Part90 碧き森なの
昨日は忙しかったので予約投稿にする予定だったのですが、どうやらうまく予約出来ていなかったようで投稿が開いてしまいました。
Part91は今日中に投稿するかもしれません。
碧い光の降り注ぐ幻想的な森の中で、俺は切り株の精霊カルカフと戦っていた。
「——っと、ここか!」
地面から突き出した木の根を回避し、その硬直を狙って突っ込む。
根を地面に通して死角から攻撃するというのはかなり強力な技だが、その分身体が地面に固定されるため硬直が生じる。
対応さえわかれば苦戦することのない雑魚敵だ。
横薙ぎの一閃が切り株を斬り、カルカフは粒子のようになって消滅した。
「ドロップアイテムの回収っと」
霊座樹の枝や精霊核などのアイテムを回収し、俺は一先ず刀を鞘に収めて腰を下ろす。
先程から何度か戦闘を重ねているが、モンスターはカルカフが殆どだ。
他に戦う相手がいないわけではないのだが、先程のキノコ熊のように遠目で見て勝てないと分かるようなものや、常に七、八匹程で行動しているものなど、回避するべきであろうモンスターが多いのである。
それらに比べると、このカルカフは毎回単独で現れる分、かなり戦いやすい。知覚範囲が広いのか、避けて通ることはできないのだが。
スキルは使えず、防具は装備できず、ステータスも大幅に減少。
かなり制限された状況だが、今のところ問題はない。
日頃から地力を鍛えてるというのもあるだろうが、回避主体のプレイスタイルがこの制限に適しているんだろうな。
装備で補えない分、物理タンクとか絶望的に相性が悪いと思う。まあ物理タンクは刀使わなそうだけど。
「ただ……回復アイテムは欲しいな」
常に回避を最優先に考えているとは言え、全ての戦闘を無傷で終えることは不可能と言っても良い。
防御力が余りにも低いせいで足先に掠るだけでもHPを持っていかれてしまうからだ。
流石にそれだけで目に見えてHPが減ることはないが、回復アイテムが存在しない以上無視することはできない。
もしかしたらと思ってカルカフの落とした枝を噛んでみたりもしたのだが、当然HPが回復することはなかった。若干甘かったけど。
「カルカフの知覚範囲から逃げられればそれが一番良いんだけどな」
いっそ木の上に登ってみるというのもアリか。
この森を構成する木々は軒並み大木なのだが、登ろうと思えば登れる高さだ。ステータスが減少しているとは言え、それでも現実の肉体よりも遥かに身体能力は高いわけだし。
そう思って上の方を見ていると、遠くの方の枝の上を一人のプレイヤーが移動していた。
やっぱ登ってる人もいるんだなあ。
……なんて呑気に考えていたが、黒く巨大な猿みたいなモンスターがそのプレイヤーを追いかけているのが目に入ったところで考えるのをやめた。
ほんと下手な行動はしない方がいいな……。
同じ場所にいるのも危険そうだし、とりあえず動——
「やっほーなのー!」
「!?」
不意にかけられた声に、俺は思わず飛び起きる。
いつのまにか俺の横に立っていた少女は、そんな俺の様子を不思議そうに見つめていた。
プレイヤー……ではなさそうだ。注視してもネームバーが見えない。
なんでNPCがここに?
「お兄さん、門探してる人なの?」
「門……? 何の話をしてるんだ?」
「門は門なの。お兄さんが何色かわからないけど、私は碧色なの」
碧色? それはこの碧き森に関係しているものなのだろうか。
そこまで考えて、門という単語と少女の特徴的な語尾によって俺の脳内に一つの言葉が浮かぶ。
「あー……冥き門関係か?」
「それなの!」
ドンピシャだった。
「ちなみに冥き門はジャンクちゃんのところだけなの。ナノンのところは碧き門なの」
「色分けされてるのか」
冥き門は完全に固有のものだと思っていたので、まさかシリーズものだとは思わなかった。
冥から色を連想できないしな。
……ってことはもしかして他にもある?
碧き森には碧き門があって、冥き跡地には冥き門があって……つまり地名に色が付いているエリア全てに門が存在しうるのか?
確か、最初に挑戦したダンジョンが「白き谷」だったような気がする。他にもいくつか見たことがあるし、これ各地の門回って武器手に入れまくったら凄いことになりそうだな。
「あ、門の武器は二つ以上持てないの。渡していいのは一つだけなの」
「……まあそんなに甘くないよな」
「お兄さんはいま武器持ってないみたいなの。今度持ってくるといいの。承認するの」
「承認?」
「お腹すいたからもう行くの。ばいばいなのー!」
行ってしまった。
言葉の意味がわからないままだったが……まあいいか。このクエストが終わったら武器を持ってもう一度ここに来ればいいのだろう。
それにしても……
「ゲートキーパーって全員変な語尾なのか?」
何となく、他のゲートキーパーも見てみたいと思う俺であった。




