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追放された録画士、配信で無双する 12話完結  作者: もかどら


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12/12

最終話 見返す一日

翌朝、ギルドは異様な静けさに包まれていた。


その中心にあるのは、レイが机に並べた帳簿と記録だった。

荷の横流し。

魔物誘導。

被害の偽装。

そして、裏で動いていた人間の名前。

点だったものは、もう逃げようのない線になっている。

ギルド長は、その書類を一枚ずつ確認し、やがて低く笑った。


「……ここまで揃っていれば、言い逃れはできんな」

その言葉が出た瞬間、部屋の空気が変わった。

レイを追い出した時には、誰も疑っていなかった。

役立たずだから捨てたのだと、そういう顔をしていた連中が、今は誰ひとり、同じことを言えなくなっている。

「追放の件も、調べ直す必要がある」

ギルド長の一言で、部屋の奥にいた数人が顔を強張らせた。

その中には、レイを見下していた顔もあった。

勇者パーティーと関わりの深い商会の人間。

伝令役だった男。

以前、レイを“記録係としては優秀”と笑った者たちだ。

「待て。これは誤解だ」

誰かが言った。

だが、もう遅い。

帳簿の端には、勇者パーティーの文書と似た印が残っていた。

しかも、荷の流れを追えば、彼らの周辺で不自然に物資が集まり、困った街道を“助ける”形で評価が作られていたことが見えてくる。

「自作自演か……」

レイの横で、商会の男が青ざめた。

「そんなつもりでは……」

「つもりじゃない」

ギルド長が切り捨てる。

「結果として、街を不安にし、人を困らせ、その上で価値を得ていた。

それを見過ごせるわけがない」


---


その知らせは、あっという間に街へ広がった。

最初は噂だった。

次に、ギルドの正式な調査が入った。

そして、関係者の顔が一人ずつ崩れていく。

「勇者パーティーの周りで、そんなことが?」

「荷が消えたのは偶然じゃなかったのか」

「助ける側を演出していたって、本当か?」

広場でも、酒場でも、同じ話が飛び交う。

かつてレイを追い出した時、勇者パーティーは“正しい選択”をした顔をしていた。

だが今、その顔はどこにもなかった。

レイは広場の隅で、その光景を黙って見ていた。

追放した側が、追放した理由を問われている。

役立たずと切り捨てた男のほうが、証拠を持って真相へ辿り着いた。

これ以上ないほど分かりやすい逆転だった。

「……あいつ、本当に一人で?」

「らしいぞ。しかも死にかけながら、全部拾ってきたって」

「じゃあ、追い出されたのは……」

言葉が途中で途切れる。

それだけで十分だった。


---


午後になると、勇者パーティー側の関係者がギルドに呼び出された。

レイはその場にはいない。

だが、廊下越しに漏れてくる声だけで、何が起きているかは分かった。

「証拠は?」

「そんなもの、いくらでも偽造できる」

「偽造していない。こちらで確認した」

「……っ」

沈黙。

次に聞こえたのは、喉の奥で何かが詰まる音だった。

その時、扉が開いて、ひとりの男が廊下へ押し出される。

見覚えのある顔だ。

以前、レイを見下していた伝令役だ。

目が合う。

男は一瞬で顔色を失った。

「……レイ、か」

「どうも」

レイは短く返した。

「お前が……こんなものを」

「別に、特別なことはしてないです」

「ふざけるな。お前は追放されたんだぞ」

その言葉に、レイは少しだけ目を細めた。

「だから何ですか」

静かな声だった。

怒鳴り返す必要はない。

もう、相手は自分より上にはいない。

「役に立たないと思ったんでしょう。

でも、役に立たないのは、見ないまま切った方じゃないですか」

男は反論しようとした。

だが、その前に背後から冷たい声が飛ぶ。

「事実だな」

振り返ると、ギルド長が立っていた。

「少なくとも、君たちが見捨てた男は、証拠を揃えて真相へ辿り着いた。

そして君たちは、まだ言い訳を探している」

その一言で、男は何も言えなくなる。


---


夕方、街の掲示板には新しい通知が貼られていた。

勇者パーティー関係の調査継続。

不正な流通の停止。

関係者への聞き取り。

そして、レイ・アルドの正式な功績認定。

その文面を見た時、広場の空気が一瞬だけ止まった。

「……あいつ、認められたのか」

「追い出されたやつが?」

「いや、むしろ追い出されたからこそ、ここまで来たんだろ」

レイはその群れの外に立っていた。

もう、追放された側として隅に立つ必要はない。

今はただ、見返した結果だけが残っている。

彼は掲示を一瞥して、少しだけ息を吐いた。

ざまぁ、というなら、これ以上ないほど分かりやすい。

追い出した側は落ち、追い出された側は立った。

しかも、それが私怨ではなく、証拠と結果で示された。

「……終わったな」

誰に向けたでもない言葉だった。


---


夜、レイは丘の上に立っていた。

追放された夜にも立った場所だ。

あの時は、寒くて、何もなくて、ただ空っぽだった。

今は違う。

街では、自分を見下していた連中が言葉を失い、

自分を切り捨てた選択が間違っていたと知らされている。

そして自分は、その一歩外側で風を受けている。

「悪くない」

そう呟いたレイの声は、少しだけ軽かった。

もう、相手に何かを期待しない。

説明して欲しいとも思わない。

勝手に捨てたなら、勝手に見返されればいい。

それだけだ。

レイは踵を返し、街へ戻る道を歩き出した。

追放された男は、追放した者たちを見下ろせる場所まで来た。


そしてそのまま、もう戻らない。

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