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楔荘 破~聖女と楽園の真実~  作者: 五月雨 禊/作者 字
19/21

第十九話 Nia・Alvand

 月明かりが樹の穴を通り空間を照らし、棺の近くに生えた夜光キノコが足元を照らす。こんな明かりのおかげで、夜でも昼程ではないが明るかった。

 空間の隅に水が流れていて、水の溜まっている小さな池には夜光虫が集まっている。まるで異世界の幻想的な空間のようだ。

 禊は棺に向かって歩いていく。

 棺の横に座ると縁に腕を乗せ、その上に顎を置く。中の植物の幾つかも光っており、下から光が溢れている。

 禊は中の少女の前髪に触れる。

「まだ、起きないかな……。覚えてる? 俺と君とじゃ生きてる世界が違うんだって言われて、君は怒りながら、だったら俺と君の世界を創ればいいって言った。やっと二人だけで暮らせると思ったのに……。人間って欲深いね。俺らの世界まで奪おうとするなんて……」

 禊は少女の頭を撫でる。そして自分の左胸をつかむ。

「愛してるよ」

 少女の額にキスを落とす。

 禊がウトウトしていると、少女の瞼がゆっくり開いた。

 少女はぼやける視界の中から禊を探す。

「――みそぎ――?」

 筋肉の落ちた細い腕をゆっくり上げ、禊の手の上に置く。

「みそぎ……!」

 禊は少女のか細い声に気付き、急いで少女の手を握る。

「――ニーア――!」

 少女はほほ笑む。

「……やっと、会えた……」

「ニーア、ニーア……!」

 禊の大きな目から涙が溢れそうになる。

「落ち着いて……。大丈夫、私は、ここにいるから……」

 ニーアは起こしてほしそうに禊の腕をつかみ、禊が上体を起こさせる。

「ニーア……」

「迎えに来てくれて、ありがとう」

 禊の目から大粒の涙が溢れる。

「何で泣くの? 『狼少年は泣かない』んじゃないの……?」

「君の前では、狼少年ではいられないみたいだ」

「なにそれ……」

 ニーアがにっこり微笑むと、その燃えるような赤い目から涙が溢れた。

 ニーアは禊を強く抱きしめた。すると水辺の蛍が一斉に飛び立ち、光の粒が二人を包んだ。樹の頂上にある鐘が七回鳴る。美紗が駆け回りながら紐を引き、鐘を鳴らしていた。

 禊は動けないニーアを横抱きに抱え外に出る。ニーアの手を取り支えながら、足を地に降ろした。

「久しぶりの土の感触……」

 ニーアは足の指をもぞもぞ動かす。

「土の匂い、草の匂い、海の匂い、風の匂い……そして何より、君の匂い」

 ニーアは笑う。

「禊、大好き!」

 ニーアが禊に飛びつき、抱きしめる。

 禊がよろけ、

「俺も、大好きだよ」

 強く抱きしめた。

 禊は上着を脱ぎ、ビーストモードで獣になる。

 ニーアが両手をあげ、獣は顔を差し出す。ニーアは禊の頭を抱きしめると、優しく口づけをした。

「私の名前を教えて」

『Nia・Alvand』

「君がくれた名前」

 ニーアは嬉しそうに獣の顔に頬ずりする。

 要は木陰に隠れて、獣の禊と少女の光景を見ていた。

「写真と同じだ」

 写真を裏返す。

「ありがとう、禊。僕にも同じ世界を見させてくれて」

 少女は獣を撫でる。じゃれ合い、笑い合う。

「私は良いのだけれど、君は大丈夫なの?」

 禊は人間に戻り、上着を着る。

「どういう事?」

「聞いてないの? 矛盾達の結末。きっと、つらい別れになると思うの」

「それは……予言?」

「そうだね。そんなとこ」

 美紗が樹から降りて来る。

「にーあ!」

「美紗、ありがとう」

「いへへー」

 美紗が満面の笑みで二人を見る。

 禊はニーアの手を握り、

「それでも、君と共にいれるならどんな茨の道だって痛くもかゆくもないさ」

「ホント、意地っ張りなんだから」

 ニーアは小さく笑う。

 朝日が水平線から見え始める。

「禊、私を連れてって」

 禊はまた上着を脱ぐと今度は巨人となり、手にニーアを乗せて巨木の一番上まで軽々と登っていく。

 清々しい朝日がユートピアを、世界を照らす。

「綺麗……」

 ニーアは大きく深呼吸をし、

「ありがとう」

 胸元で手を組んだ。

 たちまちユートピアの湖から水鳥が一斉に飛び出し、巨木の枝で寝ていた小鳥は起き出し、巨人の周りを囲むように飛んだ。

「わぁ……!」

 ニーアの肩に小鳥とリスが留まる。

「フフッ」

 暖かな日の光が冷えた夜の空気を温めていく。

 ニーアは目を瞑り深く息を吸うと、両手を広げて口を開いた。

 それは大地の声とも風の声とも海の声とも空の声とも言う、流れる美しい旋律だった。全ての誕生を祝福し、今日の始まりを祝福する。清らかで滑らかな奏。


 矛盾達を家に集めた。

 ニーアをソファに座らせる。

「初めまして。ニーア・アルヴァンドです」

 ニーアがにこやかに挨拶をした。

 一同がニーアに釘付けになる。

「やだ、そんなに見ないで」

 ニーアが顔を手で覆い隠す。

「とってもお綺麗ですのね……」

 言葉は口元をそっと手で押さえた。

「私よりも乳が小さいのに、何だこの魅力は……!?」

 小町は悔しそうに頭を抱えた。

「禊とまた違った何かが……」

「うん」

「うん」

 要と尊と嫌好は顎に手を添えて真面目な顔をしていた。

「超美人っす!」

 榊は手を叩いた。

「おいお前ら、あんまり凝視するな」

 禊が困ったように笑っていると、ニーアは真顔で禊を抱きしめ、

「私は禊の奥さんよ。親友でもあり恋人でもあり妻でもあるの」

「おい、ニーア……!」

 男四人が吐血して倒れる。

「だらしないですの。禊の奥さんが貴女でも、私も妻ですの!」

 言葉は禊に抱き着いた。

「禊は私のよ!」

「いいえ、私のですわ!」

「私!」

「ですの!」

「さっさと離さんか小娘ぇ!」

「貴女こそ、この薔薇娘様!」

 言葉とニーアがいがみ合う。

「おい、小娘たち、いい加減にしないか。禊が窒息死しそうだぞ」

 小町はそうため息をついてお茶をすする。

「旦那様!?」

「禊!?」

「ぐえぇ……」


 美紗が禊の膝の上で嬉しそうにしている。

「ニーア、どこか行きたいとこは無いか?」

「渋谷! 秋葉原! メイド喫茶! 大阪の某遊園地! 千葉にある自称東京の巨大ネズミ帝国! アニ〇イト!」

 鼻息を荒くし目を輝かせて言った。

「……なあ、コレ本当に1000年も眠ってたんか?」

 尊が禊に聞く。

「さぁ……?」

「電波はこっちまで来てたから、アニメとか結構見てたよ。海の中にあるネット? のケーブルとか乗っ取ったり……」

「神聖な聖者かと思ったら、ただのオタクだったとは……」

 要が苦笑いする。

「いいえ、私は神聖な聖者ではないよ。腐った聖者よ!!」

「どや顔で言うセリフじゃない!」

 忍が渾身のツッコミを入れる。

「あ、忍いたんだ」

「いましたよ! 僕の扱い雑じゃありません!?」

 禊はどうでもよさそうな顔をしてソファに横になった。

「ニーアさんが自己紹介している辺りからいたんですけど!?」

「お前一言もしゃべってなかったろ」

「あ、あまりにも可愛い女の子がいたもんで、ついコミュ障が……」

「だっせぇ」

 禊はスマホをいじりながら笑った。




 ニーアを連れて楔荘に行き、琉子に来てもらった。

「パパり~ん! 会いたかったお~!!」

 琉子が禊に抱き付いた。

「お、おう。元気にしてたか?」

「もうね、パパりんの事考えると胸が張り裂けそうでつらかったの」

 そのまま張り裂けてしまえば……と、ニーアは冗談半分に思った。

「ねえ、禊。私をこんなとこに連れてきて何するの?」

 ニーアが禊の袖を引いたとき、

「キャー!」

 琉子がヒステリックな声を上げる。

「パパパパパりんの愛人!?」

「いや、むしろ妻だ!」

 ニーアが胸に手を当て一歩前に出て自慢げに言った。

「おいニーア、自分で言うな」

「ママりんなの!?」

「そうなの!」

 琉子とニーアは抱き合う。

「ママりーん!」

「娘よー!」

 禊は黙って見ていた。

「ところで禊、この娘は誰なんだ?」

「えっ?」

「血はつながってないけど、パパりんの一番下の娘だお☆」

「そうなの!? 超かわいい! チューしよ、チュー!」

「ママりんだーい好き! チュー……」

「お、お取込み中悪いが……」

「邪魔しないで!」

「邪魔しないで!」

 琉子とニーアに同時に怒られた。

「ママりん今日は何しに来たの?」

「今日は……なんだっけ?」

 首をかしげて禊を見ると、

「外出するのに、こんなに裾の長い服を着て行くわけにいかないから、琉子に服を選んでもらおうと思ったんだ」

「マジで!? 超がんばる!」

 琉子は押し入れとタンスをかき回す。服がたくさん飛んでくる。

「じゃあまずこれ! フツーな感じに、小花柄のワンピとジャケット!」

「あ、かわいい!」

「フワフワミニワンピにコルセット!」

「えー、可愛いー!」

「超パンク!」

「キャー! 痛い!」

「胸に『腐』って書かれたTシャツとパーカー!」

「可愛い!」

「超ゴシック!」

「キャー!」

「ロリータ!」

「キャー!」

「セレブに!」

「キャー!」

「ボーイッシュ!」

「キャー!」

「制服!」

「キャー!」

「――!」

「――!」

 かれこれ3時間は経っただろうか。

「結局、どれもかわいくて選べないわ……」

「そ、そうね……ハァ、ハァ……」

 二人は息を切らして床に突っ伏していた。床は見えないほど衣服で埋まっていた。

「禊に選んでもらお……」

「そうしましょ」

 禊は山になった服を見て悩む。

「これとこのスカートを縫い合わせて、二段にして、白い半袖シャツに青いリボン付けて、カーディガンを着れば……」

 今まで来ていた服と似たようなデザインの服になった。

「凄い! やっぱり禊のデザインした服が一番かわいい!」

 ニーアは嬉しそうにクルクルと回ってスカートを翻す。

「可愛い! ママりんきゃわいい!!」

 二人は大はしゃぎ。

「これからどこに行くの?」

「渋谷と、秋葉原と……」

「琉子も行っていいですか!?」

「来たい~?」

 ニーアは仰ぐように聞く。

「うんうん!」

「いいよ!」

 ニーアが歓迎するかのように両手を広げると、琉子が嬉しそうにニーアの腕に飛び込んだ。

「元気だなぁ……」

 禊はさりげなく痛みだす胃をそっと撫でた。

 渋谷に着いた。

「キャー! 見てこの服! 超かわいい!」

「このネイルの色見て!」

「可愛い!」

「可愛い!」

 琉子とニーアは黄色い声を上げながらちょこまかと移動する。

「ちょ、待ってよ……荷物重い……」

 禊はヒーヒー言いながら二人の後を追う。

「旦那様、大丈夫ですか?」

「僕が手伝いましょうか?」

「ありがとう、白銀姫、黒鉄丸。でも、外でお前らを使う訳にはいかないから……」

「申し訳ないデス……」

「忝ぬ……」

 太刀斬鋏が背中のケースの中でしょんぼりする。

 秋葉原にて。

「いらっしゃいませ、お嬢様、ご主人様!」

「ここがメイド喫茶!?」

「メイドさん可愛い!」

「はー、やっと休憩できる……」

 三人は席に座る。メニューを開くなり、

「私これとこれ!」

「私も!」

 ニーアと琉子が早速注文を決める。

 オムライスがやってきて、

「さあ、ご一緒にどうですか?」

「やるやる!」

「私も!」

「萌え萌えキュンキュン!」

「おいしくなぁれ!」

 禊は頬杖を突きながら二人を眺める。

「……なんか違う……」

 不満そうに禊はじっと見ていた。

「メイドさんありがとー!」

「ばいばーい!」

「ごゆっくりどうぞ」

 ニーアと琉子が嬉しそうに食事するのを尻目に、禊はそっと小町に渡された胃薬を飲んだ。

 その後移動し、

「私このアニメ見た!」

「マジで!? ママりんスゴ!」

「え!? 俺まだそのアニメ見れてない」

「もう終わっちゃったよ。ネットで何度も見たよ、特にあのシーンが……!」

「ロミオ!」

「ジュリエット!」

「いや、それなんか違う……」

 呆れつつも、二人の楽しげな表情を見て禊も思わず笑みがこぼれた。

 ベンチに座って休憩する。

「私、飲み物買ってくるね」

「行ってらっしゃーい」

 琉子はニーアと禊に手を振り、走っていく。

「……ありがとう」

 道行く人々を見ながらニーアは言った。

「え?」

「今日はとっても楽しかった。琉子ちゃんともたくさんおしゃべりしたし、禊はあんまり出てこなかったけど……禊とお出かけもできたし」

 ガチャガチャでゲットしたばかりのストラップをいじりながら、ニーアは恥ずかしげに話した。

「君の望んだことが出来て、嬉しいよ」

 禊はニーアを見てそう微笑んだ。

「またそれー!」

 ニーアが笑う。禊の顔を覗き込み、

「目の隈、こんなに濃くなってる」

「存在が出てきたころ辺りからだよ。別に大したことじゃ……」

 ニーアは禊の顔を両手で包むと、目の隈を親指の腹で撫でる。

「全力で探してくれてありがと」

「俺の方こそ。待っててくれてありがとう」

 禊は不器用に微笑む。ニーアは嬉しそうに微笑むとそっと顔を近づけた。一瞬ためらったが禊がそっと目をつぶると、ニーアが高速で禊の頭に何かをはめた。

「ママりーん、ただいま……」

「……どう?」

 ニーアは帰って来た琉子に向かってブイサインをする。

 琉子の顔が徐々に赤くなっていき、

「超かわいい!」

「でしょ! 猫耳禊!」

 猫耳のついた禊の姿を携帯のカメラに収める。

「キャー!」

「禊ぎゃわ゛いい゛ぃ!!」

「あー……」

 禊はとりあえず笑顔を向けるが、引きつっていて苦笑いにしか見えなかった。

 夕日もほぼ沈み切った頃。

「琉子ちゃん、またね!」

「ママりん、バイバイ!」

 琉子が禊とニーアに元気よく手を振る。

「琉子ちゃん、可愛いなぁ……」

「ニーア、顔」

 禊が指さして笑うと、ニーアは頬を膨らませて怒った。

「今日の晩御飯どうしよっか」

 ニーアが禊の顔を覗きながら訪ねると、

「じゃがいもがいいなぁ」

「またそれ!」

 禊とニーアが笑う。

 禊は右手に持っていた荷物を左手に持ち替えると、開いた手をそっとニーアの手に近づける。だがあと少しの所で手を離し、ズボンの尻ポケットに手を当てた。それを視界の隅で見てしまったニーアは仕方ないなと言うように笑みを溢すと、禊の手首にそっと指をかけた。そのまま指が下りていき、二人の指が絡められる。

 白く細い柔らかい手を壊さないようにと、禊は手の力加減に目いっぱい気を付けた。


「ただいま!!」

 ニーアが元気よく矛盾の家の玄関を開ける。

「疲れた……」

 禊が玄関で倒れる。

「禊、大丈夫?」

 嫌好が荷物を持った。

 デスクワークする小町にそっと近づき、

「ねー小町聞いて!」

「あーうるさいなもう耳元で話しかけるな! 心臓に悪いだろう!」

 驚きの余りカップを倒しそうになり、小町は急いでカップを持ち上げる。

「えー? 心臓止まっても大丈夫だよ」

 小町は逃げるようにパソコンを持って二階に行った。

「帰ったら手洗えよ」

 禊は台所で手を洗いながら夕食の準備に取り掛かる。

 ニーアは嬉しそうにリビングの真ん中でスカートを翻してクルクル回る。禊はそれを見ながら微笑ましそうに笑う。

「ねー尊、何読んでるの?」

 リビングのソファで本を読む尊の肩に顎を乗せる。

「え!? ど、ドイツの戦争学について……」

「へ~、勤勉なんだねぇ」

 机の上の数冊の本に目が行く。

「これも読んでるの?」

 ニーアは本を一つ手に取る。

「それは少し難しいから……」

「アラビア語か……」

 ニーアは難なく尊に読み聞かせて見せた。

「何で読めるんだ……? 俺、辞書があっても読めないのに」

「ん? なんか読めた」

 ニーアはヘラヘラ笑いながら尊の頭を撫でる。尊はまんざらでもなさそうな顔をする。

「尊、今晩は蟹料理な」

 禊は真顔で冷凍庫から出した蟹を真っ二つに勢い良く切った。

「ちょっとやめてよ俺が蟹苦手なの知ってるでしょ!?」

 尊は青い顔で怒った。

 要が二階から降りてくる。

「小町の独り言がうるさいから避難してきた。兄さん、なんか面白いもの持ってる?」

「無いよ」

「あるよー!」

 ニーアが嬉しそうに要に向かって手をあげる。

「え!? あっ、おかえり……」

「お姉さんが楽しいことしちゃうぞ~!」

 ニーアは要に向かってダイブする。

 バランスを崩し二人は倒れた。

「くぅ~! 鳥さんの髪は白くてサラサラふわふわで癖になる触り心地だぁ~」

 要の頭を抱きしめて撫でまわす。

「うっわ、わ、あ、あ、な、何!? え?」

 要は混乱するしかなかった。

 要の白く柔らかい頬に吸い付く。

「キャー!」

「鳥モチおいしー」

 じたばたと暴れるたびにニーアの胸が顔に当たる。

「ニーア、そのくらいにしてやれ。部屋着に着替えたらどうだ?」

「はーい」

 解放された要はソファでぐったりしていた。

 二階に上がるなり言葉を見つけ、

「そのちっぱいを揉んだら大きくなるでしゅよ~!」

「キャァァ何するんですの!?」

 二階から暴れる音がした。

「なあ、禊。あの酔っ払いみたいなの何なんだ……」

「初めて会ったとき、俺は全部やられたからな」

 尊の顔が青ざめる。

「髪の毛食べられたし、体中に歯形とかキスマーク付けられたし、首輪付けられて飼い犬ごっことかやったし、強制的に一緒にお風呂入ったし、体の隅から隅まで全部見られた」

「何その恐ろしい刑罰!!」

 要が震えあがる。

「え、じゃあ禊の体内まで見られたってこと……」

 嫌好が食いつく。

「まあそんなところだな」

 禊は真顔で食器を並べながら言う。

「色んな拷問も試されたよ。マニアックなプレイとかね」

 要、尊、嫌好が恐怖のあまり三人くっついて固まっていた。

「おかげで不感症になったよ。まあその前から不感症っぽかったけどね」

 禊は力なく笑うが、三人には恐怖に震えるしかなかった。

「ニーアちゃんお願い、もう許してぇ!」

 言葉は涙目で訴えた。

「言葉可愛いぞぉ!」

 それでもニーアはやめなかった。

「ニーア! ご飯だぞ!」

 禊が二階に向かって一声かけると、ニーアは高速で席に着いた。

 男子三人はニーアに目を合わせられなかった。

「お腹すいたなぁ……夕飯は禊さんの料理が食べたいなぁ。夕飯までに帰れるのかなコレ……」

 忍は泣きながらそうぼやき、暗い仕事部屋で一人仕事をしていた。

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