第62話〜迷宮攻略
階段を下りきると真っ暗な一本道の通路がずっと先まで続いている。
床、壁、天井の順番にセルカがゆっくりと眺める。
一頻り眺めると一瞬バーンダーバの方を向いて目で先へ進む合図を送ると歩き始めた。
中は乾いた土の臭いが充満している、通路は土壁でぐるりが囲まれている。
5分程進むとバーンダーバが弓を具現化して矢を飛ばした。
カランと依り代が地面に落ちる音が響いた。
「よく見えるな」
セルカの持つ松明はフェムノが出していた光球に比べるとかなり暗い。
「うむ、だが、フェムノの光源と比べると暗いのは確かだな。 あの光球が浮かんでいる時はもっと遠くても見えた、それに比べるとかなり近付かないと見えん」
それでも、バーンダーバの撃ち抜いた魔物は100m以上離れた位置に依代が落ちていた。
「これは飛翔悪魔の頭蓋骨だな、コイツらは魔法を使うから気をつけないと。 まぁ、射程距離はバンの方が大分長いとは思うけど」
「分かった、セルカは罠にだけ気をつけて進んでくれ。 魔物は私が確実に倒す」
「りょーかい」と返事をしてさらに奥へ進む。
進みながらもバーンダーバは矢を飛ばして歩みの速さを緩めることなく仕留めていく。
セルカはバーンダーバが仕留めた魔物の素材は拾わずに種類だけは目を凝らして見る。
1階層は主にガーゴイルの他は上位豚頭獣人、マーダースパイダーの3種類。
ただの一本道だが天井からマーダースパイダーの糸がきて、前衛がハイオーク、その後ろにガーゴイルが魔法による遠距離攻撃。
本来ならかなり手こずりそうな面子だがバーンダーバの魔弓の前には全く問題にならない。
セルカは改めてバーンダーバのデタラメな強さに薄く笑った。
一本道の終わりが見える、そこには青白い光を放つ魔法陣があった。
セルカが時計をちらりと見ると入ってから2時間も経っていない。
「珍しいな、セーフゾーンがない」
バーンダーバが既に仕留めたあとの魔物の依代が魔法陣の周りにも転がっている。
「必ずあるものなのか?」
「絶対ってことは無いけど、やっぱり無い方が珍しいな」
迷宮は本来、次元の大神オルパターンが勇者の修練の為に作り上げた空間だ。
深く広大な迷宮、フロアを移動する前に大抵はセーフティゾーンとして魔物の現れない空間が造られている。
「そうか、休憩が必要なら私が見張っておくぞ」
「いや、大丈夫だ。 先へ進もう」
2人で魔法陣の円の内側に足を踏み入れる、視界がぐにゃりと変化して景色が変わる。
かと思うと、転移した先には先程通ってきたのと同じような通路が目の前にあった。
魔法陣の円から外に出る。
「なんか、魔法使いの塔の構造に似てるな。 どの魔法使いの塔も外見は違っても中は似たような作りだったよな」
「うむ」
魔法使いの塔はどれも入ると正面に通路があり、通路の両側に部屋があり、突き当たりに階段があった。
通路の奥を見ているとバーンダーバが矢を飛ばした。
セルカにはなにも見えない、暗い通路の松明が明かりが届いていない先でバーンダーバの矢に撃たれた魔物の依代が地面に落ちるカランとした音が微かに聞こえる。
「ほんと、よく見えるな」
「今のはフェムノの魔力感知を真似していたからな、この先はずっと使っておくからセルカはやはり罠だけに注意して進んでくれ」
セルカは「りょーかい」と答えて歩を進めた。
この迷宮は一本道だからマッピングの必要は無い、だが、一本道のせいで他の迷宮と比べると魔物とのエンカウントが遥かに高い。
フロアの魔物を全て倒しながら進まなくてはならない。
バーンダーバは涼しい顔で全ての魔物を射抜いているが、他のパーティでは1階層もキツイんじゃないかとセルカは思う。
とはいえ、楽勝だと気を抜いていて前回はフェイが死にかけた。
セルカはもう一度集中力を高めて天井、壁、地面と目を凝らしながら慎重に一本道の土臭い通路を進む。




