旅の終わり 完
ザアアア〜〜〜〜ザアアア〜〜依然激しく降りしきる雨
スーの携帯にこの場所のオーナーから連絡があり先程のチャイムがお化けでは無いことを知りようやくホッとした一同。
良かったあ、パンツのお化けじゃなくて、サーとスーはほっとしたそうな。
今子供達は布団の中で寝そべり夜中の語り合いをしている。
「あ〜あ、もう冬休み終わっちゃうね、学校が始まるのかぁ〜」いつも通り休みが終わりに近づくのを感じて少しセンチメンタルになる冬馬君
「この旅行終わったら、さすがに家に帰って宿題とか色々しなきゃ」と大喜
多網やきみ子も「この休みも楽しかった」
ああ、そうかもうみんなも帰っちゃうのか、みんなともお別れ、何だか無性に寂しくなる。旅行も明日帰るんだ。
「でも、この秋と冬休みも色々あって楽しかったね」
「ハロウィンパーティー」と、きみ子
「ああ楽しかった」「スーのお見合いに、冬馬家に犬も来た」と、ニンマリ大喜「それにみんなでクリスマスパーティー、蛇鰐美ちゃんにも会えたしね」冬馬君も続く、そして「夜の恐怖ドライブと沢山スーが振られた」ニヤリ多網、後ろででスーが泣く「ぬおおおおんっ」
「ああ楽しかったなぁ」
「本当いつまでこうして遊んでても飽きないね」
「明日雨やまないでもう一泊できたらどうする?」
「最高〜〜」「この場所居心地良いや〜自分達の家だったら良いね〜」すっかりこの場所が気に入った様子。
子供達はずっと寝ないで喋っていた、激しい雨音も子供達にかかれば素敵なBGMに早変わり。雨の音を聴きながら心地良い時が流れている。
子供達に負けじサーとスーも寝ないで語り合っている。
今日は楽しみにしていた旅行最後の日、すぐに寝てたまるか〜。
「あーあ、もう旅行終わって仕事始まっちゃうのか〜」無論この発言はサーである。
「僕はずっと休み」とスー「40過ぎて遂に無職になっちゃった、この先どうしようかな」少し不安げな表情を浮かべる。
「仕事は色々あるしなんとかなるよ、せっかくだしやりたい事やってみたら?」
「でも、やりたい事が何だか分からないなぁ」
「確かに、やりたくない事ばっかやり続けて生きてきたから、いざやりたい事さあやっていいって時、何がやりたい事なんだか分からないよね」とサー。
「うん、良く仕事の休みの日何しよう?って結局やりたい事なくて一日寝てたり」
「寝る事がやりたい事なのかもねガハハハハ、まっ焦らずいきましょう」二人は笑いあった。
「でも仕事が無くなって嬉しい反面、これからどうやって生きてこうとか不安にもなるね、辞めなきゃ良かったかもとか考えたり」
「でも、結局考え方次第じゃない?そうやって後悔や不安で見たらいくらだってそう見える訳だし、でも今の状況がチャンスなんだって見たら、人生の新しい一歩も踏み出せる訳だし、新しい可能性かもよ、大丈夫なんとかなるよ」
「あははは確かにね、僕は良い友達を持って幸せだよ、ありがとうサー」「そんな僕だって」二人は何だか気分が良くなって来た。
「そう言えば僕だけ飲んでたから、サーも良かったら飲めば?」
「じゃあ、仕切り直しといこうか」サーは立ち上がり冷蔵庫からビールを持ってきた「旅先の夜中の語り飲みじゃ」
それを見た多網「大人だけずるい」
「今日は旅行最後の夜、みんなもジュースにお菓子に盛り上がろう」
「ひゃつほ〜〜」子供達はサースーコンビのこんな所も好きだった。
スルメイカを食べながらサーとスーの語り合いは続く。
ザアアアザアアア〜〜「旅先のこんな雨も乙だよねぇ〜」上機嫌な二人は心の中思う、ただし雷が鳴らなきゃね。
この時子供達は凄まじい遊びをしていた、それは遊び発明の天才児こと多網が考えた遊び「我慢ゲームしよう」
「なに多網その我慢ゲームって?」興味津々な冬馬君と大喜
きみ子は「ああ良くやるあれね」と頷いている。
目の前に四人の大好物コーラグミを多網が並べる
「先に食べた人が負けね」
冬馬君と大喜はずっこけた、なんちゅ〜遊び、餌の前で待てを言われて放置された犬か、こんな遊びを良くやってるの?こんなの決着つかんだろ、いくらでも我慢出来るわ〜〜。
しかし、目を真っ赤に充血させたきみ子がグミに飛びついた、パクッ、クチャクチャ「あーしんどい、結構我慢できたけどもう限界」多網も顔を真っ赤にして一言「危うく負けるとこだった」
冬馬君と大喜は再びずっこけた、どんだけ我慢出来ないんだ、こ奴ら犬にも負けるであろう。
大人たちの会話も続いている
「でも本当旅行とか、知らない場所に来るって面白いね」グビッ、ビールを口にふくみニンマリ微笑むサー。
さきいか君を口にほうばり頷くスー(さすがにもう酒は飲めないのか、飲んでいない)。
「日常からの解放感みたいなのがなんか良いのかな」
二人は空想する、スーツとネクタイと言う繭を脱ぎ捨て、どこまでも高く高く飛んでいく、会社の人や社会の目と言う蜘蛛の巣を突き破り、サースー蝶々はどこまでも飛んでいく。
ひやっほ〜〜良いぞ〜!!
突如雷鳴轟くゴロゴロゴロゴロ〜〜直撃
「ほぎゃ〜」サースー蝶々は真っ黒になり突如何故かダンゴムシに返変身し落っこちて行く「あ〜〜れ〜〜」地面には先程のパンツのお化けがインキンタムシ達を引き連れて待っていた「やあ」
「出たな〜パンツお化けめ、今の俺たちをインキンタムシにしようったってそうはいかないぞ、我々は今はダンゴムシなのだからそんな攻撃効かないぞ」「ならば再びパンツをはける身体に戻してやろう」
「ふぎゃあああっ」雷で意識を失いかけていた男達は目を覚ます(てか、なんだよこのくだりは)
「それにしてもサツキさん残念だったね、スー相当気に入ってたでしょ?」
「えっ、そっそんなやだなぁ、分かった?」(あれを見てて分からん奴は相当だぞ)
「まあね」
「あははは何だか恥ずかしいよ、旦那さんがいたなんて」
「またチャンスあるよ」
「なんか人前での自分の立ち振る舞いがたまに恥ずかしいよ、特に好きな人の前なんかテンパっちゃうよ」
「大丈夫僕も常にだから」二人は笑いあった「ハッハッハッハ」
ちなみにこの時子供達が遊んでいた遊びは名付けて「料理人ごっこ」これはきみ子によって考えられた、色んなお菓子やジュースを組合せて口にほうばる、誰の作品が美味しいかを競う遊びだ。
しかし多網の作ったものは誰も食べなかった、牛乳にスルメイカとメロンソーダと沢庵と唐揚げを入れたからだ。奴はこのドリンクをこう命名した「レッツ多網パーティー」。
「こんなの飲めないよ」大喜がどける、この時、悲劇が。
大喜が動かしたグラスを先程まで飲んでいたビールと勘違いしてサーが飲んでしまったのだ。
彼はレッツ多網パーティーと異名を名乗るドリンクに恥じない働きをした。サーの顔はみるみる青ざめ何故か両手を上下交互に振り回し、体全身、ケツの穴からすらもレッツ多網パーティーたる液体を噴出させそうになった。
もし身体中の穴と言う穴からレッツ多網パーティーを噴出させていたら多網はこう囁いていただろう「パーティーズオーバー」
いや、その前に凄まじい光景だったろう。
こうして夜遅くまで笑いの止まないみんなの宴会は続いた。
いつまでも寝るのが惜しい本当に楽しい一時であった。
夜中ふと目を覚ました冬馬君
「あれ一体今何時何だろう?」辺りを見るとみんなも寝ている、時刻は深夜三時
やはりすぐに気になったのは雨だった。
ザアアア〜〜ザアアア〜〜激しい雨の音を聞き嬉しくなる冬馬君「やったまだ強く降ってる、今日も泊まれるかも」頼む朝まで降っていてくれ!!
朝誰かが肩を揺する「冬馬起きて」肩を揺すっていたのは大喜
「あれ?」冬馬君は驚く、何故ならみんなは起きて、荷物を整理して片付けているからだ、まさかっ?
深夜まで降り続いていた雨は嘘のようにあがり外は晴れていた。
ああ、もう帰るんだ。
この楽しい時間が終わりに近づいてきたのがちょっぴり寂しかった。
みんなは支度を終え、いよいよこの場所ともさよならする時が来てしまった。
「楽しかったなぁ、ありがとう」きみ子が家に向かってお礼を言う、僕らもそれを真似した。
「ああ、なんか来た時が懐かしいなぁ」玄関付近で大喜がそんな事を囁いていたのがなんだか耳に残る。
僕らは帰り道気になっていたお地蔵様の所に寄ってみた「まだ壊れてるかな?」外を見てみると地元の人がお地蔵様を直している最中で、それを見てホッと安心した。「良かった」「さあ、帰ろうか」
ブウウウウ〜〜ンッ
バイバイ何度も通ったこの道
あっ、良く買いに行ったスーパー
楽しかった旅行
みんなで過ごしたこの一時を僕はきっと忘れないだろう。
大人になって思い返したらどんな気持ちになるんだろう?
そんな事を車から外の景色を眺め思った。
「また来たいね」ときみ子
本当に
青々とした雲ひとつない空
新鮮で美味しい空気
山々に囲まれ、生き生きとした木々が誇らしく立ち並び、そこに住まう生き物達
そして何より一緒に来たみんなと、みんなで作った思い出達
楽しかったなぁ
また絶対に来たい
いや
必ず
もし、いつか戻って来た時
その時は、大人になっているかも知れない
自分の家族と子供を連れて来るのかもしれない
でも、きっと
みんなで過ごしたあの場所に戻った時
あのリビングや露天風呂、和室の部屋
時間を超えてみんなとの思い出を見た時
僕はきっと泣くと思う。
暖かい喜びとぬくもりと共に




