第4話
入口のポスターに、巨大な物体が写っている。
説明文は一行だけ。
「それは、考える。」
今日は、これだな。
考えるタイプのやつだ。
前回の反省を活かす。
売店で、ポップコーンはLL。
コーラもLL。
氷抜き。
これは正解だ。
少なくとも、途中で足りなくなることはない。
会計に時間がかかる。
後ろが少し詰まる。
焦らない。
焦らないと決めた。
結果、上映開始に遅れる。
場内は暗い。
通路を進む。
足元のライトが弱い。
段差を一段、読み違える。
体が前に出る。
ポップコーンが、静かに散る。
音は小さい。
だが、量が多い。
拾うか迷う。
迷っている間に、誰かが踏む。
「……多すぎました?」
後ろから声。
彼女だ。
「前回の反省です」
「前回より、派手ですね」
その通りだ。
席に着く。
彼女は隣だった。
今日は、近い。
スクリーンでは、すでに異変が起きている。
無機物が、意思を持ち始めている。
なるほど。
今回は、そう来るか。
前の席の客が、笑う。
笑うところではない。
たぶん。
女が、肘掛けを少し避ける。
ポップコーンの侵食を警戒している。
「これ、怖いですか」
「設定は、怖いですね」
「中身は?」
「今のところ、考え中です」
彼女は、少しだけ笑う。
拾わなかったポップコーンを、踏まないように足を動かす。
中盤、設定の説明が始まる。
説明してはいけないタイプの設定だ。
(ここで止めておけばいいのに)
止まらない。
コーラを飲む。
氷がない分、減らない。
減らないから、飲む。
体が、現実的な判断を要求し始める。
(これは、後で行けばいい)
もう一口、飲む。
我慢する。
限界。
クライマックス前。
ついに意思決定を行う。
俺は、席を立つ。
今回は遅かった。
つまりそういうことだ。
戻ったとき、スクリーンは静かだった。
終わっていた。
彼女が、こっちを見る。
「どうでした」
「たぶん、良いところでした」
《これは、誰も生き残る必要のない話である。》
外に出ると、夜風が冷たい。
コーラの重さが、まだ残っている。
前回よりは、マシだった気がする。
前回は、最後まで見たのに、何も残らなかった。
今回は、見ていない分だけ、
何かあった気がする。




