第100話 (第3章最終話)7年間の終着点
「はあ……昨日の学校疲れたあ……」
フォーリアとの戦闘と、星姫の件が解決してから2日が経った。
まだあの時の疲労が残っている。間に学校を挟んだから尚更だ。
俺が机に伏してぐでっとしているその時、玄関のチャイムがピンポーンと、鳴った。
「ああ、やっと来た」
俺はドアを開ける。そこにいたのは、一応傷もある程度治って、退院が認められた美空さんだった。
「やっほー!美空さんだよ!」
「さっさと入ってください。ただでさえこないだの件で疲労がひどいんですから」
「辛辣ー、まあ疲れているんだろうけどさ」
適当にお茶とお菓子でも用意して、美空さんを机の場所に案内する。
「ありがとう、今回解決してくれたんでしょ」
「一悶着ありましたけどね。あのボコボコになった住宅街見たでしょ」
「あれは凄かったわね……なんというか、恐怖しか感じなかったわ」
美空さんはすごく微妙な顔をして、そう言った。
「でも、正治くんに任せてよかったわ。快征にもお礼を言わないとね」
「快征さん?」
久しぶりに聞いた名前だ。
最近は彼が話題に出てくることが少なかったから完全に忘れかけていた。
「そうそう、快征からアドバイスをもらったのよ。正治くんに任せたら事態が良くなると思うって。まさか星姫ちゃんと面識があるとは思わなかったけど、都合が良かったわ」
「それじゃあ、もとよりこれを全部俺に丸投げしようとしていた……と?」
「そ、そんな怖い顔で見ないでよー!良いじゃない上手くいったんだから」
はあ、と、俺はため息をついた。見返りはあったから別に問題はないし、後遺症も無いからデメリットも無いが、なんだか納得がいかない。
「そう言えば、事件の動機って話したほうが良いですかね?」
「そうね。分かったなら教えて欲しいわ」
「わかりました、では――――――――
「なるほどね……100人の命を代償に、二人の家族を生き返らせる、ね……そして、結局それも嘘だった。それで、私が聞いたフォーリアの目的に繋がるわけね」
改めて思い返すと、随分と胸糞悪い事件だった。おそらく最初の殺人事件も、犯人はフォーリアだ。星姫には見せかけの希望を突きつけて、あいつの計画に都合よく利用する。
「それに……バックには魔王がいるのよね……人間界でこんなことが起こるとなると、もう既にレッドゾーンとも言えそうね」
「嫌な想像なんていくらでも出来ますからね……それよりも星姫です。今どこにいるんですか?」
ニュースでは、連続殺人事件は解決した、程度の情報しか流れてこないため、星姫の現状はわからずじまいだった。
「黄泉島に収監されるんじゃないかしら。裁判はまだだけど、普通に考えたらそこぐらいしか無いのよね」
黄泉島特別監獄、太平洋の沖合に位置する、国連管轄の世界的な魔法関連施設が集中する人工島群の1つで、精神が不安定だったり、起こした事件が凶悪すぎたりなどの要因で、第Ⅰ級犯罪者に分類された人間及び魔族が収監される巨大監獄。
魔法の使用に対応したガチガチの警備体制が引かれているため、脱獄はほぼ不可能と言われている。
(聞いたことあるな……あそこって本当にパンドラの箱レベルでやばいんだっけか……)
死刑が世界的に全面撤廃されたこの世界では、最高刑はここに収監されること、当然、一度入ったら二度と出ることは出来ない。
「面会は出来るみたいだし、行ってみたら?」
「そうしますかねぇー」
俺はそう言って窓の方をみた。
あの時とは打って変わって、鬱陶しいほどの青空だ。
「実は、正治くんも星姫ちゃんのことが好きだったりするんじゃないの?」
「俺が?あいつを?……どうだろうな、あいつといると落ち着くっていうのはあるけどさ」
「へぇ〜♪」
露骨にニヤついた顔でこっちを眺めてくる美空さん。なんだろう、すごく殴りたくなるほど綺麗な笑顔だ。
「でも、少し心情の変化もあったんでしょ」
「そうですね……強いて言うなら、俺の力のこととか」
この事件を通して、気がついたことがあった。それは、俺があの化け物たちも恐れるほどの何かを持っているということ。
「魔族達、俺のことを狙ってきているみたいなんです」
「それは……少し調査が必要かもね。正治くんを殺すことで何かを得られるなら、私たちにとってもあまり好ましくないわね」
俺は自分の手のひらを見た。身体ステータス操作、これはもとは俺には備わっていなかった力だ。
(確かめたい。俺の力を、そしてその真実を)
俺は手を握りしめ、自分の力のことを思い巡らした。
「私たちに協力できることなら何でもするからさ、まだまだこれからだよ」
「……はい」
俺の新しい目標だ。今回のことが大きな進歩になるように願った。




