第21話 ルビーアイ
「どうなんだ?」
「……ダメだね、完全に魂と融合してる」
「取り出すことはできない、ということか」
「そそ、コレは無理だわ」
話し声が聞こえる。
ゆっくりと、水面に浮かび上がるように意識が覚醒してくる。
もう少し寝ていたいのに、うるさいな。
仕方がない、とりあえず起きるか……と思ったけど、頭に靄がかかったようで、どうにも思考が定まらない。
体にも力が入らない。
ちょっと飲みすぎた時のふわふわした感じに似ている。
あと2~3杯行くと気持ち悪くなるんだけど、このくらいの感じは結構好きだ。
今日は仕事休んで、このまま寝ていたいなぁ……。
「どうしたらいい?」
「そうだなー。
自分から協力してくれるのが一番だけど……」
「……難しいだろうな」
「てなると、薬か魔法か、手段はともかくとして傀儡にするしかないんじゃねーの?」
「問題は、その場合に『眼』が正しく発動するかどうかだな」
むぅ……人がせっかくなんだかいい気分になっているっていうのに、周りが騒がしい。
ていうか、なんかすごい物騒な話をしてないか?
あれ……?
そういえば、私……
……思い出した。
なんか、三つ目の偽クレィさんの目が光ったと思ったら、そのまま意識が飛んだんだった。
えーっと……ああ、どうにも頭がぼんやりしていけない。
多分だけど、なんか拉致とかそういうアレ。
会話の内容からすると、『紫翡翠の眼』だけ取り出そうとしてる?
ダメならダメで、自分たちのいいように使いたい、って感じぽい。
んー……体に力が入らないな。
意識は……とりあえずなんとか。
少しぼんやりした感じはあるけど、少しずつ頭がハッキリしていくのはわかる。
とりあえず、身動きは取れなさそうなので寝たフリを続けながら様子を窺うとしよう。
まずは自分の状態の確認。
何か硬い台の上に寝かせられているのか、横になった背中側がゴツゴツしてて痛い。
仕事が忙しくて疲弊して帰って、床で寝てた時みたい。
せめてふかふかのお布団に寝かせておいてほしいものだ。
「う、う~~ん」
軽く寝返りを打ってみ……ようとしたけど、全然力が入らない。
もうね、小指の先をピクリとも動かせない。
しびれた感じはないし、肌に物が当たる感じはあるので麻痺しているわけではなさそうだけど。
まぁ、どうせ動けたところで『か弱い乙女』の私が腕力でかなうとは思えないのでいいか。
とりあえずは問答無用で危害を加える気はなさそうだし。
「起きたか……?」
「いや、大丈夫っしょ。
真正面からこの俺の紅玉の眼の光を浴びてんだし。
どんだけ紫翡翠の眼持ってっからって、そう簡単にゃ目覚めねーよ」
話し声からすると、今ここにいるのは二人だけのようだ。
どうにもチャラそうな喋り方をしてるのが偽クレィさんだとして、逆にやたら堅っ苦しい喋り方をしている方は聞き覚えのない声だ(仮にKさんとしておこう)。
しかし、寝てると思ってるからか、勝手に情報を喋ってくれるのはありがたい。
で、紅玉の眼の光、と言うのが私が見た赤い光の正体で間違いなさそうだ。
今の私の状態からして……体の自由を奪う(力を入らないようにする)能力とかそんな感じか。
魔王みたいな名前のクセに、随分セコい。
いや、そんなこともないか。
強力かもしれないが……地味だ。
ランク的には、紫翡翠の眼の方が上位なのだろう。
向こうの予想より早くに覚醒したのはそのためかな。
元々弥勒さまの能力だし、そりゃそうか。
さて。
現状がわかったけれど、どうしたものやら。
なんとか少しずつ体は動くようになってきているけど。
「いっそ、殺してしまうというのはどうだ?」
なんてことを考えていると、Kさんがとんでもないことを言い出した。
『どうだ?』じゃないよ!
いいわけないじゃん!
「いやいや、それこそマズイべ。
つーか転生局へ来た時に一回死んでんのに、融合したまんまだしなー。
もっかい殺ったところで、下手したら紫翡翠の眼ごと消えんじゃね?」
そうだそうだ!
偽クレィさんいいこと言う!
しかしこれ、話しぶりからしたら、チャラい偽クレィさんの方が堅物(と思われる)Kさんより偉いっぽいな。
現世でもたまに聞いたけど、チャラいにーちゃんが上司とかなかなかに辛いものがある。
その後も、ああだこうだと、二人が話をしているのを聞いていたけど。
どうにも決め手に欠いているようだった。
途中、『目玉をえぐり出す』とか怖い話もでていたけど、魂と能力が融合しているのでそれでどうにかなるわけないだろう、とのこと。
夢うつつで聞いた気がしたけど、魂に融合する、って結構おおごとじゃない?
え? なに?
てことは、紫翡翠の眼を弥勒さまにお返しすることができないってこと??
……それとも弥勒さまならなんとかなるんだろうか。
そういえば。
結局この人達は何者なんだろう?
目的も謎だ。
『紫翡翠の眼が欲しい』のは手段であって、それで何かしたいっていう目的があるはずだ。
私と眼が分離できないのであれば、内容次第では協力するのもやぶさかではない。
まぁ、『拉致って無理矢理』の時点で、真っ当なことに使うとも思えないけど。
よし、そろそろ体も動くようになってきたようだし、いい加減起きるとしましょうかね。
ところどころ物騒な話は出ていたものの、紫翡翠の眼を失うリスクがあるから、手荒なことにはならないだろう。
とりあえずは、うまいこと交渉しなければ。
生前、『営業職じゃないから』って、交渉術の講習サボるんじゃなかったなぁ……。
ルビーアイと聞いて、シャブラニグドゥ、が出てきたらお友達です(笑)
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