第17話:あなたなら、どちらを選びますか
会議が終わったあとも、空気は少しだけ残っていた。
あの場での決定。
それが、予想以上に大きかったらしい。
会社に戻ってからも、周囲の視線が変わっていた。
「さっきの、本当に助かりました」
「説明、めちゃくちゃ分かりやすかったです」
声をかけられる。
「ありがとうございます」
今は、素直に受け取る。
それでいいと思えた。
デスクに戻る。
作業を再開する。
でも、どこかで分かっている。
(変わった)
自分の立場が。
見られ方が。
そして——
可能性が。
その日の夕方。
上司に呼ばれる。
会議室。
ドアが閉まる。
「今日の件なんですが」
落ち着いた声。
「クライアントから、直接話が来ています」
「あなたのことです」
短く、はっきりと。
「かなり評価されていました」
(来たんだ)
次の段階が。
「もしよければ、個別で話がしたいと」
やわらかい言い方。
でも意味は明確だった。
スカウト。
(どうする)
後日。
静かな会議室。
向かい合う、見知らぬ男。
「単刀直入に言います」
「うちに来ませんか」
提示される、新しい道。
帰り道。
夕方の風。
少し冷たい空気。
歩きながら、考える。
■ 今の場所で、積み上げるか
■ 新しい場所へ、踏み出すか
どちらも、間違いじゃない。
どちらも、正しい。
だからこそ。
迷う。
足が止まる。
胸の奥で、言葉が浮かぶ。
『あなたは、自分で選んでいいの』
祖母の声。
静かに、背中を押す。
(私は——)
そこで、思考が止まる。
二つの未来が、並ぶ。
はっきりと。
(どっちを選ぶ)
答えは、まだ出さない。
ただ。
選択肢が、そこにある。




