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てんあいの御伽草子  作者: てんあい
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庶民達の革命

それは、何処かの世界の、何処かの国の、何処かの人々の物語。



長いようで短い人生の中で、意義深い日々が掛け替えのないものである事に喜びと驚きを覚える。 ほんの一瞬の輝きであったはずなのに、決して忘れる事は出来ないのだ。

あの時も間違いなく意義深い日々であったと思う。

それは自分自身にとっても、そして、この国にとっても、とても重要な意味を持つ日々であったからだ。



「おい、遂に決まったぞ。御公儀(ごこうぎ)がやっと決断した」


彼が興奮した様子で私の部屋に入ってくる。

私は書見台(しょけんだい)から目を離し、彼に顔を向けた。


「凄い事だ、神君家康公より200有余年、とうとう幕府は権力を手放した!!」

「そうか、ついにやったか!」


私も彼につられて興奮気味に言葉を返す。

それはそうだろう、なにせ永遠に続くかと思われた江戸幕府が、今までにない大改革を行おうとしているのだから。


「いやはや、まさか薩摩藩主島津公の建白書(けんぱくしょ)を御公儀が取り上げるとは思わなかった」


彼は興奮さめやらぬ様子で私の前に座る。

私も改めて彼の前に座り直した。


「これで、この国は変わるかな?」

「変わるさ!御公儀でさえ覚悟を決めた。後は俺達がどうするかだ」


青年らしい気概(きがい)で彼は私の疑問を一蹴(いっしゅう)する。

そうだ、そうなのだ。

打ち続く飢饉に天変地異、動揺する幕藩体制、ここ数年来俄(にわか)に表れ始めた外国船……。

内憂外患のこの国で安逸(あんいつ)(むさぼ)る幕府に対して、最初に立ち上がったのが名もなき庶民達だった。

「世直し」を御旗に掲げ、まずは都市部の住民達が公然と幕府に意見を言い出した。

江戸開幕以来こんなことは初めてだ。

それだけではなかった。

今度は農村部の住民までもがそれに同調する。

そう、士農工商の内、農工商が大同団結をしたのだ。

仰天した幕府は、各藩に対して弾圧を命じる。

しかし、各藩は動かない。いや、動けないと言った方が正確だった。


(このままでは大混乱になる……)


そう考えた島津公は、幕府に対して建白書を提出する。

幕府は黙殺の構えを見せるが、建白書に同調する藩が出始め、それが次々と拡大していく。

更には朝廷までもが幕府に改革を命じる事態となった。

平和な時代にどっぷりと浸かった幕府に最早それをひっくり返す力はない。

当初は、場当たり的な小手先だけの改革でお茶を濁そうとした幕府であったが、朝廷、各藩、そして、何より庶民達、すなわち日本国中からの強い圧力に抗しきれず、とうとう幕府は全国に通達を出す所まで追い詰められた。

これが後に、「江戸第一革命」と呼ばれる事件だった。


「世の中は変わるぞ!」

「ああ、そうだな」


そうであって欲しい。

生まれや身分で全てが決まってしまう、そんな国を変えていきたい。

分け隔てなく平等に機会が与えられる、素晴らしい国を目指したい。

皆が当たり前の様に笑って過ごせる国を作りたい。


彼のやる気に満ちた表情を見つつ、私は微笑んだ。

第二話を投稿してみました。

よろしければ、是非読んでみて下さい!

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