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12話. 課外授業だと思ったら、魔物討伐クエストだった件

課外授業って、楽しい合宿的なやつかと思ってたんだよね。

海!キャンプ!バーベキュー!そんな青春イベントを期待してたんだよ!!

……なのに、なぜかあたしは、ギュウギュウ詰めの馬車に乗せられ、

着いた先は魔物が暴れまわる農村だった。

え、ちょっと待って。

これって授業じゃなくて、討伐クエストでは??

ま、まさか命がけなんて聞いてませんけどーーーー!?!?!?

 ガレスを含む中級クラスのメンバーと共に、すし詰め状態の馬車でガタゴト揺られ続け──ようやくたどり着いたのは、とある地方の農村。


 一方そのころ、貴族の上級魔導師と担任の先生はというと──

 ふかふかクッション完備、揺れ知らずの特別仕様馬車で、優雅に現地入りしていたらしい。


 ……これが、身分差ってやつか。

 こっちは揺られすぎて尻が四角くなったってのに。

 と、モブが嘆いても仕方ない。


 さて、この村では毎晩のように魔物が出没し、領民を襲ったり、農作物を荒らしたりしているとのこと。

 そこで王国の要請を受け、ジョン様とエリザベス様の派遣が決定── ついでに、中級クラスの6人も巻き込まれた。


 ──つまり、ここが課外授業の「会場」ってことらしい。


 いやいや、これ、授業じゃなくて実戦じゃん!?


 初級クラスのみんなは、今ごろ青い海と緑の山々に囲まれた島で、楽しく合宿してるはず。

 ボートに乗ったり、キャンプしたり、バーベキューしたり……。


 あぁ、絶対楽しんでる!絶対!いいなぁ……!!(羨望)


 それに比べてこっちは、まさかの魔物討伐。


 ──この差、あまりにも理不尽すぎるよ!


 と、モブがまたもや嘆いているが、既に課外授業は始まっていた。


「お前らに魔法ステッキを渡す!さっさと受け取れい!!」


 バッ!!と、中級クラスの担任が勢いよく袋から杖のようなものを取り出し、一人ひとりに配っていく。

 ……いや、最初は手渡してたけど、途中から完全に投げつけていた。


 この先生、短気で、すぐキレるという噂のある人物。アレク先生とは大違い。おかげで、あたしのテンションはさらに急降下。


 彼女の名は── イヴォンヌ・マクスウェル。


 通称、ヒス女史。


 長身で引き締まった体型、真っ赤な髪をなびかせ、メガネの奥でギラリと光る鋭い眼光。


 (こ、怖い……!!)


 そんな彼女の隣には、クールなジョン様と──なぜか恥ずかしそうにクネクネしているお嬢が、寄り添うように立っている。


 いやいや、お嬢、それ絶対ジョン様に気に入られようとしてるやつでしょ!?

 わざと頬を赤らめて、しおらしく見せようとしてるのが丸わかりなんですけど!?


 ……っていうか、ジョン様、完全にスルーしてるし!!


「いいか聞け、中級ども!そのステッキは、お前たち次第で自在に変化する。イメージしろ!相手を攻撃する最強の武器にも、自分を守る最適な盾にも変えられる!」


 ……と言われても、ただの棒切れなんだけど。


 すると、「えい!」と周りの生徒たちが次々に杖を武器へと変化させていく。

 鋭い刃先を持つ魔法剣、輝く金属のような戦斧、強固な盾……次々と生まれるカッコいい武器たちに、あたしは思わず感動した。


「アリアナ、リンダも試してみろよ」


 そう声をかけてきたのはガレス。彼の手には、騎士らしい大きな魔法剣が握られている。

 おそらく、王室の護衛として戦うために選んだ武器なのだろう。


「あの、ええと……」


 正直、どうすればいいのかわからず、戸惑ってしまう。

 その横で、リンダは小さなブーメランのような武器を生み出していた。


「すごっ!」


 完全に出遅れたあたし。気づけば、この場で杖のままなのはあたしだけだ。


「おい、早くやれ!いつ魔物が現れてもおかしくないんだぞ!」


 ヒス女史の叱責が飛ぶ。うう、怖い……。


「え、えっと、何か武器になれ~~!」


 とりあえず、勢いだけで念じてみた。


 ── カチン。


「ひぇっ!?」


 気づけば、あたしの杖はただの石の棒になっていた。


 ……え?なんで???


 周囲の生徒たちから失笑が漏れる。


 なんであたしだけ、こんなにつまらない武器なの!?


「なるほど……ま、いいか。よーく聞け。あの山を見ろ!」


 ヒス女史が指さす先には、ゴツゴツした山。よく見ると、一箇所だけド派手に崩れていた。


「あそこが魔物の巣になっている。奴らはこの村の農作物を荒らすだけでなく、人にも危害を加える。領民は既に避難しているが、現状ではここに住むことはできない。我々の任務は──魔物を退治し、この村を復興させることだ!」


 ……いやいや、今、普通に『任務』って言いましたよね!?

 先生、それもう課外授業じゃなくて、完全に討伐クエストなんですけど!?

 紙切れ一枚の雑なメモ書きじゃ、こんな重大任務だなんてわかるわけないでしょーが。


「アリアナ、な、なんか音が聞こえるよ……!」


 リンダが緊張した声で訴えてきた。


 ──ん? と思い、あたしも耳を澄ませる。


 ザザ……ザザザ……!


 何かが擦れるような音に混じって、かすかにシャーシャーと鳴き声が聞こえる。そして、それに合わせるように…… 地面がビリビリと揺れ出した!?


「いよいよ来たぞ!戦闘体制を整えろ!!」


 ヒス女史が怒鳴るのと同時に、遠くから無数の輪っかみたいな物体が転がってくる。


 ──えっ、何アレ? タイヤ?(違う)


 よく見ると、それらは蛇のような生き物で、自分の尻尾を噛んだままぐるぐる回転しながらこっちに突っ込んできていた!


「ウロボロスか。中級にはちょうどいい相手だ。ガレス、手本を見せてやれ!」


「かしこまりました」


 ガレスがすぐさま前に出る。


 ──対して、あたしは即座に皆の後ろに隠れた。


 だって!リンダが言ってたもん!!

 ウロボロスの全身には毒々しい鱗がビッシリついてて、猛毒を撒き散らしてるって!!


 ── 無理無理無理無理!!!

 あたし、毒耐性ゼロなんですけど!!??


 こ、怖いよおおおお!!!


 帰りたい!!帰りたい!!

 できることなら地面に埋もれて消えたいぃぃぃ!!!


 (↑必死に地面をホリホリする)



魔物の大群、襲来。

猛毒持ちのウロボロスが、ゴロゴロ転がってくる。

周りの生徒たちは武器を構え、果敢に立ち向かっていく……。

そして、あたしはというと──

全力で、地面をホリホリしていた。(←現実逃避)

いやだ!!戦いたくない!!帰りたい!!

初級クラスののんびり合宿に混ぜてえぇぇぇ!!!

そんな感じで、あたしの過酷すぎる課外授業が、

今、幕を開ける──(涙目)!!!

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