第11話 マンドラゴラ峡谷
※アヴァナプタ視点です。
【マンドラゴラ峡谷 入口】
朝頃、私とプロパネは薄暗いマンドラゴラ峡谷の入口へと到着した。空は厚い雲に覆われ、薄暗かった。まだ5月だからか、やや寒かった(アポカリプスはいつも暑いのに)。
マンドラゴラ峡谷は幅30メートルほどの谷だ。草木が覆い茂り、進むのは容易な事じゃない。私とプロパネを先頭に、部隊は進み始める。
「ねぇ、バトル・ラインにバトル=アルファを提供していたのって当時、財閥連合傘下の組織だったビリオンのコメットなんだよな?」
「……ああ。だからコメットの命令は断るに断れない」
ビリオンはロボット開発・製造の組織だけど、実際には他の軍用兵器も開発している。彼らが開発しようとしている爆弾にはダイナマイ草の液化マナが必要らしい。
別にダイナマイ草はマンドラゴラ峡谷じゃなくて、ハーベストフォレストとかでも採れるらしいけど、あの辺りは国際政府の支配領域。安全に採るならここしかないらしい。
「安全に採るっていうか、ダイナマイ草を採ってるのを知られたくないだけだろ?」
「たぶんな」
私とプロパネは草や木を切り分けながら進んでいく。地面がボコボコしていて歩きにくい。コメットもえらい所に派遣してくれたもんだ。
[あ、アヴァナプタ将軍]
「なに?」
[前から何か来ます]
私は薄暗い前方に目を凝らす。ああ、何か来る。人間型をした植物系の魔物だ。手足が蔓状になって、頭部が大きな蕾のようになっている魔物。……プランツーだ。それは4体も。
「私たちがやる。下がってろ」
私は蒼い鉄扇を取り出し、先頭のプランツーに飛びかかる。プランツーはツタの腕をゆっくりと振り回して私を叩く。腕に鞭で叩かれたかのような痛みが走るが、大きなダメージはない。プランツーの喉元に鉄扇を突き刺し、一気に開く。濁った液体をまき散らしながら、蕾と植物の胴が離れた。
「喰らえ」
プロパネは次々と襲い掛かるツタを華麗に避ける。何度もジャンプし、踊るかのように避ける。あれはただ避けているんじゃない。クナイを投げていた。クナイは一直線に飛び、プランツーの胸に突き刺さる。その途端、爆発が起こる。クナイが爆発し、プランツーの上半身は砕け散った。
一方、コマンダー・アレイシアは私と同じようにプランツーに近づいて行く。その手には剣が握られていた。彼女はプランツーに近づくと、一気に切り倒す。
1体のプランツーが倒れると、すぐ側にまで近寄って来ていた別のプランツーに飛びかかり、その首を斬り、ハネた。
「よし、先に進もう」
プランツーを倒したプロパネと私は再び歩き始める。しばらく歩くと、雨が降ってきた。次第にそれは強くなっていく。
「……雨か」
「旧ダーサ王国じゃほとんど降らないのにな」
私は雨水に身体を濡らしながら言った。旧ダーサ王国の地域で雨はほとんど降らない。だからずっと乾燥している。中央大陸に来てから驚いた事は雨が多いということだ。
[将軍。また生命体が近づいて、――]
側のバトル=アルファがそう言った時だった。ソイツの首がツタによって叩き飛ぶ。ああ、マズイ、すぐ横に“フラワー=プランツー”が!
紅の花びらを開かせた10体近くのプランツーが隊列のすぐ横に現れる。バトル=アルファたちは一斉に射撃する。
[右側からも現れました!]
「撃て撃て!」
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
私は慌てて命令を下す。2列となり細長く伸びきった隊列は横からの奇襲に弱かった。バトル=アルファたちも急いでアサルトライフルの銃口を向けて撃ちまくる。
私とプロパネも部隊を守ろうと武器を取り出し、そっちに向かおうとした。だが、前方からもフラワー=プランツーやアクア=プランツーが現れる。
「クッ……!」
「くそっ!」
私は吐き捨てるように言い、前方の敵に突っ込んでいく。両手に握った鉄扇を使い、次々と敵を斬り裂く。液体をまき散らしながら倒れる敵を飛び越え、次の敵を斬る。
プロパネも前方の敵を相手にする。いくつものクナイを投げ、プランツーを吹き飛ばしていく。クナイが刺さった敵は確実に倒れ、周りのプランツーも爆風で倒れる。私は生き残ったプランツーを斬っていく。
「はぁぁッ!」
手を樹液と雨水に濡らしながら、ツタを避け、鉄扇をプランツーに刺し、一気に斬り裂く。爆風で飛んでくるプランツーにトドメを刺す。
何十体ものプランツー系の魔物を斬り伏せ、ようやく前方からの敵はいなくなった。辺りは焦げ臭いニオイと樹液のニオイに包まれる。
「どれだけやられた?」
[バトル=アルファ12体が破壊され、残ったのは18体だけです。バトル=コマンダー3体は無事です]
「な、なに!? 生き残ったのは21体だと!?」
私は一気に半数近くの部下がやられた事に驚くが、数えてみれば確かにそれだけしか残っていない。四方八方からの奇襲攻撃で半数の部下がやられたようだ。
「これだけの攻撃があったんだ。しばらくは安全だろう」
「クッ……」
私は鉄扇に付いていた樹液を振り払い、それを腰の鞘に入れると再び歩き出す。まさか、魔物の集団にここまでやられるとは……。
それでも、プロパネの言うとおり、あれだけ大きな攻撃があったのだからしばらくは安全だろう。私はその言葉を信じて進んでいく。
マンドラゴラ峡谷。雨がますます強くなってきた。




