいい。さぁ、目を覚ませ。お前はもう目覚めることが出来る。さぁ、目覚めよ、神崎妃愛!!
めがさめると、ひめはなぞのえきたいのなかにいた。くちには、なんだかよくわからないものがつけられ、しゅういはみどりいろ。てをのばすと、なんだかよくわからないものにおしかえされる。たたいてみると、すごくかたい。しゅういをみわたすと、すこししせんをさげたところに、ふたり、だれかがいた。
すると、まっしろなふくをきたおとこのひとが、なにやらさわっていた。それをさげると、えきたいがなくなっていき、ひめは、しゅういをなにかにかこわれたじょーたいで、じめんにおりたった。
「聞こえるか、妃愛?」
ひめのなまえをよぶそのおとこのひと。でも、このこえにはききおぼえがある。
「あなたは?」
「俺の名前はレイヴォル=カオス=フィグニルト。お前を作り出した者だ」
このくちょう・・・・・・。なるほど、このひとがひめをつくったひとなんだ。
「ままは?」
ひめはしょーがいぶつごしにおとこにきく。
「こいつだ」
そーいっておとこがさしだしてきたのは、ぐったりとしたよーすのおんなのひとだった。ひめとにたようなかみのけをしている。
「おい、起きろ鈴華。娘の前だぞ?」
「う・・・・・・うぅ。ここは? あっ、レイヴォル!! っく、離して!! だ、誰か・・・・・・誰か助け――ムググッ!?」
「黙れ! さもなくば、ここでその首根っこかき切るぞ!!」
「ひっ!!」
なにかはなしているようすのふたりだけど、ひめには、なにもきこえなかった。
「ねぇ、ひめをここからだして・・・・・・」
「あまり本意ではないが、いいだろう」
そーいうと、おとこはひめをそとにだしてくれた。おおきくいきをすうと、なにかへんなにおいがする。つんとしたにおい、あまったるいにおい、なんのにおいなのかはわからない。ひめはうまれたばかりでしらないことばかりだ。
「あなたが、まま・・・・・・なの?」
「え? 私が? ち、ちょっと待ってよ! 私は子供なんて産んだ覚えは・・・・・・」
「まぁ確かに産んではいない。お前はまだ生娘のままだ。だが、お前の力は使用させてもらった」
「ま、まさか・・・・・・不死身の力を――」
「ああ、使わせてもらった。おかげさまでこの成果だ! どうだ、素晴らしいだろう? ハッハッハッハッハ!!! あのクソジジイもぶったまげるだろうな! 悪いな、妃愛。お前の母親は真を言えば、ミーミルという姫君だ。だが、あいつには今は会えない。手術をしたばかりで体が衰弱している。元気になるまで少しの間待ってもらおう。まぁ、案ずるな。死んではいない。その間、そこにいる鈴華に案内させる」
「は、ハァ!? わ、私が? 何でよ!!」
まゆげをつりあげて、わからないというかおでもんくをいうまま。それにたいして、おとこはしたうちして、なにかをおした。すると、ままのからだが、ぶるぶるとふるえてばちばちとしゅーいをなにかがひかった。
「どうだ? 凄まじい電撃だろう? お前の首についている首輪の存在・・・・・・忘れたわけではあるまい?」
「くっ・・・・・・ぅ」
でんげき? さっきの、ばちばちいっていたひかりのしょーたいは、でんげきというものらしい。ひめはまたひとつ、ちしきをえられてすこしうれしかった。でも、なぜかままがくるしんでいるすがたをみると、こころのおくがずきっといたんだ。
「さぁ、案内するか? さもなくば――」
「だめぇええええええっ!! ままに、てをださないで!!」
きづけばひめは、ままのまえにとびだして、てをよこにひろげていた。からだじゅうがあつい。どうなっているのか、じぶんでもりかいできなかった。
「なるほど・・・・・・心優しい人間に産まれたようでよかったな、鈴華?」
「だ、だから・・・・・・私は産んでないって!! って、ち・・・・・・ちょっと待って。仮にそうだとして、相手は誰なの?」
「何を言っている? さっきも言ったが、お前の純潔は奪われてなどない。疑り深いやつだ。それに、相手などいない。これは人工的なものだからな。男と言っても精子しか使っていない。神族のな・・・・・・」
「それは誰のなの?」
「それは企業秘密だ。ただ一つ言わせてもらうなら、まぁ、イケメンだということだ」
「そんなことはどうでもいい!! ちゃんと、あ、あるのよね?」
「ああ・・・・・・。分かったらさっさと案内しに行け!! さもなくば――」
「わ、分かった! 分かったわよ!!」
ままが、なにをおとこにかくにんしているのかわからないけど、とにかくままがたすかったようでよかった。そして、ひめは、ままとてをつないで、くらがりのへやをあとにした。
――△▼△――
「あの心では少しばかり厄介だな。やはり心を粉砕するか。出来れば穏便にことを済ませたかったが・・・・・・」
親指を甘噛みし、レイヴォルは悔しそうに一人そう呟いた・・・・・・。
というわけで、前書きにあるとおり最後あたり地の文がひらがなでしたね。
まぁ、妃愛が喋っているからです。複雑ですが妃愛の母親はミーミルで、父親は神族のあるひとです。鈴華はお腹を利用させてもらっただけです。なぜかというと、巫女が持つ七力という力と不死身の力を得るためです。普通はこんなことは無理なんです。人工的に行ったからこそできたんです。
まぁ、まだ産まれたての幼女なんで力も知識もまだうまく使えませんが。
てなわけで次回二十四話は水恋と同じく四帝族である最後の一人、嵐一族が出ます!




