ⅩⅦ 帰還
確認はしましたが、キャラの人格やストーリーなど違っていたり、繋がっていないなどあるかもしれません……その時はすみません!!
「まずはクロムの状態についてだが、いま奴の体内にある魔力のほぼ全てが召喚獣たちに流れている。表面上に契約印である紋様が浮かび上がっているのが証拠だ。
本来、召喚していない時の契約召喚獣への魔力供給は少量でしかない。だが今、それが膨大に供給され続けている」
「つまり召喚していないのに、召喚している時のように魔力が使われているということですか?」
「簡単に言えばその通りだ。こういう時の対処としては自分で魔力を抑え込めば良いのだが……クロムは自分で魔力の循環を管理できていない。こやつの場合は“大樹”を通して自身の魔力を循環させているからな」
そこでシャッテンは必死に話を理解しようと首を捻っている心音に気づき、小さく微笑んだ。そして顔を引き締める。
「我が思うにファイを救う際に無理な契約をしたため、他の契約にも何らかの問題が発生した。つまりクロムを助ける為には、不完全な契約を完全なものとすることだ。まったく……既に“六つの契約”をしている身に、もう一つの契約などしようとするからこうなるのだ」
「え? 今の――」
思わずシャッテンを見た心音は、彼の「今はまだ話せない」そう語っているような顔に、口を閉ざす。
(召喚獣に関わる者なら、五つ以上の契約は体に負担がかかる為、誰も成功していないのは知っているだろう。なら何故クロムはそんなことができているのか……それをここで追及するのなら教えてもいい。
だがもしも、今の我の顔を見て、身を引いたその時は――)
シャッテンにはクロムを助ける前に確かめたいことがあった。
ここに来るまでに、心音がどういった人間かというのはある程度理解したつもりだ。その上で彼は、ある大事な決断を彼女に委ねたいと思っていた。
それが自分のこの先の人生を大きく変えてしまうものだとしても。心音に決めて欲しいと願って、彼女の次の言葉を待つ。
「……。シャッテンさん、私は具体的に何をしたらいいんですか?」
(――決まりだな)
シャッテンは嬉しそうにフッと口角を上げる。
彼女ならばそうするだろう。心のどこかで確信していたシャッテンだったが、改めて心音の口からその言葉が聞けて嬉しさを感じていた。
「先刻、言った通り契約を完全なものとする。どの守護獣との契約か、分かっているな?」
「はい」
心音が思い浮かべたのはもちろん――水神龍・ウォルンティシーアだ。
「よし。ではココネ、我の左手を右手で握ってくれ」
言われるがまま、心音はシャッテンの手を握る。
「覚悟はいいな?」
「はいっ!」
次の瞬間、シャッテンと心音の手が同じ青色の光を纏い、心音の右腕に再び龍の刺青が浮かび上がる。
「いっ、あぁ!?」
強力な電気が流れたように、ビリビリとした激痛が走り、その衝撃で手を離してしまいそうになる彼女に、シャッテンは握る力を強めた。
「すぐに収まる!! 我の手を離すでないぞ!」
痛みに耐えながらも、シャッテンの手を強く握り返す心音。
すると龍の刺青に変化が起きる――龍の目がギョロリと見開かれたのだ。
驚く心音の前で龍は動き出すと、引き寄せられるように彼女の手を伝い、シャッテンの手へと移動する。
そしてさきほどの心音と同じように、シャッテンの右腕に全ての体が収まりきると、発光を止めた。
「ココネっ、クロムの右手を握れ!」
「は、はい!」
苦し気に顔を歪めたシャッテンの声に、戸惑いながらも心音は左手を伸ばし、クロムの手を握る。
瞬間、一本の線で繋がったように、彼女たちの間に電撃が走る。正確には強烈な魔力がクロムから心音へ、彼女からシャッテンへ流れた。
(あ――)
その時、心音は走馬灯のように誰かの記憶を見る。
無表情な幼いクロムと、そんな彼を辛そうな表情で見つめる“男性”。その傍らには二人を心配そうに見つめるクリーム色の毛をした犬がいた。
断片的で、なぜ記憶だと分かったのか、心音自身も分からない。
けれどその“男性”を見た時、胸に広がったのはとても懐かしい気持ちだった。
(“創世の大樹”……“始まりの白”と“終わりの黒”……――虹命の雫?)
男性がクロムに言い聞かせるように紡いだ言葉の一部。
心音が呆然とその四つの言葉を心の中で反芻していると、手から温もりが離れ、ドッと両手を着く音が隣から聞こえた。
「シャッテンさん?!」
「少々、侮って、おったようだ……っ」
苦しげに歯を食いしばり、荒く呼吸を繰り返す中でシャッテンは、痛みを紛らわすように笑みを浮かべた。
地面に着いた手は地面を抉りながら強く握り締められ、青白い顔には玉のような汗が次々と浮かんでは流れ落ちる。
そんなシャッテンの背に手を添えた心音は、触れた場所から感じた熱さに息を呑む。
「大事ない、しばらくすれば……ほら、のう?」
熱が引いていくのを掌に感じた心音は、ほっと息を吐いた。
「よく分からないんですけど、私がいる意味ありましたか?」
「ああ、あったとも。よく見てみるが良い。お主のお陰でクロムは助かったぞ?」
シャッテンの指摘に、心音は繋いでいた手を辿るようにして、クロムの顔を見た。
瞬間、交わる視線。光を宿した黒曜石のような目が、しっかりと心音を捉えていた。
「ココ、ネ……? 泣い、てるの?」
ポタポタと流れる涙に、心音は自分でも気づかなかった。
けれどクロムの声を聞いた瞬間、堰を切ったように溢れだした涙に構うことなく、握りしめていたクロムの手に頬を寄せた。
「ふ、うう……よかったぁ……クロ、ムぅっ」
手を伝い、流れてきた涙にクロムは訳が分からず小首を傾げる。
ただ良いも悪いも、彼女は自分のせいで泣いているのだということだけは理解した。
「ひとまずは安心、といったところか。のう、クロムよ。お主、自分になにがあったか覚えておるか?」
クロムは今までのことを思い出そうと、ゆっくりと瞼を閉じた。
「……覚えてる。ここに来た後のことも、大樹が……僕が、ココネたちを傷付けたことも。全部、覚えてるよ」
苦しげにそう言ったクロムは、心音に握られた自分の手を引き抜こうとした。だが、逆に心音は握る力を強める。
「ごめんね、ココネ……怖がらせた」
それを怖さのあまり離せないのだと、勘違いしたクロムは彼女の頬を優しく撫でた。
「違う、の……ただ、クロムが戻ってきてくれた。それが、嬉しいの」
心音の言葉に一瞬、目を丸くしたクロムだったが、次第にその口元に笑みを浮かべた。
シャッテンはそんな二人の様子を嫉妬の籠った眼差しで見つめていた。
* * * *
「私、シルバの様子を見てきますね」
そう言って心音が立ち去ると、シャッテンはクロムに手を差し伸べた。
「立てるか?」
「うん、平気」
シャッテンに引っ張られるようにして立ち上がったクロムは、自分のいる場所を改めて確認した。
「お前が大樹に呑まれるなど、何があった」
「なにも、ないよ。ただ結界を修復しようとして、力を使い過ぎた。それを大樹が、俺の身に何か起きたと勘違いして、防衛本能が働いたみたいだ」
「それで思考まで乗っ取られるなど、阿呆だろう」
「はは、言い返せないのが辛いなぁ」
苦笑するクロムに、シャッテンはやれやれと肩を竦めた。
「でも本当にありがとう、シャッテン。また僕を助けてくれたんだね」
「勘違いするでない。お前のためではない、我が花嫁のためよ」
「へ? 花、嫁……?」
クロムは目を丸くする。
だが、それがシャッテンの要らぬスイッチを押してしまった。
「ああ! 我が嫁は流石ぞ! 出会いの時もそうだったのだがな……!」
シャッテンはそこから心音との出会いや彼女の魅力などを語り始めたのだった。
そんな二人の様子を遠くから見ていた心音は、本当にクロムが戻ってきたのだと、改めて安堵の息を吐いた。
「シルバ……」
ゆっくりと歩みより、横たわるシルバの隣に心音は膝を着く。
触れた頬にはちゃんと体温もある。呼吸もしている。
身体の傷は魔法で治ったとはいえ、今も彼の傷だらけの姿が目に焼き付いて離れない。
それが全て自分のためだと思うと、心音の中には言い様のない想いが溢れた。
「ごめん……っ。……ごめんねっ!」
そっと彼の胸板に顔を寄せ、心音は泣いた。
聞こえてくる規則正しい鼓動は、彼が生きていることを彼女に教えてくれる。
「ありがとう……ありがとっ、シルバっ」
この瞬間、心音は自分の気持ちをしっかりと自覚した。
興味がないわけではなかった。けれどその気持ちを知ることが、彼女にはとても恐ろしかった。
また――裏切られる。
誰かのたった一人の特別になることが、怖かった。
(でも……この世界に来て私自身も変われたの。だから、私はこの気持ちに正直になりたい。私は―――)
「シルバが……好き」
小さく紡がれた言葉は誰の耳にも届かない。
けれど、彼女の心の奥深くにしっかりと刻み込まれた。
初めて知る暖かくも切ない想い。
その気持ちを胸に、心音はもう“過去”から逃げるのをやめようと決意したのだった。
「ココネ」
シャッテンとクロムが背後に立ったのが分かり、心音は素早く目元を拭う。
「ご、ごめんなさい」
「いや。僕の方こそごめんね」
振り向いた心音の前に膝を着いたクロムは、そっと彼女の頬に触れた。
「シャッテンから事情は聞いたよ。君へのお礼は後にするとして、今は上で暴れているドラゴンを何とかしよう。また……手伝ってくれる?」
不安げに揺れるクロムの瞳には、キョトンとした心音の顔が映る。しかしそれはすぐに笑顔へと変わった。
「もちろんです。言ったじゃないですか、私はクロムを一人にしないって。だから――一緒に行きましょう」
頬に触れる手に自身の手を重ね、心音はクロムをまっすぐに見つめた。
その黒い瞳には迷いがなく、クロムは思わず見惚れてしまう。
「ゴッホン! ゴホン、ゴホンゴッホン!!」
二人の間に、シャッテンがわざとらしい咳払いをしながら割り込む。
そこでハッと我に返ったクロムは頬を少し赤く染めながら、名残り惜しそうに彼女の頬から手を離した。
そしてシャッテン、心音を自分の胸に引き寄せる。
「ココネは我の嫁ぞ! 気安く触るでない!」
「だから嫁じゃありませんって!」
グイッとおもっいきりシャッテンの顔を押し退け、心音は彼の腕から脱出。
彼女の温もりを無くしたシャッテンは、あからさまに落ち込んだ表情で顔を俯かせる。
「ココネは……我が嫌いか?」
ちらり。と、上目遣いでシャッテンが心音を見る。
「えっ!? そ、そんなこと言ってないじゃないですか……」
「ならば……好き、か?」
ずいっとシャッテンの顔が近づき、後ずさりながらも心音はゆっくりと頷く。
「まあ……嫌いではないです」
「では、結婚しよう!! 今すぐに!!」
「無理ですってば!! というか、さっきまでのしおらしい態度はどこに!?」
「ふははは! 我が1度欲しいと思ったもの、そう簡単に諦めると思ったか!」
「少しは私の話を聞いてくださいよ!!」
まるで夫婦漫才をしているような二人のやり取りを見て、クロムは青ざめた顔で心音を見ていた。
(昔からの知り合いだけど……。あの変わり者のシャッテンとあんなに息があってるなんて……ココネは彼が好きなのかな!?)
と、いう胸の内をココネが聞いたならば、声を大にして「違う!!」と叫んでいたことだろう。
「そんなことより! ファイたちが大変なんですから、早く戻りましょう!」
このままではシャッテンのペースに飲まれてしまう。
心音がそう言って、先を促したところで、クロムが頷く。
「そうだね。ファイたちが心配だ。早く行こう」
「しかし、どうやって地上に戻るつもりだ? 我は飛べるが……流石に全員は無理ぞ?」
今この場にいるのはシャッテンを除き、心音、クロム、そしてシルバの三人。
いくら魔王とはいえ、一気に三人を抱えて飛ぶのは無理という。
「大丈夫。方法ならあるよ」
首を傾げる心音とシャッテンに対し、クロムは安心させるように微笑んだのだった。
* * * *
地上ではファイたちが、初めて共闘するにも関わらず、見事な連携を見せていた。
ファームを荒らし回るドラゴンを第一エリア内に留め、徐々に互いの体力や魔力を削っていった。
(ココネは大丈夫かな……。いや、シャッテンがついてるし。不本意だけど、アイツは強くて頼りになるからな)
襲い掛かるドラゴンの尻尾を避けたファイに、今度は炎の息吹が襲いかかる。
(ヤバイッ!?)
バランスを崩した彼の両脇を抱えて、ユキヤとユーリが空に飛び上がる。
「大丈夫?」
「悪い……」
「集中力がかけているんじゃないか? そんなんじゃ、あの子に笑われるぞ?」
「う、うるさい!」
頬を赤くするファイに笑い声を残して、ユキヤはユキナの元へ飛んでいく。
「アイツ……っ」
「でも彼の言う通りだ。今のファイくんだと足手まといにしかならない」
心音に言わせてしまった言葉をユーリに言われ、ファイは剣を握り締める。
「分かってる……今度は気を付けるよ」
そう言い残してドラゴンの足を叩きに行ったファイを見て、ユーリは苦笑する。
「ココネちゃんが心配なのは分かるけどね。この竜は思っていたよりも厄介そうだし」
剣戟の音、魔法がぶつかった時の爆発音。
普段なら風に揺れる木々の穏やかな音、そしてここで働くファイや心音、クロムたちの笑い声が響く暖かな場所。それを脅かす存在として、とても厄介な者が生まれてしまった。
(生まれた直後とはいえ、ここまでファームを荒らされるのは俺も許せないな)
ヒガミヤ街での生活しか知らないユーリ。けれど心音たちと知り合い、このファームに遊びに来るように
なって自分でも知らない内にこの場所を好きになっていた。
「騎士が護るのは国民だけじゃないってところを見せますか!」
悩みを振り払うように剣を構えたユーリの目に光が灯る。
そこへ少し荒々しくも、されどとても洗練された足音が近づいてくるのに気づく。
耳を澄まし、音の聞こえる方へ顔を向けたユーリはそこにいるモノに目を瞠った。
「え……何で!?」
驚くユーリの声にファイたちもそちらへと視線を向ける。
「うっわ、すっげぇ美人!」
「……。」
「……お前」
無言のユキナと呆れ顔のファイ。二人の視線に気づかないユキヤは目をキラキラさせてこちらへ駆けてくる人物――マリア・リズリットを見つめた。
ファームの地面を走っていた彼女の魔法で浮かび上がると、そのままユーりの前に立った。
「ご無事ですか、ユーリ団長」
「あ、うん。って、そうじゃなくて!」
「話は後です。大体の事情は把握いたしました。このドラゴンを無力化させればいいんですね?」
副団長歴七年は伊達では無い。ユーリが感心して自分の部下を見つめていると、マリアが続けて口を開く。
「それとシルバ隊長もこちらにいらっしゃってます」
「え。シルバも!?」
「はい。そして先程まで彼の召喚狼が私を背に乗せてくれていたのですが、突然消えてしまいました」
「それって……!!」
サッとユーリの顔が青ざめる。
召喚獣が姿を消す。それは自分の意思で消えた以外に考えられることはただひとつ。
召喚者である術者に何かあった、ということだ。
「なら、マリアはシルバを―――!」
「いいえ。貴方も私も今は目の前のことに集中するべきです」
「だが……!」
「シルバ隊長からの言伝てです。“こちらは心配するな。そっちは任せたぞユーリ”」
「っ!!」
「ですので、私たちの敵はこのドラゴンです」
キツい言い方だが、マリアはシルバの事をユーリと同じくらい信用している。
それはユーリにも言えたことだった。
「そんな風に言われたら、断れるわけないよな」
付き合いの長さならこのファームにいる誰にも負けない。
シルバとは士官学校の時から一緒のユーリにとって、彼は信頼できる存在の一人で―――親友だ。
(そんな奴に任されたら、やるしかないよな!)
俄然やる気が出てきた、とユーリの魔力が上昇する。
「任せろ、マリア、シルバ! 俺がこのドラゴンを鎮めてみせる!」
そう言うと赤い炎のような魔力の光が彼の体を覆うように揺れ、右手の方へと集まっていく。
それらは握られた剣にも伝い、剣先まで巡っていく。
剣先が一段と強い光を放ったかと思うと、ユーリは素早くそれを横に薙ぎ払った。すると目の前に光の軌跡が残る。次に縦、斜め、また横…と同じような動作を繰り返していく内に、宙に魔法陣が出来上がる。
「“豪炎の園に住まいし者よ、汝、燃え盛る炎で我が敵を焼き尽くせ!―――サラマンダー!!”」
高らかな声が響き渡り、魔法陣が強く赤い光を放つ。
思わず目を瞑るユーリ以外の面々の耳に、魔法陣が砕ける音がした。
「カッコよく言ったのはいいんだけどさ。…………で?」
いち早く目を開けたファイは、目の前をふよふよと飛んでいる生物を親指で指し示すとユーリを見下ろした。
「いや、その……この間の復旧作業の時にで力仕事をさせたから、少し休ませてくれとは頼まれてたんだけどさ。まさか、ね?」
苦笑を浮かべるユーリの側にゆっくりと舞い降りてきたのは両手に乗せても余るほど小さな竜だった。
「こんなちっこいのでどう戦うつもりだったんだよ!」
「いや、俺もこんな姿で出てくるとは思ってなくて……ってファイくん、剣をこっちに向けないで!?」
主が自分の所為でピンチだというのに、チビドラゴンは呑気に欠伸をしていた。
「ユーリ、俺はまだ眠いぞ」
「ご、ごめんな。でも緊急事態なんだ。お前の力を貸してくれないか?」
「ちっ」
「舌打ち!?」
「ふぁ……メンドクさ」
チビドラゴンはまたも欠伸をする。
――グオオオオォーー!!
しかし大きな咆哮が轟き、皆も含め呼ばれたチビドラゴンも耳を塞ぐ。
その一瞬が、隙を作ってしまった。
「危ないっ!!!」
誰かの悲鳴にも似た声に顔を上げたファイは、目の前に迫り来るドラゴンの手を呆然と見つめた。
(ああ……ココネを傷つけた罰、かな)
抵抗する間もなく、ファイは諦めにも取れる表情を浮かべると、目をキツく閉ざした。
「ファイーー!!!」
だが、次の瞬間。
聞き慣れた、ずっと待ち焦がれていた声と共に、ファイとドラゴンの間に木の蔓が何十本も地面から飛び出してきた。
蔓は太く、どちらかというと木の枝に近い。それらはファイたちとドラゴンの間に、どんどん壁を作っていく。
「あ、あれって……」
その枝の一部。人が乗れそうに渦を巻いた場所があった。
ファイはその上に立つ面々を見て、顔を綻ばせ、叫んだ。
「っ……クロムさん!! ココネ!!」
クロムは安心させるように頷き、心音は大きく手を振る。
その隣ではシャッテンがドヤ顔で仁王立ちし、未だ意識の戻らないシルバの姿もちゃんと確認できた。
「待たせてごめんね。それじゃあ……彼を鎮めて、僕たちの日常を取り戻そうか」
壁の向こうで大きな咆哮を上げるドラゴンに、クロムは頼もしい笑みを浮かべた。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます!!
もう2年近く投稿できず、すみませんでした。
これからも不定期すぎるくらい不定期に投稿してしまうと思いますが、よろしければ読んでみてください。
……社会人って大変ですね。




