59話〜
「三人で行くのかい?」
「いや、私とセルカの二人で行こうと思う」
バーンダーバの言葉にロゼが眉根を寄せる。
「なんで二人なんだい?」
「1000人も村に人が増えればなにかと必要な物も多くあるだろう、それにはロゼが必要になる。 それに、護衛は一人でも多い方がいいだろう。 すまないが頼めないか?」
ロゼが口を尖らせて「ふーん」と鼻を鳴らす。
「いやいや、俺と二人だったら迷宮に行く戦力は実質はバン一人だぞ?」
「大丈夫だ、セルカの事は私が必ず護る。 セルカは道案内に集中してくれ」
「いや、そーじゃなくて」
「セルカ、バンの言う通りにしよう。 確かに別れた方が効率はいいしね、ただバン、無茶するんじゃないよ。 迷宮が一筋縄じゃ行かないのはわかってんだろうね?」
「うむ、肝に銘じておこう」
バーンダーバとロゼを交互に見てセルカが諦めたようにため息をつく。
「分かったよ」
「それじゃとっとと行こう、アタイはアンタらを送ったらすぐに村に戻るよ」
ロゼが龍に姿を変える、飛び乗るようにその背中にバーンダーバとセルカが乗る。
「ではデール殿、彼らの護送を頼みます」
「は、えぇ、分かりました」
口をポカンとあけたデールがひっくり返った声で答える。
「飛ばすよ!」
ロゼが地面を強く蹴り出して上空に飛び上がる。
「すまないなロゼ、カルバン達には説明しておいてくれ」
「今回は留守番しといてやるよ、でも、留守番はこれが最後だからね。 今度はアタイも連れてきな」
「あぁ、約束しよう」
「聞いたらフェムノも怒りそうだな」
セルカが口うるさい聖剣を思ってニヤリと笑う。
「あやつはどんどんと口数が多くなるな」
「そうだね、この間なんてうっかりでかい声で喋ってたくらいだからね」
大勢の村人の前で喋り、加護を与えようなどと誤魔化したのをロゼが思いだして笑う。
「それにフェイだって気に入らないハズだぜ、この前の迷宮で迷宮の遺物を使ったのを負い目に感じてるからな」
「そうだな、ゲルハルトも一緒に行きたがっていたし、帰ったら皆に謝ろう」
「ま、一番怒りそうなのはカルバンだけどな」
あの嫌々に勇者のケツを蹴れについてきている商人はどんどんと増える仕事に口では文句を言いつつも楽しそうにあっちへこっちへ走り回っている。
「私は皆に世話をかけてばかりだな」
バーンダーバが苦い顔で頬をかく。
「はははっ、世話をかけるって言うより振り回してるって感じだな」
「・・・ 申し訳ない」
「退屈しないでいいけどね」
「確かに、バンといれば退屈はしないな」
「あー、それは良いのか?」
「退屈してるよりはいーんじゃねーか?」
首を捻るバーンダーバにニヤニヤしながらセルカが答える。
「さあ、目的地が見えてきたよ」
雑多に塔が立ち並ぶ遺跡のような街が見えてきた。
ロゼがゆっくりと高度を下げて近くの原っぱに降り立つ。
「それじゃ、アタイは村に戻るよ。 バン、もういっぺん言うけど。 あんまり無茶するんじゃないよ、キツイと思ったら引き返すんだよ、いいね?」
「大丈夫だ、セルカもついているしな。 迷宮ではセルカの言う通りにしていれば問題ない」
「いやいや、言いすぎだろ。 でもそこまで言うならきっちり言うことは聞いてもらうぜ?」
「もちろんだ」
「それじゃセルカ、バンの御守りは頼んだよ」
「はははっ、りょーかい」
ロゼはセルカにウインクをしてから飛び去っていった。




