番外編1 もふもふソムリエ
頭を空っぽにしてお読みください(笑)
転生局へやってきてから、ずっと考えていたことがある。
業務を行ってきた約半年の間、変わらず思い続けていた。
そう。
もふもふ局長のもふもふに顔をうずめたらどれだけ気持ちいいだろうか、と――。
しかし、残念なことに大きさが足りない。
両手にちょこんと乗るくらいの手のりサイズなのだ。
仮に顔をうずめたところで、すぐに骨にあたってしまう。
それではもふもふ度半減だ。
100%堪能することができない。
もう少し大きくなってくれないかな……いつしか私はそう願うようになっていた。
以前、『私のおかげで転生局の成績がよくなったお礼』に心ゆくまでもふらせてもらったことがあるが、あれは至福だった。
その時の感触を思い出しながら、もし局長が今よりも大きなサイズであったならば? と想像をしてみる。
一番気持ちいいのはどこだろうか?
一番ふかふかしていたのはお腹だったが……いくら相手がうさぎとはいえ、正面から抱きつくのは少々恥ずかしい。
いや、その恥ずかしさを乗り越えてでもやるべき価値はあるか……。
今のサイズですらふっかふかのもふもふだし、顔どころか体ごとうずもれてもお釣りが来そうだ。
前足にしがみつく、というのも捨てがたいが……もふもふ度で言えば劣る。
というか、絵面的に木にしがみつくコアラみたいで、なんともかっこ悪い。
だが……お腹とは違うふわふわ具合は、他の部位にはない気持ちよさだった。
カッコ悪さなど気にしている場合ではなさそうだ。
背中はどうだろう?
あの毛並は素晴らしいものがあった。
スベスベでいながら柔らかく、沈み込む指を優しく包む包容力は流石といったところか。
背骨があるため、現段階では存分にうずもれられないが……大きくなればいけるかもしれない……。
実際に局長が巨大化するわけでもないので、所詮は妄想でしかないんだけど。
……なんて、思っていたのに。
拉致された私を助けに来てくれた局長は、まさかの巨大毛玉形態だった!!!
なんという奇跡!!!!
「はぅ……もふもふ……これは星5つあげたくなりますね……」
「それはどうも……」
局長の背に体ごとうずもれながら、至福の感触を味わう。
拉致された場所からの帰り道。
『弥勒さまアラーム』の発動に、私の体力と魔力が根こそぎ使われてしまい、身動きがとれなくなってしまっていた私は、まだ大きいままだった局長の背中に乗せてもらって運ばれることになった。
こんな所で夢が叶うだなんて。
拉致されるのも、悪いことばかりではない。
「さすがもふも……ラビエン局長。
精神的に弱っている私のために、わざわざもふもふ度をアップさせてくれたんですね……」
「いや、さっきも言ったけどこれは『バトルフォーム』ってやつでね……?
ていうか、今、もふもふ局長って言いかけたよね!?」
「あ、別にそういう『設定』はどうでもいいんで」
「設定じゃないよ!?」
「今はただ巨大もふもふ、っていう事実が大事なのです。
詳細なんて些細なことは知る必要はないです」
「『詳細』は『些細』ではないはずだが……」
「もう、うるさいですねぇ……。
もふもふを堪能しているので、少し黙っててください」
「……えーっと、気のせいかな?
とても元気なような気がするんだが……?」
「もちろん気のせいです」
ああ、やはり私の予想は間違っていなかった。
大きな局長のもふもふっぷりは、高級な羽毛布団どころの騒ぎではない。
もう毎日これでいてくれたらいいのに……。
「螢子ちゃん、寝ちゃいましたね」
「そのようだね」
「……その、なんといいますか……こんな幸せそうな顔で寝る人、初めて見ました……」
「たまにこのもふもふへの執着が怖いよ……」
「ふふふ、かわいいじゃないですか?
……ああ、この顔を見ていると私も埋まってみたくなりますね……」
「ちょっと!? ミルティくん!?」
「冗談ですよ、局長」
「そ、そうか……。
目が本気に見えたが……」
「うふふ……」
「ま、まぁいい。
すまないが、ずり落ちそうになったら教えてくれないか?」
「はい、局長」
◇
翌日。
転移局へお迎えに来てくれた局長はいつもどおりの手のひらサイズになっていて、とてもとてもがっかりした。
なんせ、昨日はあのまま寝てしまったために、前足とお腹を堪能しそびれてしまったのだ。
「も……ラビエン局長。
また巨大化してくださいよー」
「だから、昨日言ったようにあれは『バトルフォーム』なんだよ。
戦闘がないのに、そうそう変身はしないのさ」
「えー、けちー」
「『ケチ』とかそういうことじゃなくてだね。
第一、変身するのは結構疲れるんだよ?」
「むぅー。
あ!」
「ん?」
「えーっと……なんとなく急にめまいがした気がするので、またおぶってください」
頭に手を当てて、よろける。
「……螢子くん、さすがにその三文芝居に騙されてあげるつもりはないよ?」
「芝居だなんてやだなー」
まぁ、我ながらダイコンだと思うけども。
「だ、大丈夫か!? ホタルコ!?」
「……フーちゃんて、純粋だよね」
なんだか微笑ましい気分になる。
なでなで……あ、狐耳の手触りが結構いいぞ?
「な、なんだ、いきなり!?」
「いえいえ。
……フーちゃん……尻尾触ってもいい?」
「へぁあっ!?
そ、そんなのダメに決まっているじゃない!?」
顔を真っ赤にして狼狽えるフーちゃん。
……これは……ぜひとも触りたい!!
「このめまいもきっと尻尾もふもふしたら治る気がーー」
「そ、そうなのか……それならしょうがないな……。
少しだけだぞ!!」
「……ほんと、いい子だなぁ……なんかこう、ちょっと罪悪感が……」
「……螢子くん……満面の笑みで触りながら言っても説得力はないぞ……」
ラビエン局長の冷めた声でのツッコミが聞こえた気がしたが、狐尻尾のもふもふの前では無力。
「これは、すごい……」
ウサギのもふもふとはまたひと味もふた味も違う。
もふもふ、というか、もっふもっふ、といった方がいいかもしれない。
ああ、いつまでも触っていたい……。
「も、もういいだろう!
な! な!!!」
「手触りもですけど、いい匂いですね……」
「に、匂いとか言うなー!!!」
「セクハラね」
「セクハラだな」
「セクハラですね」
ミルティ先輩、ラビエン局長、クレィさんの声が示し合わせたようにハモる。
「気のせいです」
まぁ、うん、これ以上やるとフーちゃんが倒れてしまいそうなので、やめておこう。
「というか、ホタルコお前! 元気じゃないか!?
も、もしかして、さっきのは演技か!?」
「あー……フーちゃんの尻尾が気持ちよすぎて元気になりました。
ありがとうございます。
尻尾効果すごい」
「お、あ、え? そ、そうか、私の尻尾そんなすごいのか!」
「……チョロい」
「ん?
……あー! やっぱり! おまえー!」
「あはは、また今度もふらせてくださいねー!」
「断固として断る!!!」
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今週木曜日はお休みを頂き、来週より第4章スタートです!
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