002: 講義
『人間』には飼われることをよしとした『家畜』と飼われることをよしとしなかった『獣』がいると誰かは言った
『家畜』はピースメイカーに全てを許され何一つ不足のない生活を約束され、『本土』という檻の中で一生を終える
『獣』はピースメイカーの加護を最低限利用し、『外』という劣悪な廃墟で自由に生き足掻く
どちらを選ぶか
代辺 千晶は前者を選ぶだろう
彼女は現在に適応した人間といえる
考えるのが面倒
動くのが面倒
兎に角、千晶は出来るだけ何もしたくなかった
ピースメイカーに依存した人類は停滞し、退化し、思考を放棄した
空っぽな人間が普通
それ以外は異常
なんて世の中だと『外』の人類は嘆く
施しを受けるのが当然となった『本土』の人類はその嘆きが理解出来ない
そもそもその嘆きを聞くことすらない
千晶は『本土』の人類やピースメイカーから見れば極めて一般的な人間だ
そんな千晶は授業に参加していた
千晶がいるのは『本土』にも『外』にも当てはまらない『学園島』の高等部の一室
『本土』も『外』も関係なく18未満の子供達に勉学を教える場所
現代において勉学に意味などないと思われるがそれを主張するほど我のある人類は多くない
それに対して『外』で生活する人類にとって『学園島』の存在は様々な旨みがある
故に『学園島』は絶対不可侵
形これ変わりど、ピースメイカーが世に出る前と変わらず運営されている
まぁ、そんなことは千晶にとってはどうでもよく教師のありがたいお話を聞き流す簡単な作業でしかなかった――――少し前までは
「諸君、知っているだろうがピースメイカーとは人工知能を備えた機械の総称である。諸君等の所持している携帯端末もまたピースメイカーに分類される」
別にオールバックでサングラスでスーツで髭が素敵な強面の担任教師のおじ様、一條 善哉が怖いというわけでは勿論ない
大変不本意で面倒なことこの上ないが千晶は必要なことと割り切って授業を聞く――――のは千晶には無理のようなので黒板に自動で浮かび上がる文字にサッと目を通す
ちなみに黒板にも善哉の声を認識し、表示するピースメイカーが使用されている
「ここ、『学園島』は『本土』と違いピースメイカーが少ない。言い方を変えれば最低限は存在している。『外』で育った者は慣れるのに時間がかかるかもしれないが本土出身の者はそれ以上に大変である。卒業まで待たず『本土』に帰る者は後を絶たない」
千晶とて『本土』に帰ろうとしていた一人だが妹に強く迫られ惰性で通い続けている
初めてピースメイカーに頼らない生活を経験したときは、やってられないと一日中ベットの中で過ごしたのは忘れない
「ピースメイカーとは咲座木 一が作り出した発明であり、ブラックボックスである。人工知能であり、心臓さえあれば半永久的に稼働する。燃料も電力も必要とせず、どうやって動いているか?数々の科学者が解明に乗りだし挫折したのである」
どうでもいいから早く本題に入らないかなー、と千晶は黒板の文字を追うのを止めた
知っていても役に立つ場面はないだろう
「ピースメイカーは大きく分けて三種類に分類される。ピースメイカーを統括管理する中枢『ピースメイカーLC』、人間の生活を補助する機構『ピースメイカーOO』、そして諸君等がこれからこの学園でこのクラスで学び共にあることとなる戦闘の特化した兵器『ピースメイカーWB』である」
千晶のクラスは他のクラスと少し異なる
千晶のクラスだけがピースメイカーWBを扱う
ここは普通科ではなく
「ようこそ兵士科へ!私は変わり者の諸君等を歓迎するものである!」
善哉はニィと千晶達、教え子を迎える
ここはピースメイカーWBに乗る操縦者を育成する兵士科
通称、変人の坩堝である
普通の人間ならばリアクション一つ取らないだろうがこのクラスの人間は違った
歓迎を素直に受け取り照れる者
歓迎を皮肉と受け止め舌打ちする者
未来への不安で挙動不審になる者
毒を持った果実のような笑みを浮かべる者
反応は様々だがそれらを観察していた千晶はやはりどうでもいいことと欠伸を噛み殺す
「反応は様々に違うか。重畳である。では、続ける。ピースメイカーWBには第三世代や第四世代と世代によって分けられている。さて、問題である。第三世代と第四世代の違いはなんであるか答えてみよ神園」
「ヒャイッ!?」
突然、名を呼ばれた生徒はどうやら夢の世界より今帰還したようだ
少女は状況を理解するためにキョロキョロと周りを見渡す
涎が口の端に残っているその姿はなんとも滑稽だった
後ろの生徒が間抜けに助言する
間抜けはその生徒にありがとうと子供のように笑いかける
「えぇっと、第三世代と第四世代の違いですか」
黒板を読んで何を質問されたか理解した生徒はうーん、と唸り何か思いついたようで顔を輝かせる
考えていることが顔に出やすいタイプだと千晶は呆れる
流石、兵士科改め変人科と嘆息する
「強さですか!」
これだ!とドヤ顔をする神園
その自信はどこから来るのか
当然、間違えだ
千晶は視線を外に移す
空はピースメイカーの出来る前と変わることなく美しいのだろうなと柄にもないことを思う
ピースメイカーが主流となる前の時代など知らないし、興味もないが
「確かに性能の差はあるが外れである。次は代辺」
外を見ていたのは失策だったか
さっきも無礼にも己の授業で睡眠を取っていた神園が当てられていた
少し思考を巡らせれば思い当たることだ
それでも千晶は反省などするわけなくこれ以降も授業中空を眺めるのだろう
千晶は視線を教壇に戻し質問への解答を口にする
「第三世代と第四世代の大きな違いは替えの効く量産品か、一機しか存在しないオンリーワンかですかね。次に第四世代は第三世代にない単一の機能をそれぞれが備えているとか。後は消耗品の第三世代と違い第四世代は咲座木 一が生きていたときから存在しているということくらいですか」
「素晴らしい。正解である」
「そりゃ、どうも」
模範解答を返した千晶は一度当てられてしまえば次はそう回ってこないだろうとカタを括って己の睡眠欲求に従い瞼を落とす
結局、千晶の聞きたかった本題は睡眠に入ったすぐ後になされた
もう少し粘れば良かったなと思ったが別に後悔はしない
後悔に意味がないのだから
千晶は今日も流れるままに生きている
はいはーい!天の邪鬼のお兄さんですよー!
ぶっちゃけ、この小説、何を言ってるのか分からねぇ!と思われる方がおられるのではありませんかな?
そんな貴方に朗報でありますよ!
なんと分からないところを感想に送ると我等が担任教師の一条 善哉先生が解説してくれますですよー!
えぇ!お兄さん、どこまで設定説明したか覚えてないし覚える気ないし、お兄さんが説明すると痛い気がするしでアレなんで善哉先生に働いてもらいまーす!
まぁ、感想がなくても勝手にするけどね『教えて!善哉先生!』のコーナー




