ジムラの”野暮用”
シスターとジュンが1階に戻ってきた時、丁度センター内では正午を知らせるチャイムが鳴り響いた。
ジュンはそれとなくシスターに声を掛ける。
「お昼か!シスターさん、いつもお昼ってどうされてますか?」
「そうですね。自宅で簡単に済ませる事が多いです」
「あの、良かったらここの食堂でご一緒しませんか?結構美味しいんですよ」
「そうですね。是非」
(よっしゃ!)
ジュンがシスターを誘う事に成功したタイミングで聞き慣れた、そして今だけは聞きたくない声がジュンの耳をつんざく。
「おぉ!ええタイミングやんかぁ~!」
「…こ、この声は」
ジュンが声のする方向を振り向くと、そこには想定通りシオリの姿があった。
「おぉ!この前のシスターさんやんかぁ~!ども~」
「どうも」
「2人で何してんの?」
「これから食堂で昼食をいただこうかと」
「何や!デートかいな?ジュンさん意外と隅に置けへんやないのぉ~」
「ちょ、な、何言ってるんだ!そんなんじゃないよ!」
「あそう?ほな私もお邪魔させてもらいまひょか」
(…本当にお邪魔だ…)
ジュンが心で本音を呟くと、もう1人の女がその場に合流する。
「やほやほ~!シスターさんに童貞君、何してんのぉ~?」
陽気な声でやって来たのは同じく殺人免許受講生のJKだった。
「おっ、おぉぉい!!!君!!シスターさんの前でなんて事を!!!」
顔を真っ赤にして激昂するジュン。すかさず話題に食いつくシオリ。
「何や、ジュンさん童貞やったんかいな?道理でぇ~。私の胸掴んだ時え~らい慌て様やったもんなぁ~!」
「おおおおい!!やっ、止めろ!!」
「えー。お兄さん、この人の胸掴んだのー?やっぱへんたいじゃーん!」
「ちっ、ちっ、ちっ、違う!違うんです、シスターさん!!コレには深ぁーーーい訳がぁぁ!!」
ジュンは発狂寸前といった様子で必死な弁明を見せていると、そこに1人の男が通り掛かった。
「やぁ、ジュン君。お昼かい?」
「あぁぁぁああっ!ジ、ジムラさん!!」
そこに立っていたのはセンター創設メンバーにして総合受付責任者のジムラだった。
「あ、は、はい。これから。えと、ジムラさんも?」
「うん。休憩中だよ」
「そ、そうなんですね!あの、良かったらご一緒しませんか?」
「ありがとう。折角だけどちょっとこれから野暮用があってね。それにジュン君のハーレム状態を邪魔するのも悪いしね」
「は、ははは。ハレーム…」
「それじゃ」
そう言うとジムラはその場を去って行った。
次々と登場した人物への対応ですっかり疲労したジュンは食欲を失いかけたまま他3人と共に食堂へと向かう。
そんな一行はジムラが予定する”野暮用”の重大性に気付きもしないのだった。




