Link.51 間章 とあるエンゲージの一日①
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「アマネ!!こっちです!」
「はいはい……なんでそんなに興奮してんの……?」
時は遡りある日の休日
意欲的に休日も魔法実践学を学園で習っていたものの、本日はそれもなくオフになった
だからせっかくだしセラノアの新しい服とか、適当に歩いてこの国を見せたいと思ったんだけど………
この子服にえらく興味津々だな……?可愛いけど
「おおぉぉ……!!!これが言っていた"しょーけーす"ですか!これはなんですか!?み、見えないけど触れる壁……魔法がこんなところにも!?」
「ガラスだよ。あー……詳しくはないけど砂を焼いて作るもの……みたいな?」
「砂を焼いたらこんなものが!?………砂を焼くってどこからそんな発想が」
ここは学園都市外の国内でも有数のスーパーマーケット「ゲンダイ」。
ファッションから文房具、食料品や日用品までなんでもござれのスーパーマーケットだった
ガラスの作り方についてアマネも別に触れることのない分野のため詳しくはない。
だがそれでもガラスという物質を知らないのは意外だった
「1000年前ってガラスもなかったの?」
「そ、そう言うってことはそんなにメジャーなものなのですね………ありませんでしたよ」
自分のはしゃぎようを俯瞰したのか、少し恥ずかしそうにこほんと咳き込みながら答えるセラノア。
しかし抑えきれないのかまたすぐに目を輝かせて辺りを見回していた
「ん………そうですね、落ち着かなければ」
「?どうしたノア」
「いえ、気にしないでください。少し咎められただけです」
咎められた、とは罪架のことだ。
アマネはあの夜のことを思い出す
──少し前こんな会話をした
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「私は、権能を使えません」
オムライスを食べた夜、セラノアは同じようなことを言い、理由については言いづらそうにしていた。
ただ、ロゼと面談した夜、セラノアは家でそう切り出したのだ
「え………?」
食器を共に洗いながら、突然の切り出し方に固まるアマネ。
セラノアは暗い顔をして手は止めずにお皿を洗っていた
「私の体には、今日行った通り罪架という………いわば人の怨念のようなものがあります」
言うのが怖いのか、勇気を振り絞るような少し震えた声でそう言うセラノアは、どこかとても小さな存在に思えた
「………大丈夫、セラノア。」
「………!………はい」
自分の罪と向き合うのは怖いだろう。
それも自覚のない罪を目が覚めると背負っていた少女だ
………逆によく投げ出さなかったものだと思う
「一人を殺せば一つが体に宿り、二人を殺せば2つが入ります。……それは宿った時からずっと耳元で恨みを囁くのです」
「………それが、眠れない理由?」
セラノアは家に来てから一度も寝ているところを見たことがない
天使だから睡眠が必要ないのかと思ったが、別に天使も眠ることを授業で習っている。
基本型は人間と同じなのだ
「………はい。ですが封印で眠り続けていたのです。必要はありませんよ」
「寝だめって効果ないらしいけど?」
「………もう、そんな話をしているわけじゃないんですが?」
少し暗い表情がいつものジト目に戻っただけでも気は楽になっただろうか?
軽く笑って謝りつつ、話の続きをアマネは促した
「──権能を使うとふ……一つの代償が伴います。それがこの罪架によって蝕まれると言う点です」
「蝕まれる?」
「はい、使った瞬間、恐ろしいほどの罪架の叫びを聞き、心に無数の針が刺さったような痛みを感じます。………抉られているような、貫かれているような。」
アマネは何も言えない。
その感覚を共感できないからだ
ただアマネも目を伏せてその辛さにできる限り寄り添うことしかできなかった
「封印が解けた直後は、眠っていた時にもその痛みがずっとあったので慣れていたのもありまだ表情には出さずに済みました。けど………」
「今は痛みはないのか?大丈夫?」
「………はい。声だけです」
つまり、セラノアは眠っている間と権能を使っている間、もしくはその後痛みに苛まれる。
それにもう耐えられる自信がなかったのだ
アマネはそれを察してそれ以上言葉を続けさせなかった
「そりゃよかった。──前も言ったけど、気にするなよ?俺はそれでもセラノアと目標を達成したい。同情もあるけど………俺はセラノアと過ごすのがたぶん好きだからさ」
「………………………この男は」
アマネはただ、正直に気の抜けた笑いを込めてそう言った。ただただこれは本心だ。やっと言語化できた気がする
それを聞くとふいっ、とセラノアは顔を逸らした
ついでに小さく悪態をつくが顔の向きを戻すつもりはなさそうだった
「………わ、私も…………別に………悪くはない、と思ってますよ」
「はは、知ってる〜」
「っ〜………この、傲慢男」
アマネはその様子の意味を知っている
だからこそ悪い笑みを浮かべてセラノアを揶揄うのだ
セラノアは食器とゴム手袋を置いてアマネの胸を軽く一回パンチするとそそくさと自室に戻ってしまったのだった
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つまり、今の"咎められた"は罪架による恨み言が耳に届いてしまったということだった。
普段なら気づかないほどに小さな恨み言も、ある時にふと強くなった気がして聞こえる。
そんな耳鳴りのようなものだった
「大丈夫か?」
「……はい」
………わかっています。必ず真相を明かして、あなた達に謝ります………だから、少し今だけでも、ただのノアでいさせてください
ふとセラノアは心の中で罪架にそう伝える。
傲慢な願いなのはわかっている
人殺しが幸せを享受したいなんて
その罪悪感があるからこそ、アマネのあの言葉に救われる。縋ってしまう
"苦しむのは、必要な時でいい"
今は、たまに幸せが、楽しさが、"声"を凌駕することがある
………この傲慢は
「………誰に似たのでしょうね」
「なんの話?」
少し泣きそうな顔をして俯くセラノアだが、アマネからはその表情が見えなかった
本心を語れば、身に覚えのない、しかし証拠のある人殺しの罪を負っているのだ
どうして?なんで?………そんな身勝手な感情が溢れてしまう
………たまに身勝手を解消しなければ、本当にダメな時に誤った判断を下してしまいそうなんです
………どうか、許してください
「───さっ、この時代の服を見に行きましょう!アマネ!」
「……………わかった」
ぱっと顔を上げると自然な笑顔を浮かべてみせるセラノア。
アマネはなんとなく違和感を感じつつも、それに突っ込むことはなかった




