第4話 ガナナ小隊
訓練場は、昼の光をまともに浴びていた。
石畳の上に立っただけで、熱が足裏から上がってくる。
古参兵は三人。
対する新兵は四人。
最初から数が合っていない。
「位置につけ」
ガナナの声は、やけに機嫌がいい。
「模擬戦だ。死ななきゃいい」
がはは、と笑う。
古参兵の一人が、肩を回しながら言った。
「新兵四人か。久しぶりだな」
もう一人が、ニコラスを見る。
「細いのから行くか?」
ニコラスの喉が鳴る。
ラウルは一歩前に出た。
「――前に出るな」
小声で、後ろに言う。
コルティオが頷く。
オスカーは舌打ちしながらも、位置を保つ。
開始の合図はなかった。
古参兵が、勝手に動いた。
最初に突っ込んできたのは、背の低い男。
動きが速い。
ニコラスの前に、一気に距離を詰める。
「っ……!」
剣がぶつかる音。
弾かれる。
ニコラスがよろける。
「起きろ!」
ガナナの怒号。
ラウルが間に入る。
剣で受け、力を逃がす。
「邪魔だ」
低い声。
ラウルは退かない。
「新兵の訓練だ」
「黙れ」
重い一撃。
腕に痺れが走る。
後ろで、コルティオが声を上げる。
「ラウル!」
「見るな、動け」
短く返す。
オスカーが横から入った。
古参兵の足を払う。
完全ではないが、勢いは削げた。
「へぇ」
古参兵が笑う。
「使えるのが混じってるな」
その瞬間。
別の古参兵が、コルティオに向かう。
「お前だ」
コルティオの動きが一瞬遅れる。
剣が浅く入る。
「ぐっ……!」
転がる。
「立て!」
またガナナの声。
ラウルは歯を食いしばる。
――狙っている。
弱いところから削る。
反応を見る。
ニコラスが、必死に剣を構えている。
足が震えている。
「ニコラス、下がれ!」
聞こえていない。
古参兵が、わざと大振りに振る。
避けられない距離。
ラウルが踏み込む。
剣が交差する。
「……ほう」
ガナナの声が、少しだけ低くなる。
「お前」
ラウルを見る。
「動きがいいな」
褒めてはいない。
評価だ。
その一瞬の隙に、オスカーがニコラスを引きずる。
「立て。死にたいのか」
「……す、すみません」
「謝るな、呼吸しろ」
コルティオが、立ち上がる。
顔は青いが、剣は落としていない。
「俺、まだ……いけます」
「無理はするな」
ラウルは言う。
「でも、逃げるな」
短い沈黙。
古参兵が距離を取る。
「もういいだろ」
「そうだな」
ガナナが、手を上げる。
「今日はここまでだ」
がはは、と笑う。
「いいもん見た」
新兵たちは、その場に膝をついた。
息が荒い。
腕が上がらない。
古参兵は、何事もなかったように去っていく。
ガナナが近づく。
ラウルの前で止まる。
「ローウェン」
名前を呼ばれた。
「考えて動くなとは言わん」
一拍。
「だが、目立つと潰れるぞ」
笑っているが、目は笑っていない。
「覚えとけ」
去っていく。
残された四人は、しばらく動けなかった。
コルティオが、かすれた声で言う。
「……ラウル」
「なんだ」
「ここ、やばいっすね」
「ああ」
ラウルは剣を下ろす。
「でも、分かったこともある」
三人を見る。
「向こうは、最初から壊す気だ」
「……じゃあ」
ニコラスが聞く。
「どうすれば……」
ラウルは答える。
「壊れない」
それだけだ。




