第1話「謎のスキル」
この世界には、誰もが当たり前のように持っているものがある。それは、《スキル》と呼ばれる特別な能力だ。
人々は生まれながらにして何らかのスキルを持ち、成長するにつれてその能力を発揮していく。
スキルの種類は実にさまざまで、身体能力を強化するものや、魔法を扱うもの、生産活動に役立つものまで存在している。中には、国を動かすほど強力なスキルを持つ者もいる。
そのため、この世界ではスキルの強さが人間の価値を決めると言っても過言ではなかった。
当然、学校でもスキルに関する授業が行われている。生徒たちは自分のスキルを磨き、将来のために能力を伸ばしていく。そして、誰もが優秀なスキルを持つことを望んでいた。
そんな世界で、一人の少年がいた。
神代 連。
俺もまた、生まれながらにスキルを持っていた。
しかし、そのスキルは周囲から見れば、何の役にも立たないものだった。
「おい、神代!」
昼休み。
教室で一人、机に向かっていた俺に声がかかった。
顔を上げると、そこには数人の男子生徒が立っていた。その中心にいるのは、クラスでも目立つ男子生徒だった。
「お前、まだそんなスキル持ってんの?」
「……何か用?」
「いや、別に? ただ気になっただけだよ」
男子生徒はニヤニヤと笑いながら、俺の机に手をついた。
「《神核生成》だっけ? それって結局、何ができるんだ?」
「……分からない」
「ははっ! 自分のスキルなのに分からないのかよ!」
周囲の男子たちも一斉に笑い出した。
俺は何も言い返さず、視線を机に戻した。
《神核生成》。
それが俺の持つスキルだった。
しかし、スキルが発現してからというもの、何度試しても何も起こらなかった。
魔法が使えるわけでもない。身体能力が上がるわけでもない。何かを作り出せるわけでもない。
ただ、スキルの名前が表示されているだけだった。
「お前さ、そろそろ諦めたら?」
男子生徒が俺の肩を軽く叩いた。
「どうせ役立たずなんだからさ。そんなスキル持ってても意味ないだろ?」
「……」
「何か言えよ」
「別に……」
「はぁ? 聞こえねえよ!」
男子生徒は俺の机を蹴った。
机の上に置いてあった教科書が床に落ちる。
「おっと、悪い悪い!」
わざとらしく笑う男子生徒たち。
俺は黙って床に落ちた教科書を拾い上げた。
反論したところで、何も変わらない。
先生に相談しても、スキルが弱いことを理由にした嫌がらせは、なかなか真剣に取り合ってもらえなかった。
だから、俺は耐えるしかなかった。
「じゃあな、役立たず!」
男子生徒たちは笑いながら教室を出ていった。
俺は小さく息を吐く。
(……いつまで続くんだろう)
自分のスキルが何なのかも分からない。
周囲からは馬鹿にされ、誰にも頼ることができない。
そんな毎日が続いていた。
そして、放課後。
帰り支度をしていた俺は、ふと自分の手を見つめた。
(《神核生成》……か)
何度も試した。けれど、何も起こらなかった。
それでも、完全に諦めることはできなかった。
もしかしたら、まだ自分が知らない使い方があるのかもしれない。
そう思いながら、俺は小さくつぶやいた。
「……発動しろよ」
その瞬間だった。
ピカッ!
「えっ!?」
突然、俺の身体が淡い光に包まれた。
「な、何だ!?」
驚いて後ずさる俺。
すると、目の前の空間に見たこともない紋様が浮かび上がった。
幾重にも重なった魔法陣のような紋様。
その中心には、小さな光の球体が現れていた。
「これって……まさか!」
俺は目を見開いた。
今まで何度試しても反応しなかったスキルが、突然動き出したのだ。
光の球体は少しずつ大きくなっていく。
そして――。
パァァァッ!!
まばゆい光が、周囲を包み込んだ。
「うわっ!」
俺は思わず目を閉じた。
しばらくして、光が収まる。
恐る恐る目を開けると、そこには一人の少女が立っていた。
「……え?」
少女は幼い外見をしていた。
小さな身体に、どこか不思議な雰囲気。
そして、少女はゆっくりと俺の方を振り返った。
「……ふふっ」
少女は俺を見つめると、にっこりと微笑んだ。
「ようやく、会えましたね、創造主」
「…………は?」
こうして、神代連の人生は大きく変わり始めるのだった。
俺はしばらくその場に固まっていた。突然スキルが発動したと思ったら、幼い少女が出現したからだ。
「……」
「あら、何をそんなに驚いているの? 創造主、あなたが私を作られたのですよ」
(……どういうことだ? なぜ今頃……)
いろいろ考えていると、少女が近づいてくる。
「まずは、初めましてね。私は木星のエイモア。よろしくね、創造主」
少女、エイモアはそう言って手を差し伸べ、俺を起こした。
「あぁ……」
「……?」
俺は少女を見る。
どことなく大人びた雰囲気があり、ザ・しっかり者というイメージがした。
「まだ、状況がうまく整理できていないようね。分かっていたけど、説明が必要そうね」
エイモアはそう言って、小さな指を顎に当て、語り出す。
「まずは、神核生成について話しましょう。神核生成は、簡単に言えば『神様を作るスキル』よ」
神様を作る?
つまり、彼女は神なのか?
「そして、私たちは太陽系の具現化よ」
エイモアがそう言うと、俺は少し驚いた。
(太陽系の集合体? そういえば、木星のエイモア。そう言っていた)
そこで俺は気になったことがあった。
「さっき、私たちと言っていた。他にもいるのか?」
俺がそう聞くと、少女は笑った。
「ふふっ、ええ、そうよ。私たちは太陽系の具現化だもの」
太陽系の具現化……なら、エイモアを含めて8人、か?
「他に気になることはあるかしら?」
「いや、今はいい。早く帰らないと、母さんが心配するからな」
そう言ったところで、俺はあることに気がついた。
「お前、どうするんだ?」
「?……普通についていくけど」
「母さんに何て説明すれば……」
俺が頭を押さえて考えていると、少女の笑い声が聞こえた。
「ふふっ、お母様には私から説明しましょう」
「大丈夫なのか?」
「問題ないわ。任せてちょうだい」
少女はそう言って胸を張る。
俺は心配でしかなかった。
他に案はないかと考えながら歩いていると、家に着いてしまった。
「本当にどうすれば……」
「だから、任せてちょうだい」
「あ、おい!」
ピンポーン。
少女、エイモアはインターホンを押してしまう。
「はいは~い」
母さんの声が聞こえ、母さんが出てきた。
「あら、連……それと」
母さんはエイモアを見る。
「初めまして、お母様。私は創造主である連様のスキルから生まれた、木星のエイモア」
エイモアは綺麗なお辞儀をして挨拶をした。
母さんはしばらく固まっていたが、やがて喋り出した。
「まぁ! やっと発現したのね! おめでとう! 連! それと、よろしくね、エイモアちゃん。そうと決まればご飯の準備ね。張り切っちゃうわよ~!」
母さんはそう言ってキッチンに戻る。
「ふふっ、元気なお母様ね」
「あぁ」
元気すぎるくらいだけど、まぁ、嫌いではない。
俺とエイモアも家に入る。
これから起こることも知らずに。
神核生成のリブート作品です。今度は消えませんが、
時間が空くかもしれませんので、ご了承ください




