龍神様、どうか
しばらくたって目の奥の泉が枯れ果てた頃。私はフードを深く被り、腰にある剣を抜いて自身の髪を切った。地面に置く。腕まくりをし、白い腕を切り裂く。赤い筋がぷくりとでき、腕を流れ、肘先を通ってしたたり落ちた。血塗られた髪束を掴む。
腕を見た。血が止まらない、抑えてないからだ。止血。する必要があるか。どろっと血が流れる様子を他人事のように見た。
「死にますよ」
なんとなく声の主が誰か何となく分かった、俯く。
「折角、生き永らえたのに。勿体ない。」
それはわざとらしく傅いて壊れ物を触るように私の手を取った。
「死ぬのなら、私と契約しなさい。さすれば、生きていらっしゃる限り、うんと楽しみを味合わせてご覧に入れましょう。人間がまだ見たことのないものを貴方だけに見せて差し上げます。」
饒舌に目の前の龍神が甘言を吐く。
本来の人間なら喉から手が出るほど欲しい言葉だろう。
「そんなもの必要はありません」
ぶっきらぼうに吐き捨てた。
「生きる意味なんてない……ですか。ふむ、では貴方の願いを叶えて差し上げるのでは?1つ、2つ?3つでもいいですよ。」
願い、、、願いか。。。。指を指す。その先は門松が立つ 光。
「あの村を更地にして」もう、2度と人身御供なんてできないように。わたしがお前らを最後の人柱にする。
龍神はニヤリと口の端を持ち上げて笑う。
「貴方が初めてです。そのようなことを言ったのは」
続けて「あとは」
「お兄様を返して」
「それはできませんね、死者を蘇らせることはこの龍神をもってしても……………まあ不可能ではありませんが。」
は、と間抜けな音が出る。ぎゅるんと目が回る。
私の瞳は期待と歓喜と切望に満ち溢れた。これを肯定と捉えた龍神はポンっという音と共に書き物を出す。
「間違いがないように、一筆書いて頂きたい。血を1滴たらして、それで、署名して下さい。」
龍神からそれを乱雑にもぎ取る。もう頭が働かなかった。一刻も早くそれに署名せねばならないという焦燥に駆られたのだ。私は龍神側の要求を一切聞かずに署名した。
「はい……契約成立です。」
龍神はニヒルに笑う。そして、私の腕を掴み上げ、傷口をなぞる。見せつけるように舐め取った。驚き、抗議の声とともに腕を引くが、ビクリとも動かない。小さく喘ぐ。男は満足しを得たのか腕を離す。「気分は?」と首を傾けて言った。「最悪です」と答える。舐められた傷が綺麗に治っていた。龍神は口の端についた血をベロリと唇を舐め、嬉しそうに嗤った。
その日三日三晩激しい雨が降った。人はゐなくなり、その辺りは湖になったそうだ。女の行方は誰も知らない。
続き未定




