44.腹黒たち
俺は大急ぎで王宮を探し回る。
確か今日は彼に公務は無かった筈だ。どこかにはいるだろう。
近衛騎士にも声を掛け、ショウ王子を探すように指示する。
程なくして、訓練場に続く廊下にいるという話が入ってきた。
レティと一緒にいる、という嬉しくない情報と共に…。
チッ…。
懲りないヤツだな。
俺は大急ぎで訓練場の方へ向かった。
――――訓練場前
訓練場手前の廊下でレティとショウ王子が話している。
見た所、ショウ王子は訓練終わりで、レティはこれから向かうようだ。
満身創痍ながらもレティと話をするショウ王子は、頬を上気させ、のぼせている。
ただ話しているだけだが、その様子に嫉妬心が首をもたげた。
……レティは俺の女だ。
俺は素早く近づくと、レティを後ろから抱きしめる。
そのまま腕の中に抱え込み、ショウ王子に対して「お前には一ミリたりとも見せん!」という態度をとる。
「わっ!ロイ様!びっくりしました」
「嘘はダメだよ、レティ。本当は気づいていたくせに」
レティほどの武人が、他人に易易と背後を取られる事はない。
気配で俺と気づいていたんだろう。
「誰が来たかはわかっていましたが、後ろから抱きしめられるなんて思わなかったんです!」
レティが可愛く俺に抗議する。
…もう、ホントに可愛いなぁ。
このまま家に連れ帰りたい…。
「……あのー」
ショウ王子に声を掛けられ、現実に戻る。
「ショウ王子、探しましたよ」
「そう…なんですか…?」
ショウ王子が怪訝そうな顔をしている。
まぁ、先触れも無く「探している」と言われればそうなるか。
「…あの、ロイ様。ショウ王子とお話があるなら離してくれませんか?ショウ王子はこの状態に戸惑っているようですし…」
腕の中から、可愛らしくも残酷な言葉が聞こえた。
離せだと…?
レティは俺を泣かせたいのか?
俺が心底、悲しそうな顔をしたのでレティが慌ててフォローする。
「そ、そうだ!家に帰ったらゲームをしましょう。クロエが殿下から面白い遊びを教えてもらったそうです!だからロイ様、お仕事をキチンと終わらせて、早く帰ってきて下さいね」
「…わかった」
俺はレティを解放する。
しかし手を離す間際、妖艶に微笑みながら付け加える。
「もちろん、負けた方には罰ゲームありだよね?」
「うっ!……それでいいです…」
「負けないからね」
そう言うと、レティは顔を赤くした。
去り際に、ショウ王子にレティが話しかける。
「王子、剣の訓練を続けるつもりなら前髪は切った方がよろしいかと。相手の動きが視えづらいですから」
「わ、わかりました!」
「では失礼します」
時間が無いのか、レティは小走りに訓練場ヘ向かって行った。
うん?
ちょっと待て…。
『前髪を切る』は、重要な事では無かったか?
俺はユリアの言葉を思い出す。
そして、頭を抱えた。
レティ…、君の無自覚な行動が俺を追い詰めるのか。
まぁ殿下達に言わせれば、それが『強制力』というものなんだろうが…。
「ロイド様、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
「それにしても、仲がよろしいんですね」
「ええ。以前にもお伝えした通り、私達は愛し合ってますから」
思いっきり牽制すると、ショウ王子の顔が引きつった。
まだ、半分くらいしか信じて無さそうだな。
まぁ、これからだ。
「ところでテオ騎士団長は?」
「まだ、中でミレン辺境伯に鍛えられています。他の騎士に部屋までの護衛をお願いしたと言っていたのですが…」
廊下の隅に、ダイス王国の騎士がいるのを確認した。
「王子、ユファ王太后様とフェイロン皇子がお呼びです。私についてきて下さい」
「王太后様とフェイロン皇子が?」
「そちらの護衛の方も一緒にどうぞ」
近くの近衛騎士にテオ騎士団長への伝言も頼む。
そして俺は二人を連れて離宮ヘと向かった。
――――離宮・王太后宮
「お待たせ致しました。ショウ王子をお連れしました」
「おお、早かったな」
アレクシス殿下が出迎える。
ちらりと見ると、ユリアが王太后様とフェイロン皇子相手に熱弁している。
「殿下、アレは?」
「何か、『食』の話で盛り上がってる。ポテチの開発者がユリアだとわかって、そこからあんな感じになってるんだよ。今は、発酵食品の話をしているぞ」
「そうなんですか」
こちらに気付いたフェイロン皇子が話し掛けてきた。
「いやー、ユリアはいいね。それに彼女の言う『農学』とは実に面白い!まさか、農夫達がそんなにスゴイとは思わなかったよ」
「そうです皇子!農夫の皆さんは凄いんです!彼等はただ言われるがままに作物を作っているワケではないんです!天候や翌年の豊作具合の予測、害虫に対する知識など、世代を超えて受け継がれた知識と自身の経験則によって仕事をしているんです。そこには書物だけでは得られない情報が溢れています!」
いつになくユリアが白熱しているな。
「そして、保存・加工の知識も豊富です!美味しいものは、農家さんに聞け!です」
「おおぉ〜!」
一通り、ユリアの話が終わった。
王太后様とフェイロン皇子はすっかり心酔したようだ。
「あの…、僕は…」
ショウ王子がおずおずと聞いてくる。
「ショウもいたのか?気付かなかったよ」
悪気は無いんだろうが、フェイロン皇子が不躾にそう言い放つ。
「えっ?」
ショウ王子が泣きそうだ。
「フェイが呼んでおいてそれはないだろう。ショウ王子、すみません。こちらにまで足を運んでいただいて…。見た所、訓練終わりでお疲れでしょうに」
アレクシス殿下がすかさずフォローする。
「い、いえ。大丈夫です」
「そんなワケにはいきません。お祖母様、湯殿はすぐに使えますか?」
「いつでも使えるぞ。シェリー、案内してやれ」
「はい、ユファ様」
「そ、そんな!恐れ多いですよ」
「ショウ王子、お祖母様の湯殿は特別なんです。疲れや、打ち身、擦り傷切り傷などによく効きます。こちらに来てからずっと気を張っているようですし、ゆっくり浸かって体と心をほぐしてきて下さい」
「アレクシス王子がそう仰るのなら…」
ショウ王子と護衛は王太后様の侍女に付いて行った。
姿が見えなくなると王太后様が話しかける。
「アレク。ショウ王子は、ちと純粋培養すぎやしないか?嫌味がまったく効いてないぞ」
「そうですね。先程の言葉も全面的に好意と受け取っていますし」
「アレクも性格悪いね。直接的に言った我の方がよっぽど優しいよ」
「フェイのはデリカシーが無いだけだと思う」
ユリアが不思議そうにしていた為、教えてやる。
「あれは、訓練終わりで泥だらけの姿を王太后様の前に晒すなと、殿下が暗にお伝えしたんですよ」
「えっ!そうなんですか?怖っ…」
「まぁ、有無を言わさず連れてきたのはコチラなので、それを攻めてくるかと思いきや、まったくそんな気配はありませんでしたけどね」
「ショウ王子、悪い人に騙されないといいんですけど…」
「もう、遅いのでは?」
「確かに…」
俺たちはショウ王子を待つ事にした。
ちょっとイチャイチャ出せて良かった…(笑)
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