6話 最初の町
忙しかったからね。仕方ないね
「さあ、ついたぞ!ここが『中間都市アクシス』だ!」
大きな門を抜けた先は店や家が規律正しく立ち並んでおり、人々は活気にあふれている。いたるところからお店の客引きや、店主と客の何気ない会話。子供たちは仲良く駆け回り、周囲の人々はそれを温かく見守っている。雰囲気はとても良い。
「へえ~。大分にぎわっていますね!」
「(すんすん)…ムラクモ!あっちからおいしそうな匂いがする。食べたいからお金頂戴!お金!」
「俺たちが一文無しなの忘れたのかよ。」
「ならば…。これで好きなものを買ってくると良い。」
駄々をこねるアメノにレイヴェルは懐からキラキラ輝く硬貨を取り出す。それを見て、アメノは一瞬きょとんとするが、ありがとうと満面の笑みで言った後、その硬貨を握りしめてピューとお店のほうへ消えていく。
「すみません。あいつが駄々こねて。必ず返しますんで。」
「なに、かまわないさ。それより君も…ムラクモもなにか買いたいなら行ってくるといい。」
「ありがとうございます。でも俺は大丈夫です。…ところでさっきこの町を中間都市って言ってましたけど、それってどういう意味なんですか?」
アメノがゆっくりと先導しながら歩くのに合わせて俺も足を動かす。俺は中間都市という言葉が気になったからそれについて聞いてみた。
「ここは『セイシン王国』と『厄災の地』前線を繋ぐ中間都市なんだ。王国からは食料や物資を送り、前線からはそこから取れる材料や素材なんかを送りあっていて、ここはその物資を安全にやり取りする町なんだ。もちろん、素材はここにも卸されているし、前線への物資と一緒にここにも商品をついでに卸すからここは商売の町としても人気なんだ。」
「へー。だからこんなに店があってこんなに賑わっているんですね!」
「ああ。…ところでさっきから気になっていたんだが敬語はやめないか。恐らくだが、私たちの年はそんなに離れていないと思うんだ。」
「そうですか?それじゃ遠慮なく。ため口で。」
そんなこんなで歩いていると、アメノが両手に飯を抱えてこちらに手を振っていた。
「おいしい!ムラクモ!これすっごいおいしいよ!」
「カー!うれしいこと言ってくれるじゃんか嬢ちゃん!よっしゃ!サービスで兄ちゃんの分もおまけで付けてやる!…って、そこにいるのはレイヴェルお嬢様じゃないですか⁉どうしてここに?」
「今は客人を屋敷に案内する途中なんだ。」
「すみません!まさか案内の途中だとは思っておらず…。」
「なに、構わないさ。ところでその美味しそ、私にもくれないか?」
「もちろんです!」
それを皮切りにいたるところからレイヴェルを呼ぶ声が飛び交う、それに対して笑顔で手を振りながら歩く。
「町の人から愛されているんだね。」
「ああ、うれしい限りだ。」
レイヴェルは満面の笑みで答えた。
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話しながら歩いていくと、少し豪華な屋敷が姿を現した。門は鉄製で鉄柵の隙間からは緑色の庭が見える。すると屋敷の中から一人の男がポケットの中に手を突っ込んだ状態で歩いてくる。
チャラそうなひらひらとした服で隠せていない筋肉がちらちらと覗いており、髪は金髪の短髪で首にはこれでもかと宝石が付いたネックレスをかけている。
「ギャハハ!おかえりなさいお嬢様。後ろに見えるのは新しい男ですかぁ?」
「いや、この人たちは新しく来た異世界人なんだ。」
「まじですか⁉久しぶりに見たぜ故郷を知る人間をよぉ!」
金髪チャラ男はこちらに近づき、背中をバンバンと叩き喜びを表す。
「俺も異世界人なんだよ!もちろん日本人のだぜ?俺は只野武。海がきらめく町出身だぜ!」
「なるほど。俺はムラクモです。諸事情でどこ出身かは覚えてなくて、返しの言葉が思いつかないのでこっちに丸投げします。」
「ふっ(嘲笑)。私はアメノ。ムラクモの妹をやってる。光り輝く空出身よ。」
「おおー!!お前たち面白いなぁ!それにしてもだが、名前もそうだが結構なくしたんだなぁ!実は俺も同じく『敬う気持ち』をなくしちまったんだぜ。昔は苦労したなぁ。ギャハハ!」
男は両手を腰に当てて、高らかに、そして豪快に笑う。
「ところで只野。時間的にも彼らをここに止めたいんだが、部屋は空いているか?」
「残念ながら今から部屋を準備するには使用人たちをこき使うはめになるから厳しいなぁ。社会見学ってことで周辺の宿屋に泊まらせたらいいんじゃねえの。」
「遠慮したら寝る場所がないからバカみたいな遠慮はしないけど、俺たちは迷惑が掛からないならどこでもいいよ。」
「私も基本的に野宿じゃないならどこでも大丈夫。」
レイヴェルは少し腕を組んで考えたのち、俺たちに宿屋の代金と食費。そして宿屋の紹介をしてくれた。
「明日またここに来てくれ。その時に改めて異世界関係の登録を終わらせる。」
紹介してくれた宿屋からレイヴェルが去る直前、そう言ってきたので俺たちはそれにこたえるように頷き、手を振って見送った。




