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1話 始まり

初めて文らしきものを書いたけど、めっさ難しいな。(9月30日の自分)

なにをしていたのかは覚えていない。適当になんとなく目的無く外に出て、ぶらぶらと街を歩いていた気もするし、なにか目的があってそれを達成するために歩いた気もするし、無心で歩いていた気もする。しかし、確かに覚えていることもある。俺は死んだ。急にまばゆい光が俺の目をつぶすように光った瞬間、大きな力で体を吹き飛ばされた。痛みが一周回ったのかあまり痛みは感じられなかった。


さて、そんな暫定的に見て死亡したであろう俺がなぜこんな回想を挟めるのか気になったのではないだろうか。その答えはありふれてはいないがありふれた目の前の光景が示してくれている。


俺の目の前には大きな純白の翼を広げてこちらに優し気な目線をくれる女性が立っていた。女性の姿を一言で表すなら天使だった。例えるならとかそう見えるとかじゃない。本当の文字通り天使が立っていた。その天使が口を開けた。


「よお、人の子よ。あたしはキリノ。お前たちの世界で言うなら神様に当たるのがこのあたしだ。短い間だがよろしくな。」

「…思ってた感じと違うな。」

「くくく、まさかお上品な言葉で迎えられると思っていたのか?おお、死んでしまうとは情けない…とか。まぁ、人の子らが様々な性格を持っているようにあたしたちもいろいろいるのさ。もちろん丁寧な言葉でもてなすやつもいるぜ。」


俺は改めて周りを見渡す。そこは白い部屋に少しもやがかかったような場所で、現実離れした空間だということが感覚的に理解することができる。SANチェックが入ってもおかしくない場所だなと他人事のように考えた。


「…それで俺はなんでここにいるんだ。…ですか。」


自分でも怖いくらいに現実を受け止めれており、その点に関して少し驚く。昔はそういった登場人物を見て、なんでそんなに冷静でいられるのかが分からなかったが、当事者になった今は彼ら彼女らに対して親近感を覚える


「ほお、ちょっとは頭が冷えてきたみたいだな。人の子らは見た目で判断する奴が多くてな、だいたいの人の子はため口なんだが、その点敬語に切り替える人の子は印象がいいぞ!…そうさなあ、さっそく本題に入ってもいいんだが、まずはメンタルケアが先だな。」


キリノさんがおもむろに指パッチンをする。瞬間、俺の足の力が抜けてへたり込んでしまった。なにがおこったかわからず頭が混乱して上手く回らない。


「人の子は疑問に思わなかったのか?なんで死んで落ち着いていられているのか。…」


途中からキリノが何を言っているのか聞こえなくなる。なんで俺は死んだのにこんなに落ち着いているんだ?俺は死んだんだぞ?いきなり死んだんだぞ?あっけなく死んだんだぞ?なんでなんだ?


心の中での自問自答は幾度どなく続いたが、次第にそれは収まっていく。がんばって俺は必死に立ち上がろうとするが足に上手く力が伝わらず滑るようにこける。


「無理をするな。人の子がここに来た時、あたしは発狂しないようにあらかじめメンタル強化を施していたんだよ。だから人の子は死んだことにあまり動揺せず、あたしという未知の存在を半信半疑ではあるものの受け入れることができた。話を進める前にまずは自分の死を認識しろ。」


…少し時間が経って、俺はゆっくりと足に力を入れて立ち上がった。目には涙が浮かんでいることが感覚として理解できた。足はすこし震えているものの、それでも再び立ち上がってキリノさんの目を見ることができた。その目は天使のように優しいものだった。しかし、俺が立ち上がったのを確認すると最初の鋭い目に戻っていた。


「どうやら自身の死は認識できたようだな。なに、死を受け入れる必要はない。」

「認識はさせるのに受け入れる必要は求めない意味が理解できないんだが…。それで…俺はなんでここにいるんだ?正直今にもゲロりそうなくらい辛いんですけど。」

「そいつは困るな。ならとっとと本題に入るとするか。」


キリノさんは改めて姿勢を正してこちらを見る。


「人の子よ。あなたは不幸な事故でその命が消えてしまいました。よって救済処置としてあなたには今の状態で他の世界に転移する権利が与えられます。…もちろん、地球で新たな生命として誕生することもできるぞ!」


人が変わったように丁寧に話したと思ったら、すぐに先ほどの調子に戻ったキリノさん。俺はそのキリノさんの提案にあまり驚かなかった。…詳しく言うなら『自分の死』と『天使』といったものと比べてだが。


「…転生ではなくて転移ですか?」

「おう!ていうのも人の子が行く世界は過酷でな。赤子として転生したとしても幼いうちに命を落とす可能性がそれなりにあるのさ。死んで転生したのにすぐに死ぬのもあれだろ?あとは即戦力が欲しいからだな。」

「即戦力…。それはあれですか、どこかと戦争しているからとか将来的に攻めてくる敵に対する戦力とかそういう意味ですか?」

「そうさな。まあ今上がったものだと戦争が近い表現かもな。今、その世界は『厄災』という存在と争っている。その『厄災』がまた面倒な存在でな、いろんな種類が沸いてるし殺しても力を別の存在に移してまた湧くのさ。」

「…なんかGみたいですね。」


先ほどまでの気持ち悪さはどこえやら、今はこの話で頭がいっぱいになってしまっている。そしてこの人が厄災を心から嫌ってるのがわかる。だって言い方が人間がGに向けるそれだもん。


「さて、それでは話を戻そう。人の子はいかようにする。異世界転移(コンテニュー)か新たな生命として転生(ニューゲーム)するか。前者は覚悟をもって、後者は恐怖を捨てて選ぶことをおすすめするぜ。」


俺は顎に手を当てて考える。自分がどうしたいか。自分は何を考えているか。


答えはすぐに出た。俺は死にたくない。もちろん世間一般的な死もそうだが俺の本質はそこじゃない。俺は今の意識が、感情が、心が消えることを死の一種だと考えている。死んでも世界は動き続けるし、人も存在し続ける。けど、俺はどうなる。天国から人を見降ろして観戦できるのか、地獄で死ぬよりもキツイ罰を受けて生き続けるのか、そうなる可能性は目の前の存在で核心には至らずとも、懸けることはできる。だが…そうじゃないなら?俺の意識が永遠に暗闇の中で漂うだけだとしたら?…


「異世界転移にしますよ。そのほうが確実に俺は生きることができる。」


俺は小心者だからそんな薄い可能性に命は懸けることができなかった。

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