↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
情報屋shrineの人助け  作者: 目黄葉
第四章 
24/29

良い夢を



「もちろん」


 絆音は、自分の決意を自分に言い聞かせるため、咲真に安心してもらうため、頼もしそうに、答えた。


 その助けて(言葉)をどれだけ待ち望んだことか。


(やっぱり、月麦にこの場に残ってもらってよかっ

 た)


「そ、れデハあたしは、これで、シツレイシマス」


 居心地が悪そうにそう言って咲真の胸ぐらから手を離し、どこかへ行こうとする月麦、の手首を咲真は掴んだ。


 そして、強がりながらも震えた声で咲真は不器用に月麦を引き留める。


「僕…月、麦の言葉で、泣いた、んだぞ。

 そん、な僕、を置いて、行く、つもり、か?」


「………わかったよ」


 月麦は口を尖らせながらぶっきらぼうに咲真の不器用な“行くな“を受け入れた。


「それでは、咲真さん落ち着いたら、白木さんの車へ

 行きましょうか」



「は、い。あり、がとうございます」


 そんな咲真に月麦がハンカチを咲真に押し当てる。


「これで拭けよ。

 洗って、


 返すかはお前が決めろ」


「?、ありがとう」

 咲真は月麦の言っていることの意味が少しわからなかったが、べそべそした顔のまま柔らかく、ふへっと笑った。




「なんだ、普通に笑えんじゃん」

 月麦は咲真に聞こえぬようにボソッとそう呟き安心したように笑う。


「月、麦、なんか、言った?」

 咲真は月麦のハンカチを丁寧に使いながら月麦に問う。


「言ってない!ってかさっさと泣きやめ!」

 月麦は照れを隠すように咲真の頭をはたく。

 

「いだっ!

 泣かせた本人がそれ言うか!」


 出会った時のようにギャーギャー喧嘩する二人を見て葵は絆音に話しかける。


「止めないでいいんですか?」

「もう少し、もう少しだけ、見させてください。



 本当に、今止められたことに安心、していまして、



 二人が喧嘩しているのが、すごく、微笑ましい、

 と言いますか、」


「わかりました。


 でもこのままいくと、取っ組み合い始めますよ」

「それは困りますね。では、そろそろ、いきますね」


 絆音は咲真と月麦の元へ足を進めた。

「二人とも落ち着いて」


「落ち着けない!」

「落ち着けません!」


 二人の喧嘩を仲裁しようとするが、絆音一人では無理そうだ。

 かといって葵に頼むのも、なぁ、と思っていたその時。


「おい、

 遅いと思ってきてみりゃ、一体全体どういう状況

 だ?」

「あぁ、白木さんいいところに、

 二人の喧嘩止めるの手伝ってください。


 後で話します」


 そう、白木が髪を掻きながらこちらへ来たのだ。

 なので絆音は遠慮なく白木を使う。


(話さなくてもお前の顔と状況みりゃ結果ぐらいわかる

 っての)

 白木は心の中で微笑むが、それを外には一切出さず、不満気な態度で絆音の頼みを引き受ける。

「へいへい、わかったわかった。


 じゃ、前と同じで」

「了解です」


「おーい、二人ともー、というか咲真くーん。

 一旦落ち着こうかー」

「し、白木さん?なんで、ここに」


 咲真が白木に気を取られている隙に絆音が月麦の近くへ行き月麦にこそっと月麦に聞こえるだけの声で告げる。

「月麦、いくら照れ隠しだからって喧嘩に発展するのは

 ダメだよ」

「て、照れ隠しじゃないし!」

 明らかなる、嘘である。

「じゃあ何?」

「しらない、」

 遂にはそっぽをむきはじめた。

(まったく、子供なんだから)


「月麦、ごめん」

 絆音がさらに言葉をかけようとしたとき、咲真が月麦に謝った。


「なんで、そっちが、謝るんだよ」

 いつもハキハキ喋る月麦の歯切れが珍しく悪い。

「なんでって喧嘩はお互い様、じゃないの?」


「月麦

 心に正直に、でしょ?」


「…………うん。


 咲真、ごめん。はたいたりして」

「別にいいよ」

「はい、これで終わり!」

 白木は喧嘩を強引に終わらせぺらぺら話を続ける。


「全員車乗るよな?

 さっさと行くぞ。


 席は、咲真くん前で他の三人ちょっと狭いが後ろでも

 いいか?


 まあ、小さいやつがいるからそんなに狭くはないと

 思うが」

「月麦、白木さんのすね、思いっきり蹴って」

「りょーかーい」


 “小さいやつ“という言葉にすぐさま反応し絆音は月麦に指令を出す。


 月麦は俊敏な動きで白木のすねに向かって蹴りをはなつ。


「い“っでぇ!!


 小さいやつがお前とは言ってねぇだろ!!」


 涙目になりながら白木は無意味な弁明を試みる。

「おや、そうでしたね。

 すみません。私ったら勘違いを。


 さっさと行きましょうか」

「お、おう」

 スタスタと白木の車に向かっていく絆音。



 月麦が絆音の背中を見ながら白木に問う。

「おい、蹴ったあたしが言うのもなんだが大丈夫か?

 というかなんで、アンタは懲りないんだ」

「いや〜、ははは。

 なんで、だろーなー」


 白木が、頭を掻きながら脂汗ダラダラでチラチラ目線を咲真にむける。

 

「なんで、僕の方、見るんですか?」

「いやー、その、」

 泣き止んできた咲真の問いに白木はもごもごしたままだ。


「もしかして、僕、を笑わせようとしてくれてまし

 た?」

「……まぁ、否定はせん」

「ありがとう、ございます」

「お、おう」

 白木は咲真の素直な礼とひかえめな笑顔を不器用に受け取る。


「そんなことだろうと思いましたよ。


 そして、それとは関係なく、早くきてください。

 運転手さん?」

「ひっ!」


 冷え冷えとした声が白木を突き刺す。


「ほんっとうっに!すまん!!」

 白木はすぐさま絆音の前に膝をつき手を合わせる。


「お詫びの品は?」

「天宮(あまみや)堂の、栗羊羹を」

「許します」


(天宮堂って、……………あそこか。

 メディアへの露出が一切ない、

 ちょっとお高めでおいしいとこだ。

 栗羊羹はまだ食べてないなぁ。美味しいんだろなぁ)

 葵が記憶と想像で、天宮堂の和菓子を堪能していると咲真が口を開いた。

「津城さんって、栗羊羹がお好きなんですか?」

「はい。

 そのなかでも、天宮堂は格別です」

 珍しく絆音の目が子供のようにキラキラしている。


「また、出費かぁ」

「学ばないあなたの自業自得ですよ。さっさと帰りま

 しょう」

「はい」

 白木は肩を落としながらそう、答えた。


 それからなんだかんだ全員車へ乗り込んだ。

 



 白木が車を走らせてすぐに後部座席に座っている女性陣は疲れていたのだろう。寝てしまった。

 それを確認した後に咲真は白木に話しかける。

「すみません。僕のせいで、色々と、」


「出費のこと?いやぁそれなら気にする必要ないよ。


 しょっちゅうだから」

 白木は後ろを起こさないように静かに、だが騒がしく笑う。

「いえ、そのそうじゃなくて、それも、あるんですけ

 ど、僕の、せいでご迷惑が」


「迷惑?なんのことだ?」


「でも、僕のせいで」

「俺たちの時間がなくなったなんて言わないよな?」


「…………」

 咲真は口をつぐむ。


「咲真くん、それは、行動した全員の君に対するを無下

 にする言葉だ」

 先ほど笑っていたのはどこへやら、白木の声のトーンが下がる。

「はい、」


「俺は、グレーな係の係長やってるが、これでも警察

 だぞ?」


 赤信号で車を一時停止させると白木は声のトーンを上げ咲真の方を見て話す。


「津城はだれよりも君を心配してて、


 交久瀬は正義感が人一倍だ。


 君の先輩なんだから彼女も警察官なんだろ?



 人を助けたい。

 その気持ちは警察官(君)もよくわかるはずだ。

 おっと、」

 信号が青になったため白木は車を走らせる。

「でも、僕は」

 何かを言いかけた咲真を白木は遮る。

「復讐っていう目的のために入ったとはいえ、


 やりがいはあったんだろ?」

「はい」

 咲真は即答できたことに自分で驚いた。


「なら、君が刑事として助けた人がいるとしよう。


 その人から迷惑をかけてすみません。

 あなた達の時間がなくなったので。


 なんて、言われたいか?」


「それは、言われた、くないです」

「じゃあ、なんて言われたい?

 なんて言われたらやりがいになる?」

「!」

「それを俺たちに素直に言やぁいいんだよ」






「ありがとう、ございます」

 咲真はそう言って涙目になりながら笑った。



 白木はそれをちらと見、白い歯を出し笑った。

「……おう。よくいえたな。


 後で後ろの奴らにも言ってやれ」

「はい!」


  *  *  *


 白木は絆音の家の駐車場でため息まじりにつぶやく。

「着いたんだが、どうしたもんか。


 俺以外全員寝てるんだよなぁ」


 白木は後頭部をわしゃわしゃとかいてからシートベルトを外し後部座席の女性陣と、助手席に座っている咲真を見て、微笑んだ。

「しゃあねぇ。

 あと、五分は寝かせてやるか」


(神とやら。いるんならさ、


 良い夢くらい、見せてやれよ)

 


 きっちり五分後。


「なんで、起こすと言ったあなたが寝てるんです

 か?」


 そう、絆音は着いた時には起きていた。なぜそんなことをするか?まぁ、いつもの意地悪だろう。

「仕方がない、起こすか」

 両隣の二人を起こす。(絆音がなぜ真ん中になったかは、月麦に蹴られたくはないので割愛しておく)


「月麦、月麦、起きて。着いてるよ」

「んぇ?」


「葵さん、起きれますか?」

「うー、、ん?、」


 数回ゆすりながら声をかけると二人はまだ眠そうでぽやぽやしながらではあるが目を覚ました。


「おはようございます」


「「おはよーござい、ます」」


「ちゃっちゃと用意するのでさっさっと家入って寝ま

 しょうか」

「咲真と白木、、さんはどうするのー?」


「咲真さんは起こそうかな。月麦は葵さんを連れて先

 入ってて。後で行くから」

「わかったー。えっと、葵さん、でいい、デスカ?」

「はい。タメ口で、大丈夫ですよ」


「いいの?!?」

「はい」

「じゃあお互いにタメ口で!」

「は、いじゃなくて!うん!」


 二人は仲を深めながら車から出て、家へ入って行った。


 それを確認した後ぼそっと呟く。

「そろそろ、

 “タヌキ“を退治しなければなりませんかねぇ?」


 寝ているはずの白木の肩がビクッ!と跳ねた。

「気付いてんなら言えよ」


「どうせ葵さんを起こしたあたりで目が覚めたのでし

 ょう?」


「……なんで、わかるんだよ」

 拗ねた子供のようになる。

「さぁ??

 それじゃ、咲真さんは家に入れるので、おやすみな

 さい」

「俺も入れてくれよ?」

 二人とも咲真に配慮してか、声は小さい。


「はいはい。

 咲真さんを寝かせる部屋の床でいいですか?」

「布団があるならいい」

「月麦に交渉してください。

 それじゃあ咲真くんを連れて来てくださいね」

 相も変わらず辛辣である。


 だが、二人ともそれが、その距離感が丁度良いのだろう。


「それじゃ、眠り“姫“ならぬ“王子“起こしますか」


 白木はなぜかウキウキで咲真を起こそうと手を、伸ばした。




 










 



 











































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。