第18話B:新しい環境へ、踏み出す
夜。
静かな部屋。
テーブルの上に置かれた名刺。
それを、見つめる。
(行ってみるか)
自然に、そう思った。
不安はある。
でも。
(それより)
試したい。
その気持ちの方が、強かった。
今の場所でも、やれる。
それは分かった。
だからこそ。
(もっと上で、どうなるか)
知りたくなった。
スマートフォンを手に取る。
短く打つ。
送信。
それで、決まった。
数日後。
新しいオフィス。
広い空間。
洗練された空気。
人の動きも速い。
(いい)
そう思った。
ここは、甘くない。
結果がすべて。
でも。
(だからいい)
やるべきことが、はっきりしている。
席に案内される。
すぐに仕事が始まる。
説明は最小限。
あとは、自分で理解しろというスタンス。
(上等)
資料を見る。
構造を把握する。
流れを読む。
(いける)
判断は速い。
手も動く。
初日から、結果を出す。
「……早いですね」
同僚が呟く。
「普通じゃないです」
別の誰かが言う。
(やっぱり)
ここでも同じ。
通用する。
むしろ。
(もっとやれる)
負荷が高い分、伸びる。
環境が違うだけ。
やることは同じ。
無駄を削る。
最適化する。
結果を出す。
それだけ。
一日の終わり。
窓の外を見る。
夜の街。
光が広がっている。
(来てよかった)
そう思えた。
まだ始まったばかり。
でも。
確信がある。
(もっと上にいける)
その感覚が、はっきりとあった。




