エピローグ 一学期の終わり
夏、七月十五日。
終業式が終わり、私はナゴミを家に連れて帰る準備をしていた。
夏休み中は売店も休みだ。だから、多めにおやつを買っておかないといけない。そうナゴミに注意されたのだ。
「ご主人のSPは残り……60もあるっすよ!? サツマイモどんだけ買えるんすか!?」
「それは貯めてるの。あとで売店でおやつは買うけど、SP全部は使わないよ」
「貯めるんすか。サツマイモ」
「違う、SP! 二学期の課題で、また何かあったら使うもん。ナゴミが無茶しないよう、私だって考えてるの。アイテムで助けたり、アイデアをもっといいのにしたり、そしたら」
「水臭いっすよ、ご主人! ご主人の無茶振りアイデアを叶えられるのは、自分しかいないんすから〜!」
それはそうかもしれないけど、さっきからナゴミが私の上靴を踏んでいる。やけに親しげだし、サツマイモのために何か企んでいるに違いない。
そんないじらしいナゴミを、メンちゃんがふよ〜っと上から覆い被さって、クレーンゲームのように連れ去りかけていた。ナゴミは暴れて必死に脱出している。
ココアがメンちゃんを回収しながらやってきた。エルはちょっと引き気味に、遠回りして私の横に来る。ちょうど、ココアの反対側だ。
「お〜、サツマイモどのくらい買うかでバトルが白熱してる?」
「ビーバーのサツマイモへの情熱って、ほんと何なの?」
「ココアちゃん、エルちゃん。夏休み中はあんまり会えないね、ってシンくんはもう帰ったの?」
「ああ、シンくん? 夏休み中にもっとVRのこと勉強してくる、って言って、さっきダッシュで帰ってたね」
「多分、課題でナゴミちゃんが見せた『群れモード』のこと知らなかったから、じゃないかなぁ。あれ、すごかったねぇ」
「VR空間ステージの隠しエリア、自分も見つけたかったって言ってたし、なんか修行とかしてくるんじゃない? よく知らないけど」
そっかぁ、と私は生返事をするほかなかった。男の子だから、ゲームとか勝ち負けとか、いろいろこだわりがあるのだろうと思う。夏休み明けが楽しみだ。
一方、ナゴミもそんな気質があった。
「ぐぬぬ、自分も負けてられないっすよ、ご主人! 修行ってどうするんすか?」
「えぇ〜……帰ったら、調べてみようか」
「お願いするっす! うおお! ビーバー奥義を増やすっすよー!」
「できれば、サツマイモの消費が抑えられる方向で頼みたいんだけど」
「それは断固拒否するっす」
さっきまでの熱意はどこへやら、ナゴミは真剣そのものだ。
そのギャップがおかしくて、三人で笑ってしまう。
一学期が終わり、夏休みが始まる。
私の『使い魔』は、サツマイモが大好きな、まんまるビーバー。
私はナゴミに急かされて、売店へサツマイモとキャベツを買いにいく。
(了)
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