第12話 VSマンドラゴラ
※アヴァナプタ視点です。
私とプロパネとコマンダー・アレイシアを先頭にバトル=アルファ5体、バトル=コマンダー1体まで減った部隊はようやくマンドラゴラ峡谷の奥にまで来れた。進む先には青色の草が生えている。あれがダイナマイ草か。
「…………」
ただ、問題が1つだけあった。それは木のような大きな魔物がいる事だ。鋭いトゲの付いたツタが地中から何本も生え、それは縦に絡まり合いながら伸びていた。ツタの一番上は赤みを帯びた大きな白色の木の実。木の実の正面に大きな口があった。
「……身長は10メートルほどか」
「なにあれ……?」
「マンドラゴラだろう」
ああ、なるほど。“アレ”がいるからここはマンドラゴラ峡谷なのか。
私はマンドラゴラをよく見る。白に限りなく近いピンク色のツタと頭。目がない頭部の牙もかなり鋭い。噛み砕かれたら装甲服を着ていても即死だな。
「どうする? アレって起きてると思うか?」
「……さぁな」
「…………。……私たちの任務はアレの討伐じゃない」
私は残った5体のバトル=アルファを呼び集めると、小声でマンドラゴラの後ろにある青い草を取って来るように命じた。
バトル=アルファは何度か頷くとマンドラゴラの側を通って後ろのダイナマイ草を次々と引く抜いて行く。ある程度引き抜くとバトル=アルファたちは戻ってきた。
「よし、帰りは飛空艇を呼べるからな」
私は無線機を取り出して、サフェルト海岸に止めてある小型飛空艇に合図を送る。その間にもバトル=アルファたちは何度も往復してダイナマイ草を集めてくる。
「ああ、マズイ」
連絡を入れてしばらくたった頃、プロパネが急に言った。私は彼の指差す方向を見る。ほとんどのダイナマイ草がなくなったマンドラゴラの後ろ。1体のバトル=アルファがやたら太いトゲの付いた根っこを引っ張っていた。それ、マンドラゴラの根っこだ!
私は手でバトル=アルファにやめろと合図を送るが、根っこを引っ張るのに夢中で誰も気がつかない。それどころか、別のバトル=アルファはナイフを取り出して、それで事あろうか根っこを切り出した。
「ぎゃおおぉぉ!!」
根っこを切られたマンドラゴラは痛みに叫び声を上げ、目を覚ます(当たり前か)。最悪! なんてバカな機械兵士なんだ!
マンドラゴラは頭部の下から6本のやや太いツタを伸ばしてくる。な、長い! 20メートルはある! 当然のことながらここにも届く長さだ!
バトル=アルファたちはこっちに向かって走って来る。彼らがマンドラゴラの側を通った時、ツタの1本が振り下ろされる。2体のバトル=アルファが叩き壊される。
「撃て撃て撃て!」
[イ、イエッサー!]
残りのバトル=アルファは慌ててアサルトライフルを取り出し、マンドラゴラの頭目がけて射撃する。無数の銃弾が木の実を攻撃する。
だが、マンドラゴラは大きなツタを振り回し、3体のバトル=アルファを弾き飛ばす。彼らは崖に叩き付けられ、木端微塵になる。
その間にプロパネは6本のクナイをマンドラゴラの胴体の絡まり合った太いツタに投げつける。爆発が起こり、煙と炎が上がる。
「ぎゃおおお! おおおおお!」
狂ったような悲鳴を上げ、太いツタを私に振り下ろす。私とプロパネとコマンダー・アレイシアは素早く避ける。だが、バトル=コマンダーは避けきれず、叩き潰された。
バトル=コマンダーを潰したツタが頭部の根元で爆発し、引き千切れる。プロパネがクナイを投げたのだろう。
「あと5本か!」
コマンダー・アレイシアが近くにまで迫っていたツタに飛び乗る。そのままツタからツタへとを飛び乗って行き、腰に装備していた剣を握り、攻撃用のツタの1本を切り落とす。残り4本。
だが、攻撃用のツタの1本がコマンダー・アレイシアを空中で弾き飛ばす。彼女はさっきのバトル=アルファと同じように背中を崖に叩き付けられる。そのまま地面に向かって彼女は落ちていく。
「チィ、あのクローン……!」
私はバトル=アルファのアサルトライフルを拾い上げると、マンドラゴラの口に向かって射撃する。銃弾は次々と口内に穴を空ける。
マンドラゴラは叫びながら2本のツタを私に振り下ろす。私は辛うじて避ける。大きな地響きがした。それと同時に爆発が起こる。私に振り下ろされた2本のツタが根元で炎を上げながら、地面に落ちていく。
「アヴァナプタ、残り2本なのは見ての通りだが、クナイがもうあまりない」
「マジか……」
私は鉄扇を取り出す。コマンダー・アレイシアのようにして私もやるしかないか。プロパネばかりに頼ってちゃダメだよな。それに、彼の役に立ちたい。彼の足手まといになりたくない!
「……待て、それはよせ!」
「私だってツタぐらい斬れる!」
私は近くにまで迫っていたツタを避けながら握る。一気に体は空中にまで上がる。動き回るツタを辛うじてよじ上ると、全力で根元まで走って行く。やるんだ!
頭部にある攻撃用ツタの根元に辿り着くと、2本の鉄扇を深々と突き刺し、開く。大きく斬り裂かれ、樹液が溢れ出る。マンドラゴラは激しく暴れ周り、私を振り落とそうとする。
「クッ……!」
振り下ろされそうになりながらも、私は必死にツタを握り締め、なんとか耐える。そして、切れかかったそのツタにもう一度鉄扇を刺し、斬り裂いた。今度は切れた。そのツタは地面へと落ちていく。
私は飛び降りようと手を離す。これぐらいの高さなら大丈夫だ。好きな彼の役に立ててよかっ――
「アヴァナプタ!」
「……えっ!?」
それはいきなりだった。最後のツタが私の体を巻きつき、完全に身動きを取れなくしてしまった。




