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プロローグ

俺は奴隷商人だ。言い訳する気も、美化する気もない。


人を売って金を稼ぐ。

それ以上でも以下でもない、実に分かりやすい仕事だ。


世の中には、奴隷制度を嫌う人間がいる。

「人を物のように扱うなんて最低だ」とか、「自由は尊い」とか、

口にするのはだいたい、奴隷を買ったことも、売ったこともない連中だ。


そういう連中は、だいたい続きも言う。

「解放すべきだ」とか、「救うべきだ」とか。


正直に言おう。

あれは金にならない。


俺の仕事は商売だ。

救済活動でも慈善事業でもない。

だから、安く買って、整えて、高く売る。

ただそれだけを、きちんとやっている。


多くの奴隷商人は、この「整える」という工程を嫌がる。

飯を減らし、怪我を放置し、言うことを聞かなければ殴る。

手っ取り早いし、楽だからだ。


結果どうなるか。

商品価値が落ちる。


だから俺は、逆をやる。

金をかけて飯を食わせ、寝かせ、洗わせる。

必要なら読み書きや簡単な作業も教える。

殴らないし、怒鳴らない。


壊れた商品は売れないからだ。


善人だからじゃない。

商人として、その方が正しいだけだ。


俺の荷馬車の後ろには、今「商品」が四人いる。

男が2人、女が1人、子供が1人。

どれも、他の奴隷商人が「割に合わない」と判断して手放した連中だ。


怪我持ち、衰弱、行き場なし。

要するに、安く買える理由が揃っている。


もっとも、今の状態を見れば、そうは見えないだろう。

檻は使っていない。

鎖も最低限だ。


逃げようと思えば逃げられる。

だが、逃げない。


逃げれば、自分の値段が下がることを理解しているからだ。

教育とは便利なもので、殴らなくても人は学ぶ。


そして俺の売り先は、奴隷市場じゃない。

――故郷だ。


正確には、帰れる場所。

家族、村、元の所属先。

貧しいところも多いが、そういう相手ほど高く買ってくれる。


感情が絡むからだ。


「家族を返してほしい」

「この子を連れ戻したい」


その必死さは、同情するには十分だし、

値段を釣り上げる理由としては、もっと十分だ。


救っているつもりはない。

解放している自覚もない。


ただ、俺は今日も、商品を一番高く買う相手に売る。


それが結果的に「帰る場所」になるだけの話だ。


だから俺は、奴隷を故郷へ売りつける。

それが一番、儲かるから。

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