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どうやら、ホラー映画のモブに転生したらしい  作者: 御仕舞
第一章 何がKに起こったか

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1/3

1 . 若者集団が不吉なキャンプ場に行く


 え、今、キャンプ場に向かってる最中になんで一人だけお通夜みたいな雰囲気出してるかって?

エピソードタイトル見た?

若者集団がキャンプ場に行くんだよ?

どう考えても、死にに行ってまーす、自殺集団か何かかな?はい終わった、解散解散…といきたいが、車を運転しているのは私ではないので、すぐさま方向転換して帰るということもできない。


 運転手の金光先輩に、「実はこの先のキャンプ場で殺人鬼がいるんすよ!」と事情を話すのは笑い話か、正気を疑われるだけだし、急な用事ができたのでどこでもいいから降ろしてくれ!もできない。

あと数分もしないうちに着くのだから、キャンプ場に着いてから送るよ、とかほざくだろう。

ふざけんな、こっちは命かかってんねんぞ、どついたろか。

まあ、みんなも知らないだけで命かかってるんだけどさ。

そもそも私だけ帰るのも、ミジンコ並みの良心が痛むし?皆いい人ばかりだし?


 じゃあ、キャンプ場に着く数分前に、殺人事件が起こる前に事件を察知した、名探偵も真っ青になるくらい有能な私はどうすればいいのか。

大体、なぜこのタイミング?


 車の窓から、『グリーンレイクキャンプ場はこちらの道をまっすぐ!』という看板が私を嘲笑うように通り過ぎていく。


『グリーンレイクキャンプ場』。

なんだか、どこかの有名映画の舞台の名前をもじったような、聞き覚えのあるキャンプ場。

湖の近くでキャンプを楽しめるという触れ込みと、そこはかとなく漂う予算のなさとB級くささ。

有名映画をオマージュしたとかで、展開に見覚えがありまくりのオリジナル要素の欠片もない脚本。


 素人が作成したのか、って当時数少ない映画視聴者が唖然とする出来だったが、そんなB級スプラッター邦画のモブキャラに私は転生した。


 主人公?いいえ、モブキャラです。

6人いて、モブなんているの?と考える視聴者様もいらっしゃるかも知れない。

キャンプ場に着いて、ワイワイバーベキューした翌日に全員が死んでいるのだ。

私と共に死んだ金光先輩の死の真相を解明すべく、金光先輩の彼女が友人たちと共にキャンプ場を訪れ…みたい話である。

特に説明もなく、突然の場面転換後には雑に殺され、血の海である。


 イヤだー!もう二度と死にたくないんじゃー!!

前世高卒で入社した会社がブラックで、青春もないままに、過労死した私の二度目の人生。

今世は神様が与えてくれた、青春を謳歌せよ、というご褒美なんだ。

バイトの時から給料を奪われ続けた前世親とは違い、親ガチャ大成功!のラブラブ夫婦の愛情を込められてのびのび育てられた現世。

諦めきれねえよ!生き続けたい!

来世生まれ変わる保証もないし、これ以上のガチャが当たるとも思えない。


 考えるんだ!

たった数分前に『グリーンレイクキャンプ場』『キャンプ場での不審な失踪事件と怪談話』『強子さんが風邪を引いて来れないこと』『キャンプ場に着く前の寂れたガソリンスタンドでの無愛想な店員の意味深な視線と台詞』と怒涛のフラグと既視感に気付いた名探偵の力で、死亡フラグを叩き壊さなければ。


 キャンプ場についても、すぐには死なない。

バーベキューが終わり、皆が寝静まる惨劇の夜まではまだ時間がある。

そのためにはどうすればいいのか。

私は悩み続けて、


「ほら」


 と水の入ったペットボトルを渡された。


「酔い止め飲んでなかったの?」


 スポーティーな短髪爽やか美女の佐藤先輩である。

優しくて、気が利いてる上に、下に弟妹がいるからか、世話好きで、親しみやすい。

もちろん、誰からも好かれているし、付き合っている彼氏の高森先輩ともラブラブである。

高森先輩も文句のつけようのないスポーツマンの爽やか男性で、彼女がいるのにモテモテな色男である。


 なんでこの二人が、自分たちのメインサークルと映画研究会を掛け持ちしているかはわからない。

映画のご都合主義につき合わされてるだけなのか、サークル主である金光先輩の人望の賜物なのか。


 映画研究会のサークル代表の金光十夜先輩。

前世の映画本編では、主人公の強子が、何度も名前を繰り返していたため、名前だけは存在感があった。

今回のサークル合宿には風邪で寝込んで主人公は参加できず、命を繋げたわけだが…。


「ありがとうございます」


 私は震えた指先で、ペットボトルを受け取った。


「もう少しで着くからね」


 佐藤先輩の優しさとこの後来る悲劇に頭痛までする。

受け取った好意に素直に甘えて、ペットボトルの水を数回に分けて飲んでいく。


「絢音、大丈夫?」


 おずおずと尋ねてくる長髪黒髪の文学少女の松井美咲。

自主制作映画に燃えている金光先輩が、文芸サークルから攫った…もとい力強い勧誘に頷いてしまった、心優しき私の同級生で友人である。

二つ上の学年の真面目で、こちらも文学青年のような眼鏡をかけた山下先輩が気になるようで、キャンプを機に、距離を縮めたいと考えているらしい。愛らしい。

山下先輩も美咲を人一倍気にかけているし、何もしなくてもいずれはくっつきそうな二人である。


 ん?青春を謳歌している私は?

サークルメンバー6人がカップルだとすると、残り物の私はなーんだって?

大学生活、サークルだけが人生じゃないんだわ。

そこら中に異性はいるんだわ。


 はい、彼氏はいないし、いたこともないんだけどねー!

これからに期待されている私がここで死んでたまるか!

だいたい、スプラッターの犠牲者に処女なんているのか!?


「ありがと、美咲」

「おーい、大丈夫か?あと少しだぞ!」


 金光先輩は明るく話しかけてくれるものの、バックミラー越しに見える顔には疲労の色が見えた。

さすがここまで運転しっぱなしはきついよな。

でも、金光先輩は頑なに運転手を代わろうとはしなかった。

サークルリーダーとしての意地か、最近中古車だが購入したばかりの夢のマイカーへの執着か。


「音楽でも流すか?」


 金光先輩の隣、助手席に座る山下先輩が、スマホを取り出すと、スピーカーから流れるベースラインに合わせて、車内の空気が和らいでいく。


「『Camping isn't scary』?ぴったりの曲じゃん」


 佐藤先輩と高森先輩が、山下先輩の曲のチョイスをからかうように笑い合う。


「よし、ラストスパートだ!」


 金光先輩がアクセルを踏み込むのを呪わしく思いながら、私は遠くに見える『グリーンレイクキャンプ場はココ!』と書かれた古ぼけた看板と、看板に赤いペンキ(であってほしい)で描かれたおどろおどろしいハートマークに、原作でのメインキャラからの歓迎の強い意志を感じたのであった。









【誰かに相談する】(bad end 1∶贄の愛)

→【車で一人きりになる】



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