46話 《過去改編》初めてのスキル取得②
目の前に浮かぶのは、元の世界線で初めてステータスを手に入れた時と全く同じスキル一覧だった。
懐かしさと、同時に苦い記憶が蘇る。
前の人生では、深く考えずに《体術》《投術》《火魔術》《回避》《索敵》《料理》の六つを選んだ。
それでちょうど12000Pを使い切った。当時はそれが正解だと思っていたし、実際にそれなりの戦いはできた。
初回限定でスキル取得に必要なSPが二割減になっていた。
ここを逃して後でスキルを取得しようとすると必要SPが増えるのだ。
なので初回限定でスキルを取得する場合は、スキルポイントを使い切った方がいい。
ただ、スキル取得はセオリーというものがある。
その一つが武装スキルと魔術スキルは両方取らない方がいいというものだ。
魔法戦士なんかに憧れると痛い目を見る。俺とかな。
さあ、ここからが本番だ。俺の目の前に浮かぶ半透明のウィンドウ。
そこに並ぶスキル一覧を眺めながら、俺は隣にいる早苗、昴、そして福嗣に向き直った。
「いいか、三人ともよく聞いてくれ。スキルの選び方には鉄則があるんだ」
俺はかつての失敗を繰り返さないために、そしてこの「過去改変」を確実なものにするために、解説を交えながら指を動かす。
「まず、武装スキルと魔術スキルは、両方取らずにどっちかに絞った方がいい。両方持ってると、剣も魔法も使えて一見カッコいいけどな。実はそれが落とし穴なんだ。両方取ると、スキルランクが極端に上がりづらくなる」
前の人生での俺は、まさにその「カッコよさ」に惹かれた一人だった。
低レベルの頃は、二刀流のように使い分けられる便利さに酔いしれていた。
だが、将来性がないということで、入社したクランでは雑用に回されて、ギルドでメンバー募集をしても仲間は集まらない。
中途半端な探索者は大成しない。それが二〇二〇年代の常識だ。
プロの世界では、何でもできるゼネラリストより、一つのことを極めたスペシャリストが望まれる。
役割分担がはっきりしたパーティで、自分の専門を磨くのが一番効率がいいんだ。
「一般スキルも同じだぞ。三つくらいまでならいいけど、五個も六個も欲張ると、結局どれも育たなくなる」
俺は自分への戒めを込めて告げると、素早く画面を操作した。
まずは一般スキルの《索敵》を取得。これは絶対に外せない。
一般スキルの《回避》と《料理》はスルーする。
前回取得したスキルを今回は取得する余裕はない。
先ほども言ったがスキルは多ければいいというものではない。選択と集中が大事なのだ。
《料理》スキルなんてポイントが余ったから冗談で取ったようなスキルだ。
スキルはダンジョンの影響下でしか使用出来ない。地上であればダンジョンの入口の近くの魔物がポップするような危険地域だけだ。つまり自宅で料理するのにスキルは使えない。
まあ、近年はダンジョンが増えすぎて危険地域にも普通に人が住むようになったから、危険地域で《料理》スキルで商売している人もいたりするが。
《回避》は役に立つことは確かだが、戦闘において絶対に必要とは言えない。
ではなぜ《索敵》を取るのか。
基本的に今と似たような人生を歩むのであればソロでダンジョンに潜ることが多くなるはずだ。
ソロのダンジョン探索では生き残るために《索敵》は必須に近い。危険を回避できる確率がかなり高くなる。
パーティを組んだとしても、《索敵》があることで探索の役に立つことが出来る。
《索敵》を育てていくようにしよう。
戦闘に関しては魔術スキルではなく武装スキルで行く。
過去がどう改変されるか分からないが、歴史の強制力のようなものがあると考えてほとんど同じ道を辿る前提でいた方がいい。
そうなると俺はソロでダンジョンを探索する機会が多くなる。魔術メインだとMPが大量に使用するのでソロ探索には向かない。
武装スキルを取るとして、元の世界線で使っていたものを取るのが無難だろう。
知らないスキルを取って現代に戻りスキルの使い方が分からないとかなると覚えなおすのが大変だ。
この時に取ったスキルは《体術》と《投術》。《投術》を選ぶことにする。
理由は《索敵》と《投術》の相性がいいからだ。
モンスターを感知して待ち構えて姿が見えると同時に投擲武器で攻撃する。ソロで安全に戦うのに向いていた。
「私は剣術を取ろうかな。あ、火炎武器とかもカッコいい!」
早苗が目を輝かせながらウィンドウを指さす。
「僕も剣がいいけど……一覧にないなぁ。しかたない、斧でいいか」
福嗣が少し残念そうに肩を落とし、昴は静かに画面を見つめて呟いた。
「……僕は、魔法がいいかも」
三人は俺の言葉に感心したように頷き、それぞれのスキルを慎重に選び直している。
残りのSPは8000P。
残りのポイントで《HP+18》《MP+5》《敏捷+14》《技力+4》のステータス上昇を取ることにした。
ステータス上昇系は昔は人気がなかった。上昇値が少ないからだ。
だが、レベルアップした時の能力の上昇値が元ステータスに依存することが明らかになってきた。レベル1の時にステータスをアップさせておけば、レベル20や30になった時に大きな違いとなる。
スキルを無駄に増やしすぎるとスキルランクが上がりにくくなる。それならばステータスアップを狙った方がいい。
「いいか、ポイントが余ったら無闇にスキルを増やすんじゃなくて、ステータスアップに回した方がいいぞ」
俺はステータス画面を操作しながら説明した。
「レベルアップした時の能力の伸びが、元のステータス値に依存するらしいんだ。だから、最初にステータスアップしたら、レベルが上がった後で強くなるんだ」
これで7200P。残り4800P。
ここでちょっとした裏技というとかテクニック。二〇二〇年代では多くの人がやってるライフハックをしてみる。
一度、スキル獲得の項目から抜ける。そしてスキル強化の項目を選ぶ。
すると現在取得しているスキルをSPを消費して強化出来るのだ。
この時に初回限定に必要SPが少な目で強化できる。後でやるのと比べてSPを節約することが出来る。
それに低レベル時だとステータス補正の恩恵は少ないし、スキルもEランクだとそれほど役に立つとは感じられない。
だが、低レベル時からスキルランクが高いと初心者探索者の中では実力が一歩抜き出るのだ。そうなると強いモンスターと戦えることになり、レベルアップが早くなる。スタートダッシュで大きな差が出て来る。
『《投術》スキルのランクアップをしますか?(必要SP4800)(YES/NO)』
YESを選択する。
スキルのランクアップは基本的にレベルを上げるかスキルを使用するしかない。
だが、SPを消費してスキルランクを上げることもできる。
ただし、固有スキルには対象外なんだけどね。固有スキルが出来るなら《過去改変》のスキルレベルもSP消費して上げている。
これで使用SPはちょうど12000P。
「そうだ。三人とも、スキルのランクアップのことも伝えておかないとな」
俺は一息つくと、自分の画面を見つめていた三人の顔を見た。
彼らはまだ、初期ポイントをどう割り振るかに頭を悩ませている。
「いいか、今のうちにスキルランクを上げておくと、後ですごく楽になるんだ。余ったポイントがあるなら、スキルの取得だけじゃなくて強化の方も見てみるといいぞ」
三人は俺の言葉に顔を上げた。未来の知識を持つ俺にしかできない、最高のアドバイスだ。
さて、俺のスキル取得は完了した。
これが新しい俺のステータスである。
【名前】 横手緋呂
【年齢】 10歳 【レベル】 Lv1
【HP】 78/78
【MP】 61/61
【攻撃】 35
【防御】 33
【敏捷】 48
【理力】 31
【技力】 34
【幸運】 29
【SP】 0
【武装スキル】 《投術 Lv2》
【一般スキル】 《索敵 F》《編集 F》
【耐性スキル】 《火耐性 F》《貫通耐性 F》
以前と比べるとずいぶんとスキルがすっきりした。
これだけスキル構成が違うとなれば過去は改変されたはずである。
改変されてないと困る。現在に戻った瞬間に死んでしまう。
余裕が少しで来たの三人にスキルの取り方のアドバイスを続けた。
二〇二〇年辺りには常識となっている情報だが、この時代ではトップ探索者でも知っているかどうかという貴重な情報だ。
詮索されたとすると知識の出所なんてないから単なる勘で口から出まかせだったということになるのかな。
公園で三人と話をしていると過去に意識が転送してから二十分が経過したらしい。
意識が切り替わり現代へと戻る――――。
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