9話〜冒険者グレイソード
おはようございます。
昨日も2話投稿していますのでまだの方はそちらからお楽しみ下さいませ。
声のした現場では男女4人の冒険者パーティ、灰色剣が身の丈2メートルは超える筋骨隆々の狼人間6体と岩壁を背に対峙していた。
「くそっ! なんでこんなところにこんな手強い奴がいるんだ!」
ライカンスロープは討伐難易度が単体ならBランクだが、5体以上の群れになるとAランクに相当する強敵である。
完全に戦意を失いながらも両手剣を構えたパーティリーダーである剣士のポールが泣き言を並べる。
その後ろには深手を負った回復術者のアニーがもう1人の女性剣士メリナに抱かれている。
いきなり横手から現れたライカンスロープの攻撃に深手を負い、アニーを庇いながら撤退していたがどうやら追い詰められていたらしい。
その2人の横で魔法使いのクラインがライカンスロープに向かって杖を構えて呪文を詠唱している。
ライカンスロープは4人を囲うようにゆっくりと広がっていく。
クラインが詠唱を終え、火球を打ち出した途端にライカンスロープがいっせいに飛びかかった!
一体が火球を鋭い爪をした手でいとも簡単に叩いて散らすと牙を剥き出しにして噛み付こうとする!
ポールの持つ両手剣が向かってくるライカンスロープの胴を薙ごうと走る!
アニーを庇うメリナは迫り来る牙と爪に身を縮こませてアニーを抱き締めた!
・・・
・・・・・・
アニーがいつまでもこないライカンスロープの爪に違和感を覚えてゆっくりと目を開けた。
全てのライカンスロープの動きが止まっていた。
かと思うとドサリとその場に崩れ落ちる。
6体のライカンスロープ全ての心臓は漆黒の矢が貫いていた。
剣を構えていたポールが辺りを見ても誰もいない、一体矢は何処から飛んできたのか・・・
「おーい、大丈夫か?」
離れた木立の間から腰に立派な剣を下げた男がやって来た、随分と汚い格好をしているが端正な顔立ちをしたエルフだった。
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呆気に取られている4人の元へとフェイとバーンダーバが歩いていく。
「酷い傷だな、回復出来る者はいないのか?」
バーンダーバが倒れている女性を見て問いかける。
「あぁ、回復術者が怪我をしたんだ。 ポーションで出血は止めたんだが・・・」
剣士の男の表情は暗い、このままだとこの回復術者は命を落とすだろう。
バーンダーバは治癒魔術を使えない。
『フェイ、我に魔力を注いでくれ。 我が治療しよう』
突然に喋った剣に3人の冒険者がぎょっとした顔になった。
フェイが魔力を流し込むと銀色の光が倒れた回復術者に向かい、傷口を光が包み込んだ。
回復術者の土気色だった顔色がみるみるうちに赤みがさしていく。
そして、ゆっくりと目を開けた。
「あぁ、良かったぁ!」
回復術者を抱えていた女性剣士が目を覚ましたのを見て抱き締めた。
「ありがとう、もうダメかと思った。 俺はポールだ、そっちの魔法使いがクライン」
「私はメリナ、こっちはアニーよ。 本当にありがとう」
涙を流しながら女性剣士ことメリナが顔を上げて礼を言った。
「4人で灰色剣ってパーティを組んでるんだ」
「凄い魔法だったな、音もなく飛んできて6体のライカンスロープを撃ち抜くなんて」
魔法使いのクラインがライカンスロープの傷口を見ながら感嘆の声を上げた。
「それもそうだけど、その剣はいったい・・・」
メリナが先程喋ったフェイの背中にある剣を見る。
『我はフェムノ、この世界では聖剣と呼ばれている』
「せいけんっ! せいけんって、あの聖剣か?」
ひっくり返った声でポールが叫んだ。
「どうやって喋ってるのかしら?」
「興味深いな、少し触らせて貰えないか?」
魔法使いのクラインがフェムノを凝視している。
『我に触れていいのは担い手であるフェイだけだ』
フェムノが手を伸ばしかけたクラインを制する。
「す、すまない」
「いえ、気にしないでください」
謝るクラインにフェイが顔の前で手を振る。
「ところで、お前達はここで何をしていたんだ?」
バーンダーバが訪ねた。
「俺達は豚頭人間の討伐で来てたんだ、それがライカンスロープに囲まれて。 お二人が来てくれなかったら危なかった」
「あの、本当にありがとうございました」
フラフラと立ち上がった回復術者のアニーが頭を下げる。
「気にするな、まだ横になっていた方が良いだろう」
回復術者はもう一度「ありがとうございます」と頭を下げて腰を下ろした。
「お二人は何をしていたんですか?」
「あぁ、そういえば自己紹介がまだだったな。 私はバン、こちらはフェイだ。 我々はベルランという花の採集に来ていたんだ、知っているか? ピンク色の小さくて綺麗な花でな」
ポールの問いに余計なお喋りを始めたバーンダーバをフェイが後ろで可笑しそうに笑っている。
「ベルランは何に使うんですか?」
ポールが首を傾げた、ベルランの採集は新米冒険者の受ける物だ。
ライカンスロープ6体を一瞬で仕留める冒険者が受ける依頼では無い。
「ギルドの採集依頼だ、なんでも石鹸という汚れを落とす物の匂いを良いものにしたり出来るそうだ。 中々に良く考えられているな」
「えぇっ! そんなに強いのにベルランの採集依頼を受けてるんですか!?」
ポールが露骨に驚いた。
「えーっと、色々と事情があるんです」
フェイがはにかみながらぼかした。
「そうですか、では、助けて頂いたお礼に手伝いますよ。 アレの採集って結構大変ですよね。 小さいから中々量が集まらないですし」
「本当か、ありがとう」
バーンダーバがポールに手を差し出した、その手をポールは少し戸惑いながらも握った。
今日は1話投稿です、すみません。
書くのは18話目まで書けているのですが、推敲が充分ではないのです。
調子良く書けているので当分は毎日更新出来ると思います。
次の更新はまた明日の朝8時頃予定です。