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043静寂と『シエスタ』『保留』と『第三の道』



 仮想空間にある『球体フリースペース』には霧消したと思われていた鹿獅子さんはまだ残ってた。


 きまぐれなのかはわからないが、重要シーンじゃなくても案外いるのかもしれない。シマリスが鹿獅子さんの背中に乗っている。 


 にゃんこわんこはメタスキル『フュージョン』でひとつになっている。生まれつきフュージョンしていたらしく、2匹に別れることもできる。実はフュージョン時にはさらに可能な現象があるけれど、それはまた別の機会――。


 とにかく元がフュージョンなので、あなたは猫派?犬派?論争に終わりが告げられる。犬も猫も好きだしフュージョンしてるのだ。



 二者択一は往々にして視野と意識が広がれば、大抵第三の道もある。


 何かにどちらか迷った時は『保留』という手もある。即決がいいとは限らない。時間がかかり、その分生産性は失われることもあるかもしれないが、創造性は増すかもしれない。寝かすことによって何らかのインプットにより熟成することもあるのだ。



 ダ・ヴィンチはモナ・リザを描いてやめたり放置したりで、十六年かけて天に召される直前に完成させたそう――。


 ややもすれば効率性と合理性に追われる昨今ではあるが、『最適化』とは早すぎず、遅すぎずの適宜なタイミングなのだ。


 しかも、ギリギリセーフというよりかは余裕もあるのが最適なのだ。余裕/余録を含めての早すぎず遅すぎずなのだった――。


 クリエイティビティとはきっとそういうものでもあるのだ。


 そんなことをわんこにゃんこを観ながら私たち数人は感じていた――。


「即興演奏はその瞬間の最適な振る舞いなのよね。そういう現象が起こるの」


 私はそう言葉に出した。現実世界では歩きながら。


 仮想空間ではソファ/Oオーのフカフカおなかに寝そべりながら。ソファはオジュのもっちり太ももに寝そべりながら。オジュはタオン/サリュンのもにゅもにゅ太ももに、サリュンは誰かの太ももに。そうふにゃりと連なっていた。


「打ち上げは早めに切り上げましょう」


 会場へと歩きながらアプル/フィオナは喋った。


「「というか行く必要ある?」」


 私は――シフォン/ハロと同時に話をした。



「「「「うーーーーーん」」」」



「行かなくてもいいんじゃない?予約なしの自由参加だしさ」


 そう私たちは結論づけたのだった――。



***



 ふと、気がつくと私は仮想空間の球体フリースペースでセッション中だった。


 現実だと感じていたが、それはフラッシュバックだったのだ。


 少し時空――音が歪んだ。


 それには周囲のメンバーも気がついたようだ。目をパチクリしたり、周りを見渡すメンバーもいる。


 私はユニットにテレパシックなサインをSync/共有し、右手を振り上げ、手を握ってセッションを終了させた。


 音が止まった。サイレンス。静寂――。




 そこに鹿獅子さんはいなかった。



 楽器をユニークスキル『格納』によって収納し終わり――飲みたい人は『お白湯』を飲んで――



 「休憩したら何するー?」



 「お昼寝するー」



 『シエスタ』開始。



 すやすや……。





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