第十九話 Nia・Alvand
月明かりが樹の穴を通り空間を照らし、棺の近くに生えた夜光キノコが足元を照らす。こんな明かりのおかげで、夜でも昼程ではないが明るかった。
空間の隅に水が流れていて、水の溜まっている小さな池には夜光虫が集まっている。まるで異世界の幻想的な空間のようだ。
禊は棺に向かって歩いていく。
棺の横に座ると縁に腕を乗せ、その上に顎を置く。中の植物の幾つかも光っており、下から光が溢れている。
禊は中の少女の前髪に触れる。
「まだ、起きないかな……。覚えてる? 俺と君とじゃ生きてる世界が違うんだって言われて、君は怒りながら、だったら俺と君の世界を創ればいいって言った。やっと二人だけで暮らせると思ったのに……。人間って欲深いね。俺らの世界まで奪おうとするなんて……」
禊は少女の頭を撫でる。そして自分の左胸をつかむ。
「愛してるよ」
少女の額にキスを落とす。
禊がウトウトしていると、少女の瞼がゆっくり開いた。
少女はぼやける視界の中から禊を探す。
「――みそぎ――?」
筋肉の落ちた細い腕をゆっくり上げ、禊の手の上に置く。
「みそぎ……!」
禊は少女のか細い声に気付き、急いで少女の手を握る。
「――ニーア――!」
少女はほほ笑む。
「……やっと、会えた……」
「ニーア、ニーア……!」
禊の大きな目から涙が溢れそうになる。
「落ち着いて……。大丈夫、私は、ここにいるから……」
ニーアは起こしてほしそうに禊の腕をつかみ、禊が上体を起こさせる。
「ニーア……」
「迎えに来てくれて、ありがとう」
禊の目から大粒の涙が溢れる。
「何で泣くの? 『狼少年は泣かない』んじゃないの……?」
「君の前では、狼少年ではいられないみたいだ」
「なにそれ……」
ニーアがにっこり微笑むと、その燃えるような赤い目から涙が溢れた。
ニーアは禊を強く抱きしめた。すると水辺の蛍が一斉に飛び立ち、光の粒が二人を包んだ。樹の頂上にある鐘が七回鳴る。美紗が駆け回りながら紐を引き、鐘を鳴らしていた。
禊は動けないニーアを横抱きに抱え外に出る。ニーアの手を取り支えながら、足を地に降ろした。
「久しぶりの土の感触……」
ニーアは足の指をもぞもぞ動かす。
「土の匂い、草の匂い、海の匂い、風の匂い……そして何より、君の匂い」
ニーアは笑う。
「禊、大好き!」
ニーアが禊に飛びつき、抱きしめる。
禊がよろけ、
「俺も、大好きだよ」
強く抱きしめた。
禊は上着を脱ぎ、ビーストモードで獣になる。
ニーアが両手をあげ、獣は顔を差し出す。ニーアは禊の頭を抱きしめると、優しく口づけをした。
「私の名前を教えて」
『Nia・Alvand』
「君がくれた名前」
ニーアは嬉しそうに獣の顔に頬ずりする。
要は木陰に隠れて、獣の禊と少女の光景を見ていた。
「写真と同じだ」
写真を裏返す。
「ありがとう、禊。僕にも同じ世界を見させてくれて」
少女は獣を撫でる。じゃれ合い、笑い合う。
「私は良いのだけれど、君は大丈夫なの?」
禊は人間に戻り、上着を着る。
「どういう事?」
「聞いてないの? 矛盾達の結末。きっと、つらい別れになると思うの」
「それは……予言?」
「そうだね。そんなとこ」
美紗が樹から降りて来る。
「にーあ!」
「美紗、ありがとう」
「いへへー」
美紗が満面の笑みで二人を見る。
禊はニーアの手を握り、
「それでも、君と共にいれるならどんな茨の道だって痛くもかゆくもないさ」
「ホント、意地っ張りなんだから」
ニーアは小さく笑う。
朝日が水平線から見え始める。
「禊、私を連れてって」
禊はまた上着を脱ぐと今度は巨人となり、手にニーアを乗せて巨木の一番上まで軽々と登っていく。
清々しい朝日がユートピアを、世界を照らす。
「綺麗……」
ニーアは大きく深呼吸をし、
「ありがとう」
胸元で手を組んだ。
たちまちユートピアの湖から水鳥が一斉に飛び出し、巨木の枝で寝ていた小鳥は起き出し、巨人の周りを囲むように飛んだ。
「わぁ……!」
ニーアの肩に小鳥とリスが留まる。
「フフッ」
暖かな日の光が冷えた夜の空気を温めていく。
ニーアは目を瞑り深く息を吸うと、両手を広げて口を開いた。
それは大地の声とも風の声とも海の声とも空の声とも言う、流れる美しい旋律だった。全ての誕生を祝福し、今日の始まりを祝福する。清らかで滑らかな奏。
矛盾達を家に集めた。
ニーアをソファに座らせる。
「初めまして。ニーア・アルヴァンドです」
ニーアがにこやかに挨拶をした。
一同がニーアに釘付けになる。
「やだ、そんなに見ないで」
ニーアが顔を手で覆い隠す。
「とってもお綺麗ですのね……」
言葉は口元をそっと手で押さえた。
「私よりも乳が小さいのに、何だこの魅力は……!?」
小町は悔しそうに頭を抱えた。
「禊とまた違った何かが……」
「うん」
「うん」
要と尊と嫌好は顎に手を添えて真面目な顔をしていた。
「超美人っす!」
榊は手を叩いた。
「おいお前ら、あんまり凝視するな」
禊が困ったように笑っていると、ニーアは真顔で禊を抱きしめ、
「私は禊の奥さんよ。親友でもあり恋人でもあり妻でもあるの」
「おい、ニーア……!」
男四人が吐血して倒れる。
「だらしないですの。禊の奥さんが貴女でも、私も妻ですの!」
言葉は禊に抱き着いた。
「禊は私のよ!」
「いいえ、私のですわ!」
「私!」
「ですの!」
「さっさと離さんか小娘ぇ!」
「貴女こそ、この薔薇娘様!」
言葉とニーアがいがみ合う。
「おい、小娘たち、いい加減にしないか。禊が窒息死しそうだぞ」
小町はそうため息をついてお茶をすする。
「旦那様!?」
「禊!?」
「ぐえぇ……」
美紗が禊の膝の上で嬉しそうにしている。
「ニーア、どこか行きたいとこは無いか?」
「渋谷! 秋葉原! メイド喫茶! 大阪の某遊園地! 千葉にある自称東京の巨大ネズミ帝国! アニ〇イト!」
鼻息を荒くし目を輝かせて言った。
「……なあ、コレ本当に1000年も眠ってたんか?」
尊が禊に聞く。
「さぁ……?」
「電波はこっちまで来てたから、アニメとか結構見てたよ。海の中にあるネット? のケーブルとか乗っ取ったり……」
「神聖な聖者かと思ったら、ただのオタクだったとは……」
要が苦笑いする。
「いいえ、私は神聖な聖者ではないよ。腐った聖者よ!!」
「どや顔で言うセリフじゃない!」
忍が渾身のツッコミを入れる。
「あ、忍いたんだ」
「いましたよ! 僕の扱い雑じゃありません!?」
禊はどうでもよさそうな顔をしてソファに横になった。
「ニーアさんが自己紹介している辺りからいたんですけど!?」
「お前一言もしゃべってなかったろ」
「あ、あまりにも可愛い女の子がいたもんで、ついコミュ障が……」
「だっせぇ」
禊はスマホをいじりながら笑った。
ニーアを連れて楔荘に行き、琉子に来てもらった。
「パパり~ん! 会いたかったお~!!」
琉子が禊に抱き付いた。
「お、おう。元気にしてたか?」
「もうね、パパりんの事考えると胸が張り裂けそうでつらかったの」
そのまま張り裂けてしまえば……と、ニーアは冗談半分に思った。
「ねえ、禊。私をこんなとこに連れてきて何するの?」
ニーアが禊の袖を引いたとき、
「キャー!」
琉子がヒステリックな声を上げる。
「パパパパパりんの愛人!?」
「いや、むしろ妻だ!」
ニーアが胸に手を当て一歩前に出て自慢げに言った。
「おいニーア、自分で言うな」
「ママりんなの!?」
「そうなの!」
琉子とニーアは抱き合う。
「ママりーん!」
「娘よー!」
禊は黙って見ていた。
「ところで禊、この娘は誰なんだ?」
「えっ?」
「血はつながってないけど、パパりんの一番下の娘だお☆」
「そうなの!? 超かわいい! チューしよ、チュー!」
「ママりんだーい好き! チュー……」
「お、お取込み中悪いが……」
「邪魔しないで!」
「邪魔しないで!」
琉子とニーアに同時に怒られた。
「ママりん今日は何しに来たの?」
「今日は……なんだっけ?」
首をかしげて禊を見ると、
「外出するのに、こんなに裾の長い服を着て行くわけにいかないから、琉子に服を選んでもらおうと思ったんだ」
「マジで!? 超がんばる!」
琉子は押し入れとタンスをかき回す。服がたくさん飛んでくる。
「じゃあまずこれ! フツーな感じに、小花柄のワンピとジャケット!」
「あ、かわいい!」
「フワフワミニワンピにコルセット!」
「えー、可愛いー!」
「超パンク!」
「キャー! 痛い!」
「胸に『腐』って書かれたTシャツとパーカー!」
「可愛い!」
「超ゴシック!」
「キャー!」
「ロリータ!」
「キャー!」
「セレブに!」
「キャー!」
「ボーイッシュ!」
「キャー!」
「制服!」
「キャー!」
「――!」
「――!」
かれこれ3時間は経っただろうか。
「結局、どれもかわいくて選べないわ……」
「そ、そうね……ハァ、ハァ……」
二人は息を切らして床に突っ伏していた。床は見えないほど衣服で埋まっていた。
「禊に選んでもらお……」
「そうしましょ」
禊は山になった服を見て悩む。
「これとこのスカートを縫い合わせて、二段にして、白い半袖シャツに青いリボン付けて、カーディガンを着れば……」
今まで来ていた服と似たようなデザインの服になった。
「凄い! やっぱり禊のデザインした服が一番かわいい!」
ニーアは嬉しそうにクルクルと回ってスカートを翻す。
「可愛い! ママりんきゃわいい!!」
二人は大はしゃぎ。
「これからどこに行くの?」
「渋谷と、秋葉原と……」
「琉子も行っていいですか!?」
「来たい~?」
ニーアは仰ぐように聞く。
「うんうん!」
「いいよ!」
ニーアが歓迎するかのように両手を広げると、琉子が嬉しそうにニーアの腕に飛び込んだ。
「元気だなぁ……」
禊はさりげなく痛みだす胃をそっと撫でた。
渋谷に着いた。
「キャー! 見てこの服! 超かわいい!」
「このネイルの色見て!」
「可愛い!」
「可愛い!」
琉子とニーアは黄色い声を上げながらちょこまかと移動する。
「ちょ、待ってよ……荷物重い……」
禊はヒーヒー言いながら二人の後を追う。
「旦那様、大丈夫ですか?」
「僕が手伝いましょうか?」
「ありがとう、白銀姫、黒鉄丸。でも、外でお前らを使う訳にはいかないから……」
「申し訳ないデス……」
「忝ぬ……」
太刀斬鋏が背中のケースの中でしょんぼりする。
秋葉原にて。
「いらっしゃいませ、お嬢様、ご主人様!」
「ここがメイド喫茶!?」
「メイドさん可愛い!」
「はー、やっと休憩できる……」
三人は席に座る。メニューを開くなり、
「私これとこれ!」
「私も!」
ニーアと琉子が早速注文を決める。
オムライスがやってきて、
「さあ、ご一緒にどうですか?」
「やるやる!」
「私も!」
「萌え萌えキュンキュン!」
「おいしくなぁれ!」
禊は頬杖を突きながら二人を眺める。
「……なんか違う……」
不満そうに禊はじっと見ていた。
「メイドさんありがとー!」
「ばいばーい!」
「ごゆっくりどうぞ」
ニーアと琉子が嬉しそうに食事するのを尻目に、禊はそっと小町に渡された胃薬を飲んだ。
その後移動し、
「私このアニメ見た!」
「マジで!? ママりんスゴ!」
「え!? 俺まだそのアニメ見れてない」
「もう終わっちゃったよ。ネットで何度も見たよ、特にあのシーンが……!」
「ロミオ!」
「ジュリエット!」
「いや、それなんか違う……」
呆れつつも、二人の楽しげな表情を見て禊も思わず笑みがこぼれた。
ベンチに座って休憩する。
「私、飲み物買ってくるね」
「行ってらっしゃーい」
琉子はニーアと禊に手を振り、走っていく。
「……ありがとう」
道行く人々を見ながらニーアは言った。
「え?」
「今日はとっても楽しかった。琉子ちゃんともたくさんおしゃべりしたし、禊はあんまり出てこなかったけど……禊とお出かけもできたし」
ガチャガチャでゲットしたばかりのストラップをいじりながら、ニーアは恥ずかしげに話した。
「君の望んだことが出来て、嬉しいよ」
禊はニーアを見てそう微笑んだ。
「またそれー!」
ニーアが笑う。禊の顔を覗き込み、
「目の隈、こんなに濃くなってる」
「存在が出てきたころ辺りからだよ。別に大したことじゃ……」
ニーアは禊の顔を両手で包むと、目の隈を親指の腹で撫でる。
「全力で探してくれてありがと」
「俺の方こそ。待っててくれてありがとう」
禊は不器用に微笑む。ニーアは嬉しそうに微笑むとそっと顔を近づけた。一瞬ためらったが禊がそっと目をつぶると、ニーアが高速で禊の頭に何かをはめた。
「ママりーん、ただいま……」
「……どう?」
ニーアは帰って来た琉子に向かってブイサインをする。
琉子の顔が徐々に赤くなっていき、
「超かわいい!」
「でしょ! 猫耳禊!」
猫耳のついた禊の姿を携帯のカメラに収める。
「キャー!」
「禊ぎゃわ゛いい゛ぃ!!」
「あー……」
禊はとりあえず笑顔を向けるが、引きつっていて苦笑いにしか見えなかった。
夕日もほぼ沈み切った頃。
「琉子ちゃん、またね!」
「ママりん、バイバイ!」
琉子が禊とニーアに元気よく手を振る。
「琉子ちゃん、可愛いなぁ……」
「ニーア、顔」
禊が指さして笑うと、ニーアは頬を膨らませて怒った。
「今日の晩御飯どうしよっか」
ニーアが禊の顔を覗きながら訪ねると、
「じゃがいもがいいなぁ」
「またそれ!」
禊とニーアが笑う。
禊は右手に持っていた荷物を左手に持ち替えると、開いた手をそっとニーアの手に近づける。だがあと少しの所で手を離し、ズボンの尻ポケットに手を当てた。それを視界の隅で見てしまったニーアは仕方ないなと言うように笑みを溢すと、禊の手首にそっと指をかけた。そのまま指が下りていき、二人の指が絡められる。
白く細い柔らかい手を壊さないようにと、禊は手の力加減に目いっぱい気を付けた。
「ただいま!!」
ニーアが元気よく矛盾の家の玄関を開ける。
「疲れた……」
禊が玄関で倒れる。
「禊、大丈夫?」
嫌好が荷物を持った。
デスクワークする小町にそっと近づき、
「ねー小町聞いて!」
「あーうるさいなもう耳元で話しかけるな! 心臓に悪いだろう!」
驚きの余りカップを倒しそうになり、小町は急いでカップを持ち上げる。
「えー? 心臓止まっても大丈夫だよ」
小町は逃げるようにパソコンを持って二階に行った。
「帰ったら手洗えよ」
禊は台所で手を洗いながら夕食の準備に取り掛かる。
ニーアは嬉しそうにリビングの真ん中でスカートを翻してクルクル回る。禊はそれを見ながら微笑ましそうに笑う。
「ねー尊、何読んでるの?」
リビングのソファで本を読む尊の肩に顎を乗せる。
「え!? ど、ドイツの戦争学について……」
「へ~、勤勉なんだねぇ」
机の上の数冊の本に目が行く。
「これも読んでるの?」
ニーアは本を一つ手に取る。
「それは少し難しいから……」
「アラビア語か……」
ニーアは難なく尊に読み聞かせて見せた。
「何で読めるんだ……? 俺、辞書があっても読めないのに」
「ん? なんか読めた」
ニーアはヘラヘラ笑いながら尊の頭を撫でる。尊はまんざらでもなさそうな顔をする。
「尊、今晩は蟹料理な」
禊は真顔で冷凍庫から出した蟹を真っ二つに勢い良く切った。
「ちょっとやめてよ俺が蟹苦手なの知ってるでしょ!?」
尊は青い顔で怒った。
要が二階から降りてくる。
「小町の独り言がうるさいから避難してきた。兄さん、なんか面白いもの持ってる?」
「無いよ」
「あるよー!」
ニーアが嬉しそうに要に向かって手をあげる。
「え!? あっ、おかえり……」
「お姉さんが楽しいことしちゃうぞ~!」
ニーアは要に向かってダイブする。
バランスを崩し二人は倒れた。
「くぅ~! 鳥さんの髪は白くてサラサラふわふわで癖になる触り心地だぁ~」
要の頭を抱きしめて撫でまわす。
「うっわ、わ、あ、あ、な、何!? え?」
要は混乱するしかなかった。
要の白く柔らかい頬に吸い付く。
「キャー!」
「鳥モチおいしー」
じたばたと暴れるたびにニーアの胸が顔に当たる。
「ニーア、そのくらいにしてやれ。部屋着に着替えたらどうだ?」
「はーい」
解放された要はソファでぐったりしていた。
二階に上がるなり言葉を見つけ、
「そのちっぱいを揉んだら大きくなるでしゅよ~!」
「キャァァ何するんですの!?」
二階から暴れる音がした。
「なあ、禊。あの酔っ払いみたいなの何なんだ……」
「初めて会ったとき、俺は全部やられたからな」
尊の顔が青ざめる。
「髪の毛食べられたし、体中に歯形とかキスマーク付けられたし、首輪付けられて飼い犬ごっことかやったし、強制的に一緒にお風呂入ったし、体の隅から隅まで全部見られた」
「何その恐ろしい刑罰!!」
要が震えあがる。
「え、じゃあ禊の体内まで見られたってこと……」
嫌好が食いつく。
「まあそんなところだな」
禊は真顔で食器を並べながら言う。
「色んな拷問も試されたよ。マニアックなプレイとかね」
要、尊、嫌好が恐怖のあまり三人くっついて固まっていた。
「おかげで不感症になったよ。まあその前から不感症っぽかったけどね」
禊は力なく笑うが、三人には恐怖に震えるしかなかった。
「ニーアちゃんお願い、もう許してぇ!」
言葉は涙目で訴えた。
「言葉可愛いぞぉ!」
それでもニーアはやめなかった。
「ニーア! ご飯だぞ!」
禊が二階に向かって一声かけると、ニーアは高速で席に着いた。
男子三人はニーアに目を合わせられなかった。
「お腹すいたなぁ……夕飯は禊さんの料理が食べたいなぁ。夕飯までに帰れるのかなコレ……」
忍は泣きながらそうぼやき、暗い仕事部屋で一人仕事をしていた。




