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57.sideルーカス

「陛下、アレクシス殿下は、また面白い事をやるみたいですよ?」

「何?」


私は殿下の『免税店』とやらの、意見書を陛下に渡す。


「税を取らない区間だと?」

「ええ。商人に、『免税』をチラつかせて、商売の拡大を狙うみたいですよ。あくまで免税なのは品物であって、そこで稼いだ売上からは通常通り税を取るようです。上手く考えましたね」

「税収が上がる政策は大歓迎だからな」


陛下もこの意見には賛成のようだ。


「おお!二人ともいいところにおるな」


そう言って、ユファ様が陛下の執務室にやって来る。


「母上。どうしたのですか?」

「散歩だ。いいだろう?自分の家なのだから」

「それはそうですが…」

「ユファ様。ここは貴女の家でもありますが、我々の仕事場でもあります」

「息子と宰相が冷たい…」


ヨヨヨ…、と泣き真似をする。

白々しい…。


「それで、本当は何をしに来たのですか?」


私の問いかけに、ユファ様は泣き真似を止め、姿勢を正す。


「アレクが面白い事をやろうとしてるだろう?」

「この意見書の事ですか?」

「そうだ。可愛い孫のため、老婆心を出そうと思ってな」

「母上も一枚噛んでいるのですか?!」

「当たり前だろう!聞けば、妾の兄上を思っての行動らしいからな。妾が一肌脱がずに、誰が口添えするのだ!」


これは、ロイドの入れ知恵だろうな…。


「ユファ様、ロイドから何を言われたんですか…」

「チッ、気付いたか…。ルーカスは抜け目がないのう」

「当たり前ですよ。これでもアイツの父親ですからね。で、何を言われたんですか?」

「その計画で、妾が取扱ってほしいものを一つ取り入れてくれるそうだ」

「…なるほど。それは魅力的な提案ですね」

「そうだろう!」


やられた…。

そこまで話を進めているとは。

アイツ、本当に根回しとか得意だよな。我が息子ながら恐ろしい…。

ふと、陛下を見ると何故か沈んでいる。


「陛下?どうしました」

「ルーカスは、息子の事がよくわかるんだな…」

「まぁ…。顔は妻に似てますが、性格はまんま私と似てますしね」


そう言うと、またもう一段落ち込む。

何なんだ、いったい。

不思議に思っていると、ユファ様の含み笑いが聞こえた。


「ルーカス、そう苛めてやるな。ヴィクトールはアレクの事がよくわからないし、接し方もわからないのだ」


私は、陛下をまじまじと見てしまった。

いやいや、自分の息子だろ?


「ルーカス!そんな目で見るな!自分が情けなくなってくるから!」


いい大人が、拗ねている。


「私は本当にアレクがわからん!昔、寝込んだ事があってからアレクは変わったように思う…」


鋭いな。

さすがは父親といったところか。


確かに殿下は、あの後から変わった。

まるで、中(・)身(・)が(・)そ(・)っ(・)く(・)り(・)別(・)人(・)に(・)な(・)っ(・)た(・)ように。


だが、悪い変化では無かった。

むしろ、王になるには相応しくなっていた。

ロイドは事情を知っているようだが、何も相談してこないという事は、この国に害をなす事はないのだろう。

実際、国益にかなった実績をあげられているからな。


「成長された、という事でしょうか?」

「そんな生易しいものではない。まるで別人になったようだ!昔のアレクは、真っ直ぐで、愛嬌のある優しい子だった…。しかしあの頃から変わり、15歳で私に退位を迫るような冷たい子になってしまった!人生の酸いも甘いもわかったようなあの目は何だ!私より達観しているぞ!…はぁ、あんな王の覇気を纏った息子ではなかったんだがなぁ…」

「後継者としては優秀なのでは?」


陛下がちらりとこちらを見て、ため息をつく。

意味わからん。


「そういう事ではないのだ、ルーカス」


ユファ様が口を挟んでくる。


「こんな事を言っておるが、コヤツの本心は父親として息子に頼られたいのだ」

「は、母上!」


あ〜…。そういう事か…。

たまに相談に来るロイドと話し込んでいると、じっとりと視線を感じたのはそういう事だったのか。

仕方ない…。


「陛下。では、この意見書は陛下が責任をもって、議会の承認を取って来てください」

「何?!」

「そして、陛下の一声で意見が採用され、国家事業として進める事になったとアレクシス殿下にお伝えするのです。もしかしたら、また尊敬の念を持ってくれるかもしれませんよ?」


陛下が考え込む。


「さぁ、どうします?」

「わかった…。やってみよう」

「お願いしますね」


私は、この事業に関する様々な資料を陛下に渡した。

結構な量に驚いてはいたが、やる気はあるようだ。

元々、能力は高い人だし、何とかするだろう。


執務室を出る間際にユファ様に引き止められた。


「ルーカス、上手く仕事をヴィクトールに押し付けたな?」

「さぁ、何の事でしょう?今、ここにある事実は、陛下が仕事に前向きに取り組んでいるという事だけですよ?」

「ふん!白々しいが、その通りだな。上手くいく事を祈るよ」

「では、失礼します」


そう言って、私は執務室を出た。


久々に早く帰れそうだ。

帰って、ヴィクトリアとデートにでも出かけよう!

ロイド父の話でした。


✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩


読んでみて面白かったなぁと思われた方は、よろしければブクマ評価もお願いしたいです!!

大変、励みになります(。>﹏<。)

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