6 白黒ストライプのリボン
リボンがほどけている、そんな些細なことにさえ気づけてしまう俺ってどうなんだと雪都は思う。
何で見ちまうんだろうと思う、馬鹿みたいじゃねえかと、そう思う。
阿久津の授業が終った途端に飛び出して行った美雨が気になる。
数分後、肩を落とすでもなく、さりとて嬉しそうでもない様子で戻って来た美雨が気になる。
前のドアから静かに入って来た美雨のおだんご頭に結ばれた白黒ストライプのリボンがほどけていたのが、ひどく気になる。
何でだよ、と雪都は思う。
何で俺は、他の野郎に惚れてる女をこんなに見てなきゃならないんだと思う。
本当に、本気でそう思う。
「雪都、行こうぜ」
声をかけられて顔をあげると、和馬が雪都のすぐ後ろに立っていた。和馬の手には化学の教科書が抱えられている。
「今日、実験だったか?」
「おう」
雪都は机の脇にかけてある鞄を取り上げると中から化学の教科書とノートを取り出し、机の上に出しっぱなしだったペンケースをその上に重ねると左手で持った。
希羅梨はいつの間にか居なくなっていた。セスナもいないところを見ると、二人で先に行ったのだろう。
「六時間目が教室移動って、面倒じゃねえ?実験は、後片付けもあるしよ」
「そうだな、来栖は自分が来た時に全員揃ってないとヘソ曲げやがるしな」
「涼華サンは、女王様だからなー」
女王様なんていいモンかよと軽く笑いながらも、雪都の目はほどけた白黒ストライプリボンを見つけてしまう。ただほどけているだけなのに、何だかいやらしく見えるのは何故だろうか。
今度の模試受けるか?なんて訊いて来る和馬に適当に答えながら、雪都の目は美雨のリボンから離れない。後ろのドアから出るべく歩いているのが、まるで美雨を目差して歩いているような気になって来る。
「申し込みって、今週いっぱいだっけか?面倒だよな、模試って」
「そうだな」
美雨が近づいて来る、いや雪都が美雨に近づいているのだ。
白黒ストライプリボンがほどけている……いやらしい気がするのは、気にし過ぎか。何も阿久津がほどいた訳ではあるまいし。
「ほどけてるぞ」
通り過ぎ様に、雪都はそう言ってポンと美雨の頭に手を置いた。雪都と喋っていた和馬でさえ気にとめないような、さりげない所作だった。
美雨が驚いて振り向いた時には、雪都はすでに教室の外に出ていた。開きっぱなしのドアから雪都の手の教科書が一瞬だけ見えて、美雨は次の時間は理科室での実験だということを思い出した。




