第6話:海軍、逃亡、そして密航者
ゴースト副船長の無言かつ熟練の導きにより、新たな海賊船は霧の壁から難なく滑り出た。
南への航海は二日間続き、その間レオンはこの巨大で寡黙な船員たちにもすっかり慣れていった。
三日目の夜明け。
中央にそびえる山に支配された、緑豊かで巨大な島が水平線に姿を現した。
その海岸沿いには、木と石でできた巨大な村と本格的な港町を掛け合わせたような、広大な居住区が広がっていた。
レオンはメインの波止場から遠く離れた、ジャングルに隠された入り江に錨を下ろすよう副船長に命じた。
「お前ら6人はここに残って船の番をしろ」
レオンは3体のシーオークと3体のパイレーツ・ゾンビに向かって吠えた。
「ついでに、あそこの森に入って食料を調達してこい。すきっ腹で出航したくねえからな」
モンスターたちは不器用に頷いた。
レオンは頭の三角帽子を直し、霊的な副官に合図を送る。
「お前は俺と一緒に街へ来るんだ」
港町は、騒音、匂い、そして多様な種族が入り混じる活気あるカオスだった。
犬の姿を隠すために船からくすねた外套を羽織り、レオンは混雑した通りを歩く。
副船長は不自然な影のように彼の後ろをピッタリとついて歩き、神経質な視線を集めながらも、周囲の者を安全な距離に遠ざけていた。
市場の屋台では想像しうるあらゆるものが売られていた。
輝く武器、ポーション、焼いた肉、そして奇妙な海産物。
しかし、レオンにはある大きな問題があった。
彼の手元には「システムの硬貨」が1枚もないのだ。
完全な無一文である彼は、広場で周囲を見回し、会話を立ち聞きすることしかできなかった。
しかし、その数時間で学んだことは、この世界に対する彼の認識を完全に変えるものだった。
船乗りたちの話に耳を傾け、公共の掲示板を読むことで、彼は世界の本当の構造を理解した。
ここには巨大な大陸は存在しない。果てしなく続く海と、神秘的な島々だけで構成された星なのだ。
そして、極めて残酷な世界でもあった。
木の板には何百枚もの手配書が釘で打ち付けられていた。
「金貨」で計算される天文学的な懸賞金が懸けられた、あらゆる種族の海賊、野獣、そして暗殺者たち。
神聖な宝、神話のモンスター、そして航行不可能な航路の伝説。
だが、最も警戒すべき発見は全く別のことだった。
この海のカオスの中で秩序を維持しているのは、冷酷でどこにでも存在する軍隊――『海軍』だったのだ。
レオンがとある「海の王」の懸賞金を眺めていると、厳しい声が彼を遮った。
「おい、お前。ゆっくりと振り返れ」
レオンは振り返った。
白と青の軍服を着た3人の兵士が、輝く金属の槍を彼に向けていた。
そのうちの1人は目に魔法のモノクルをつけており、フードの下の犬の頭をジッと睨みつけている。
「俺のアーティファクトは嘘をつかない」
兵士は剣を抜きながら言った。
「この野良犬は【海賊船長】のクラスを持っている。まだ懸賞金はかかっちゃいないが、捕まえればいい報酬になるぞ。やれ!」
海軍兵たちが飛びかかってきた。
レオンは剣を抜こうとしたが、ゴースト副船長の方が早かった。
亡霊は主と兵士たちの間に割って入り、両腕を広げる。
その霊的な胸から、精神を凍らせるほどの極寒の波が噴出した。
3人の兵士は悲鳴を上げる暇さえなかった。
幽霊の氷が一瞬にして彼らの鎧と体を覆い尽くし、まるで彫像のようにその場に完璧に凍りつかせた。
広場はパニックに陥った。人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。
「よくやったが、ここからズラるぞ!」
レオンは唸った。
「走れ!」
犬人と亡霊は路地裏を必死に駆け抜け、海軍のパトロールを振り切った。
しかしレオンは気づいていなかった。
屋根の上からその一部始終を見ていた、しなやかで機敏な姿――エメラルド色の鱗と縦長の瞳孔を持つリザードマンの少女がいたことに。
あの亡霊の姿に心を奪われた彼女は、屋根から木々へと飛び移りながら、隠された入り江まで音もなく彼らの後を追い始めたのだ。
レオンが船に辿り着くと、甲板にはヤシの実、木の根、そして巨大なイノシシの死骸が山積みになっていた。
彼のモンスター船員たちは素晴らしい仕事をしたようだ。
船員たちが最後の物資を積み込んでいる最中。
誰にも気づかれることなく、リザードマンの少女が船に滑り込み、メインマストの近くの樽の陰に身を隠した。
「錨を上げろ! 帆を張れ! 今すぐだ!」
レオンが叫ぶ。
海賊船は信じられないスピードで入り江を飛び出し、外海の魔法の風を捕らえた。
しかし、島の岬を抜けた途端、レオンの血が凍りついた。
背後のメインの港から、波を切り裂きながら2隻の巨大な海軍の軍艦が現れ、彼らに向かって一直線に進んできたのだ。
それは大砲を装備し、重装甲で覆われた巨大なガレオン船だった。
【 海軍の軍艦 】×2
「追いつかれるぞ……」
レオンは呟いた。
あのサイズの船と戦うことは不可能だし、風は追跡者に有利に吹いている。
このままでは数分で沈められてしまう。
心臓を喉から飛び出させんばかりに高鳴らせながら、レオンはハブを呼び出した。
手元にはちょうど40の残りステータスポイントが残っている。
究極のギャンブルに出る時が来たのだ。
装甲や攻撃力では大砲から身を守ることはできない。彼に必要なのは、奇跡だった。
彼は血走った目で、すべてのポイントを一つのステータスに注ぎ込んだ。
残りステータスポイント:0
運 (LUCK):80
海軍の軍艦の大砲が発射準備を整え、輝き始めた。
レオンは目を閉じ、祈った。
その時、海が震えた。
レオンの船と追跡者の間の水面が、不自然に沸騰し始めた。
ガレオン船の板を振動させるほど強力な深淵の咆哮が、空気を引き裂く。
塔のようにそびえる巨大な触手が深海から突き出し、それに続いて、鱗に覆われた超巨大な背中が姿を現した。
【 ??? - レベル??? 】
原始の海獣が、海軍の進路のど真ん中に浮上したのだ。
触手の一本が1隻目の軍艦に激突し、メインマストを小枝のようにへし折った。
兵士たちの悲鳴が波に飲み込まれていく。
海軍の軍艦は停止を余儀なくされ、逃げ惑う小さな海賊船のことなど完全に忘れ、その巨獣との絶望的な戦いに巻き込まれていった。
レオンは開いた口が塞がらないまま、その光景を見つめていた。
運(LUCK)80というステータスは、文字通り世界を自分の意のままに歪める力を持っていた。
「信じられない……なんて華麗な逃走劇かしら」
レオンはビクッと体を震わせた。
高くて女性らしいその声は、樽の陰から聞こえてきた。
エメラルド色の鱗を持つリザードマンの少女が姿を現す。
彼女は、甲板の中央にいる武装した犬人のことなど完全に無視していた。
彼女は真っ直ぐに操舵輪へと歩いていき、高く浮かび上がるゴースト副船長の前に畏敬の念を持って立ち止まった。
目を輝かせ、絶対的な確信と畏敬の念に満ちた表情で彼を見上げる。
「まさか……本当にあなただったなんて」
リザードマンの少女は囁き、深い敬意を込めて小さく頭を下げた。
「伝説は嘘じゃなかった。お目にかかれて光栄です……『船長』」
頭に三角帽子を被り、船首の近くにポツンと立っていたレオンは瞬きをし、ゆっくりと犬の耳を垂れ下がらせた。
自分の船の上で完全に無視され、憤りを感じる彼の頭の上には、巨大な「?」マークが浮かんでいた。




