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【完結】こちら異世界転生管理局  作者: ただみかえで
第4章 弥勒さまのいない世界
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第27話 鑑定部

 私が正職員になると同時に、新しい部署が出来た。

 その名も『鑑定部』。

 転生候補者と面談する中で、いまいちはっきりと適性スキルがわからない場合などに紫翡翠の眼(ラベンダーアイ)を使って『鑑定』する『部』署。

 言うなれば、私の力に依存しまくった部署。

 なんならいっそ螢子(ほたるこ)部でもいいくらいだ(実際にそんな名前にされたら全力で拒否るけど)。


「あの……局長?

 今までもそうだったので、この力を使ってお仕事する分には全く問題ないんですけど。

 それだけ(・・)の部署ってのはやりすぎじゃないですか?」

「そんなことはないさ。

 君のその『眼』は特別だからね。

 逆に、大変なことをお願いしてしまって申し訳ないとは思うが……」

「あ、そうじゃなくて。

 さっきも言った通り、仕事そのものは問題ないんです。

 言いたかったのは、この部署って私がいなくなったら困っちゃうんじゃないかなー? ってことで」

 螢子部から螢子(わたし)がいなくなったら、『部』しか残らない。

「はははっ、そんなの心配しなくて大丈夫だよ。

 その時はその時。

 |なるようにしかならない《ケ・セラ・セラ》さ」

 こういうとこ、いい局長だよなぁ。

「それでいいなら」

「ああ、いいよ。

 とりあえずここにいる間はがんばっておくれよ」

「はい」

「あ、頭痛したり、調子悪くなる前に言うんだよ?

 無理は禁物だからね!」

 そうして、すっと白いバラを差し出してくる。

 ほんと、いいもふもふだなぁ……。

「ありがとうございます。

 高速(クイック)スキャンも真贋判定(ジャッジメント)も負担がほとんどないので大丈夫ですよ」


 さて、いかに『螢子部』とはいえ、さすがに1人で業務をこなすというのは無理がある。

 そこで、アシスタントが付くことになった。

 アシスタント、というと聞こえはいいけど、データ整理や鑑定を依頼してくる人(部署)の対応など、言ってしまえば小間使いみたいな役割である。

 生前勤務していた市役所では、まだまだ新人だったので人生(死んでるけど)初の部下ができてしまった。


「と、いうことで。

 今日から、螢子くんのアシスタントになるハイパーメイドの千代ちゃんだ!」

 ……何が、『と、いうことで』なんだ?

「あの、もふもふ局長?

 意味がわからないんですけど」

 ふりふりひらひらのメイド服着てるし、なんかちっちゃくて可愛いし、確かにメイドさんなのかもしれないけど(個人的には、和装の女給さん、って感じの方が好み……ってそうじゃなく!)。

「あ、あの!」

 じーっと見つめながら考えていたら、唐突に横から声が。

「わっ、びっくりした」

 ……あれ?

 なんで『横』から?

 ……ていうか、なんでじーっと見つめてたはずの正面から消えているの??

「私、一生懸命がんばりますので!

 よろしくおねがいします、螢子先輩!!」

 せん……ぱい!?

 その瞬間、いきなり消えたことへの疑問なんぞは全てふっとんだ。

 ちっちゃなメイドさんから上目遣いで『先輩』なんて言われると、『はい』か『YES』以外の答えは出てこないな……。

 ……おかしいなぁ、そっちの趣味はなかったはずなんだけどなぁ……。

 フーちゃんのせいで目覚めてしまったのかな……。

「えっと、はい、よろしくね!」

「彼女のハイパーっぷりは、きっとすぐにわかるさ」

「はぁ……」

 なにがなんだか、って感じではあるけど、おかしな人材ってことはないだろう。


◇


「螢子先輩、お茶どうぞ」

 昨日の書類を整理していると、お茶を持った千代ちゃんが隣に現れる。

「あ、ありがとう、千代ちゃん」

 うーん、なかなか慣れないな。

 話によると、彼女は忍者の一族出身で(忍者って本当にいたんだ! って感動したものだ)、特殊能力によって『距離』の概念をある程度無視することができるのだそうだ。

 簡単に言ってしまえば『瞬間移動』ができるのだ。

 移動距離に制限はあるらしいけど、半径1kmくらいなら余裕とのこと。

 ……うらやましすぎる。

 始業5秒前まで家にいられるね、って言ったら笑われてしまった。


 初めはこれがもふもふの言うところの『ハイパー』なのかな? と思ったけどそれだけではなかった。

 お仕事面でとにかく優秀なのだ。


 出身は地球、というか日本。

 ちょうど1年くらい前に転生局へ転生してきて以来、研修を兼ねながら色々な雑務をしていたんだそうだけど。

 1年でここまで!? ってくらい、とにかくなんでもできた。

 その上、初めてのお仕事も教えればすぐに覚えるし、細かいところにもとてもよく気が利く。

 今までたくさんの『転生候補者』を見てきたけど、『転生局』への適性がある人材、とはまさにこういう人物なのだろう。


 それになにより、ちっちゃくてかわいい姿は癒やしになる!!!

 先日、うっかり女給さん衣装の方が好みなんだよね、って言ったら次の日にはそれに変わっていたし。

 今度また違う服をリクエストし……じゃない!

 いけない、自分がどんどんダメになっていっている気がする……。


「今日は暇ですね~」

 書類整理も終わり(量も少なかったしすぐ終わった)、千代ちゃんに淹れてもらったお茶をのんびりと味わう。

「そうだね~。

 でもね、千代ちゃん。

 そういうことは口に出しちゃダメなんだよ?」

「そうなんですか?」

「うん、口に出した途端忙しくなr――」


PRRRR♪


「ほら来た」

 予想(フラグ)通り、端末から呼び出し音が鳴り響いたのだった。


 鑑定部は、転生受付カウンター内側の一角にある。

 机を4つ置いただけのちっちゃなスペースだ。

 まぁ、部員が2人しかいないし、書類もほとんどがデータ化されているため、データ端末(見た目はまんまパソコン)と打ち合わせ用のスペースがあれば十分なので問題はない。

 カウンターの数が多すぎて、ほとんどの場合はこうして端末越しに依頼がくるので、打ち合わせスペースは物置と化しているくらいだ。


ピッ!


「はい、鑑定部です」

 端末を操作してテレビ電話の応答をすると、そこには見知った顔が映し出された。

「こんにちは、螢子ちゃん」

「あ、フラスタルさん、こんにちはー!」

フラスタルさんは、転生局時代に何度かお話したことのある、数少ない天の川銀河担当のお一人。

クリクリとした大きな目と愛嬌のある大きな口、すらっと長い指をした――地球でいう所のカエルを大きくして二足歩行させたような見た目。

トカゲ人間(リザードマン)のYさんを見た時もびっくりしたけど、フラスタルさんもなかなかのインパクトだ。


「チェックですかー?」

『ええ、1人お願いしたいんですけど』

「はいはい。

 千代ちゃん、お願い」

「はーい」

 元気よく返事をした千代ちゃんが眼の前から消える。

 と同時に、画面の向こう側に現れる。


『じゃあ、こちらお預かりしますねー』

『よろしくおねがいします』


「もらってきましたー」

 今度は逆に、画面の中から消えてこちらに出てくる。

 手には『タブレット』。

 フラスタルさんから受け取ってきたものだ。

 便宜上タブレットと呼んでいるけど、私が生前使っていたものとはもちろん違うものだ。

 特に大きく違うのは、全体が透明なこととボタンらしきものが一切ないこと。

 表面に触れると生体情報を認識して勝手に立ち上がるし、操作も感覚的にできるものなので全く不便はないんだけどね。


 しかし、転移局で空中に画面がいっぱい出てきたときにも思ったけど、ここのシステムはどうにもSFチックだ。

 クレィさんが言うには、システム関係を開発している『技術開発室』の所長さんがそういうのが好きらしい。

 地球出身だったりして……まさかね。

 わざわざ千代ちゃんに取りにいってもらわなくても、データで送ってもらえればこっちでも見られるんだけど、結構重いデータなので送受信だけで数分かかってしまう。

 まぁ、数分くらいなら全然問題はないんだけど、千代ちゃんに行ってもらうほうが早いので、最近ではこの方式だ。

 便利に使っちゃってごめんね。


「少々お待ち下さいね」

『はーい、お願いします』

 受け取ったタブレットを見ると、そこには転生対象者の『基本情報』・『転生先の状況』・『適性スキル』などが映し出されていた。

 少し詳しい履歴書、って感じだ。

 さて、と。


 紫翡翠の眼(ラベンダーアイ)発動。

 スキル:真贋判定(ジャッジメント)


 タブレットに映し出されている情報をじっと見つめる。

 候補としてあがっているスキルから、一番適性のあるものが浮かび上がって見える。

 おや? スキルの方は問題なさそうだけど、これは……。

「この方、商売適性が高いので商人系のスキルがよさそうですよ。

 この中だと……両替商(エクスチェンジャー)がいいかと」

 タブレットを見ながら鑑定結果を伝える。

「両替商(エクスチェンジャー)ね!」

「はい、○つけておきますね」

「ありがとー!」

 該当箇所を指でタッチして、○をつける。

「それと、確か経済的な発展をさせるための『転生者』を欲しがっている世界があったかと思うんだけど……千代ちゃん、確認してもらえる?」

「はーい♪」

 千代ちゃんがカタカタっと端末を操作すると、すごい勢いでデータが出てくる。

 その中で、今私が言った世界をパッと見つけ出す。

 紫翡翠の眼(ラベンダーアイ)みたいな便利な能力を持っていないはずなのに、すごい。

「ここですね。

 その後どうなったか、管理課行って聞いてきますー」

「おねが……もういないし」

 言い終わる前にすでに姿はない。

「あ、ついでに」

「うわぁっ!」

 消えたと思った瞬間に戻ってくるのは勘弁して欲しい……。

 心臓に悪い。

「あ、ごめんなさい」

「だいじょぶ、だいぶびっくりしたけど」

「すみません……。

 あ、それで、管理課でデータ入れてもらって、そのままタブレット戻してきちゃいます」

「ああ、そうだね。

 よろしく」

 ……さすがハイパー、気が利くったらない。


 そんな感じで、私の新しい生活は平和に過ぎていく。

 けれど、平和っていうのは長く続かない。

 天災は忘れた頃にやってくる、とはよく言うけれど、まさにその通りだと、このあと嫌という程思い知らされることになるのだ……。


いつも応援ありがとうございます♪

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今週から、月・金更新になりますので、よろしくおねがいします♪

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