第105話 ゾンビだらけ
「よし、ここから適当に見回りをするぞ。見つけたら電話で連絡してくれ。倒せるなら倒して構わない」
場所は中央区西部、私たちは二手に分かれて調査することになった。
私は冬木と一緒になった。高層ビルが建ち並ぶ日本経済の中心地点、ここでゾンビは出てほしくないが、実際はもう既に出ているらしい。
「ふいぃー、修司おらんくなったし、コンビニでも寄るか〜」
(頼りない……)
マイペースというか、なんというか、彼が本当に戦えるのかすごく気になる。
「君〜かわいいねぇ。いつか俺と一杯やらへん?」
「すみません、それはちょっと……」
「まあ、そやなー、べっぴんさんやもんな!」
しかもコンビニ店員をナンパしている……もしやコイツ、うまい言葉で女性を落として遊びまくるタイプのカスなのか?
「私先に出てますよ」
「わかったわー」
私はコンビニの自動ドアを通って外に出る。
「……そういうの迷惑だから辞めてくれないかなぁ……」
お忍びでお出かけしてたのに、たくさんの報道陣に囲まれていた芸能人って、こんな気持ちだったんだと思う。
何故かは知らんが、コンビニを出たら目の前にはたくさんのゾンビがいた。
そしてさっきとは全く違う血みどろの光景も、また広がっていた。
(もういいや。倒しちゃおう。もう人間みんな逃げたっぽいし、多少オーバーでも問題ないよね?)
ゾンビの手が私の身体に触れそうになったその瞬間、私は魔法を発動させる。
「不快」
私の周囲にいたゾンビはノータイムで燃え尽き、消し炭になる。私はその流れで、手のひらに火球を作る。
「『オーバーバーン』」
オレンジ色に染まる閃光が一帯を包み込み、道路に沿うように大量に出現したゾンビを、大火力で一気に焼き尽くす。
乗り捨てられた車も消し飛んだようだが、そんなものは知らない。
人の体が焼ける臭いと、巻き上がった灰と粉塵が充満する、
「どうしたー……何が起こったんや……?」
「ゾンビが出たから消毒した」
「汚物は消毒ってか?元ネタもこんなことせえへんわ、ボケ」
冬木は騒ぎを起こしたからなのか、それからすぐにコンビニから飛び出してきた。
これでも火力を抑えたのだが、やっぱりビルの外壁が焦げたりガラスが溶けたりしている。道路のアスファルトも焦げ付いたり、割れていたりして、全面補修が必要そうだ。
「何もしないよりはマシでしょ」
「それ言われるとキッツいなぁ」
冬木はこのことを高宮先輩とかの方に伝えるらしい。ここでの現場検証を行えば何かがわかるかもしれないからだ。
突発的ではあったけど、ゾンビは私がコンビニからでた時、既にたくさん現れていた。
狙っているとも取れる動きだった。
(結局私には敵わなかったし、そんなに気張っても意味ないけどね)
◇◇◇
「中々派手にやりましたね……」
「大丈夫やろ?この程度この仕事やってりゃよくある話、それくらいは政府も理解している」
「それにしてはオーバーキルじゃないか……?」
すぐに駆けつけた警察と他の2人とともに、私は事情聴取と現場検証を行っていた。
主に戦闘時の状況を聞かれた。私が魔法であらかた吹き飛ばしてしまったため、ゾンビの人数はもう全くわからなかったらしいし、身元も判別出来ないみたいだ。
「だが……今回このコンビニをピンポイントに狙ってきたのか?」
「私が出たときにはもうスタンバイしてたんだよ。びっくりしたよ」
「……なるほどな……実は、これまでゾンビが出現はしているが、今回と同じく必ずと言っていいほど、付近に自警団の所属者がいたらしい」
「そうなの?なら犯人って馬鹿じゃないの?それか私たち狙い?」
そう言うと、鷺沼さんは下を向いてしばらく黙り込んだ。
「だよな……普通に考えればそうだ。俺たち狙いだとすれば辻褄は合う……だが、もしそうなら何故本気で殺しに来ない?この程度じゃ俺たちが死なないのはわかっているはずだ」
「確かに……もう事件は何回も起きているんですしね」
殺さずにゾンビを使ってこちらを攻撃し続ける理由……
「考えていてもきりがない。今は都崎からの連絡を待って事件を解決していくしかないな」
鷺沼さんは誰かに電話をかけていた。
事件の全貌は、未だ遥か遠い場所にあった。




