59.sideスカーレット③
「はぁ〜〜…」
「大丈夫ですか?スカーレット様」
「何でもありませんから!だ、大丈夫です!」
いけないいけない。
公爵家のメイド達を心配させるところだった…。
まさか昨夜のロイ様を想って溜息をついていたなんて、口が裂けても言えない…。
昨夜のロイ様も素敵だった。
情熱的なキスと、とろけるようなハグ…。
寝る直前まで愛の言葉を囁いてくれるなんて、私はなんて贅沢者なんだろう…。
本当に婚約者が素敵過ぎる…。
目立つ所にキスマークを付けたがるのは、恥ずかしいのでちょっと遠慮したいが、その必死さはとても愛おしい。
ロイ様曰く、他の男への牽制との事だ。
…あ〜〜〜!!
本当に好き!もの凄い好き!
私をここまで夢中にさせて、どうしたいのだろう!
最近は少し意地悪な面も増えてきて、距離が縮まった感じがしてそれも嬉しい。
クロエに言っても、白い目で見られるだけで全然共感してくれない…。
まぁ、考えてみれば実の兄の恋バナ聞いても面白くないか…。
私も、イストお兄様とクリスお兄様の恋バナを聞いても、おそらく同じ目をしただろうな…。
「スカーレット様、思案中のところ申し訳ありませんが、どちらのお色のドレスにしましょう」
「あっ、すみません!」
「スカーレット様。私共に謝る必要はございませんよ。貴女様は将来、公爵夫人となるお方ですから」
にっこりと言われ、恐縮してしまう。
まだ、慣れないけれどやっていくしかないか…。
「では、そちらの薄いピンクのものでお願いします」
「畏まりました」
メイドたちに全身を磨かれ、選んだワンピースを着る。
今日のワンピースは、薄ピンクではあるが襟付きの大人っぽいワンピースだ。フロントサイドはリボンで纏めるようになっている。
髪の毛は下ろしたままにして、カチューシャをつけた。
いつもと違い少し幼い感じかもしれないと思ったが、公爵家のメイドの力で、幼さは消して可愛らしさだけ残した出来になった。
いつもながら、皆さんの技術はすごい。
「さぁ、出来上がりました。ロイド様が下で待っていますよ」
「はい」
小ぶりのカバンを持ち、エントランスホールに向かう。
そこには、この世の者とは思えない美丈夫が待っていた。
何、あの人。
人間なのかしら?
そんな事を考えていると、ふとヴィクトリア様との会話を思い出す。
「我が息子ながら、ロイドの容姿は私とルーカスのいいとこ取りなのよね〜…」
「ヴィクトリア様似なのかと思っていましたが…」
「よく言われるから基本は私なんだろうけど、美貌が衰えないのはルーカスの血ね…」
「そうなんですか?ヴィクトリア様も衰えていないような気がしますが…」
「ありがとう、レティ。でも私は色々、美容に気をつけているから。…本当に、人間とは思えない顔をしてるのよルーカスは!あっ、勿論いい意味でよ!あの人、徹夜したり食事を抜いたり、不規則な生活をしているのに何にも肌のケアをしていないのよ…」
「えっ!そうなんですか!?」
「ねっ、驚くでしょう?私は、衰えないルーカスに付いていくので精一杯よ。おそらく、ロイドもそうなる気がするわ」
「うわ〜〜…。今から基礎ケアを頑張らないといけませんね…」
「ルーカスもロイドも、美貌については人間離れしているから気をつけてね。私も、良い美容製品があればレティにも紹介するわ!」
「お願いします!」
あの時のヴィクトリア様の言葉は、予言だったのかもしれない…。
今日行くヨハン様の店で、良い美容製品があれば買って帰ろう。
私に外出先での新しい目的ができた。
「レティ」
下から声を掛けられる。
こちらを見て微笑むロイ様の笑顔が眩しい…。
いつも思うけど、本当に私の婚約者なのだろうか…。
そんな事を考えていると、こちらにロイ様がやって来た。
近くで見ると、益々、神々しい…。
「難しい顔をして、どうしたの?」
「いえ、ロイ様が素敵だなと思いまして…」
「レティも素敵だよ。ただ、変な事は考えないでね?」
「えっ?変な事ですか?」
「今、自分を卑下するような事を考えていただろ?例えば…、自分が婚約者に相応しくないとか?」
「なぜ、それを!!」
「わかるよ」
そう言って、ロイ様は私の顔に手を添える。
「俺も、同じ事を考えていたから…」
くぅぅぅ〜〜〜!
カッコいい!
そんな切なそうな目で見ないでください!
心臓が爆発しそう!
「わ、私からは絶対に婚約者の座を降りたりしませんから!」
「俺もだよ。レティが嫌だと言っても、ずっと俺に縛りつけるつもりだからね。覚悟して…」
ロイ様は、私の手を取りキスを落とす。
上目遣いに私を見る顔が、とても妖艶で美しかった。
雰囲気にクラクラしていると、クスッと笑われ、明るく声を掛けられる。
「馬車が待っている。さぁ、行こうか」
気持ちはフワフワしていたが、丁寧にエスコートされ、無事に馬車に乗り込んだ。
街に着くまでずっと手を繋がれていて、恥ずかしさで身悶えそうだったが我慢した。
そして、こんなロイ様の隣に一生いるために、ヨハン様のお店の美容製品取扱店を全て回ろうと、私は心に固く誓ったのである。
罪な男です(笑)
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