↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春学校  作者: むにょこ
小学校編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/124

小学校編 34時間目 ―波乱の朝食と、突然の宣言―

〈蓮視点〉

朝から太志をからかって、ひとしきり騒いだあと。

俺たちは、一足先に起きていた帝耀と合流して、朝食を食べに向かった。

「おっはよ~! 帝耀!」

「おはよ、蓮。みんなも」

「おはよー!」

帝耀は、いつもどおりの笑顔で俺たちを迎えた。

(……相変わらず早起きだよね~)

聞けば、今日も朝四時には起きていたらしい。

俺だったら、絶対に無理。

だって、眠いじゃん?

「それにしても、腹減った~!」

華人が、大きく伸びをする。

「昨日いろいろありすぎて、腹減ったぜ」

「……だな……」

皇輝も、小さく頷いた。

……昨日。

その言葉を聞いて、俺はちらっと圭を見た。

圭は、太志と何か話している。

いつもと変わらない様子だ。

(……ま、今はいいか)

俺は、何も言わずに歩き続けた。

***

食堂に入ると、すみれさんが出迎えてくれた。

「あら、皆様。おはようございます」

「おはようございま~す!」

「ご朝食の準備、できておりますよ」

「すみれさん、おはよう」

帝耀が、にこっと笑った。

「今日もありがとう」

「いえいえ。どういたしまして」

すみれさんも、嬉しそうに微笑む。

「今日の朝ごはんは、な~にかな~?」

俺は、わくわくしながら食卓を覗き込んだ。

……そして。

「おお~!」

相変わらず、すっごい豪華!

綺麗に盛りつけられた料理が、ずらっと並んでいる。

朝食とは思えないくらい、品数も多い。

(……いや~、何回見てもすごいね)

帝耀を含む俺たち四人は、ここで何度か朝食を食べたことがある。

でも、太志、圭、るる、海斗の四人は初めてだ。

「……え?」

「これ、全部朝ごはん?」

「すご……」

「ホテルみたいだね」

四人とも、目を丸くしていた。

(……分かる分かる)

俺も最初は、めちゃくちゃ驚いたもん。

皇輝だって、最初はしばらく料理を眺めてたし。

「……豪華すぎる……」

「でしょ~?」

俺は、得意げに笑った。

……まあ、俺の家じゃないんだけどね!

***

しばらくすると、食堂の入口から声がした。

「おはよう、みんな」

(……あ)

帝耀のお父さんだ。

吉沢玲士さん。

相変わらず、朝から爽やかだな~。

「おはようございます!」

俺たちが挨拶すると、海斗とるるが、すかさず玲士さんの方を向いた。

「帝耀のお父さん」

海斗が、少し真剣な表情で言った。

「俺らまで、本当にありがとうございます」

「……ん?」

玲士さんが、首を傾げる。

「ここに住ませてもらえることです」

「ああ、そのことね」

「俺も……」

今度は、るるが口を開いた。

「おばあちゃんたちに、いつまでも面倒かけるの申し訳なくて……」

「…………」

「本当に、ありがとうございます」

二人は、深く頭を下げた。

玲士さんは、少し驚いたような顔をしたあと、優しく笑った。

「いやいや……」

そして、首を横に振る。

「お礼を言われるほどのことじゃないよ」

「……でも」

「みんなが安心して過ごせるなら、それで十分だから」

(……へえ)

さすが帝耀のお父さん。

こういうこと、さらっと言えちゃうんだよね。

……すると。

「……っ!!」

隣で、圭が勢いよく顔を上げた。

(……ん?)

「やっぱ玲士さん、かっけぇ……!!」

(……あはは)

出た。

いつもの圭だ。

「あ、いつもの圭だ」

俺は、思わず笑った。

「よかった」

「……復活……」

皇輝も、ぽつりと呟いた。

圭は、そんな俺たちの言葉なんて気にせず、玲士さんをきらきらした目で見つめている。

(……ふふ)

本当に、分かりやすいなぁ。

……でも。

(……圭)

俺は、少しだけ目を細めた。

昨日、あんなことがあったのに。

今は、何事もなかったみたいに笑っている。

(……元通り、ね)

確かに、そう見える。

でも。

(……本当に?)

何となくだけど。

俺には、圭が無理しているようにも見えた。

……いや。

ただ、俺が勝手にそう思っているだけかもしれない。

(……自分と重ねちゃってるのかな)

秘密が知られそうになったとき。

あるいは、知られてしまったとき。

俺は、いつも以上に明るく振る舞う。

わざとふざけて。

わざと笑って。

何も気にしていないみたいに。

(……そうしないとさ)

嫌われちゃう気がするんだよね。

みんなが、遠くへ行ってしまうような。

今までと同じようには、接してくれなくなるような。

(……ま、考えすぎかな)

俺は、いつもの笑顔を浮かべた。

今は、朝ごはんの時間だしね。

***

「おはようございます」

「おはようございます!」

(……ん?)

食堂の入口から、二人分の声が聞こえた。

振り返ると。

(……げ)

莉玖翔と燈李だった。

(……そうだった)

こいつらも住んでるんだった。

「あら、莉玖翔くんに燈李くん」

すみれさんが、にこやかに声をかけた。

「おはようございます。昨晩はゆっくり眠れましたか?」

「はい」

莉玖翔が、すっと表情を和らげた。

「おかげさまで。いつもありがとうございます」

「俺も、よく眠れました!」

燈李も、元気よく答える。

(…………)

俺は、莉玖翔を見た。

(……出たよ)

その笑顔。

俺、あいつのああいう顔が嫌いなんだよね。

誰にでも礼儀正しくて。

大人の前では、にこにこして。

でも、俺たちに向ける顔は全然違う。

(……何考えてんのか、分かんないんだよな)

何を考えているか分からない奴を、簡単に信用できるわけがない。

俺は、いつもどおり莉玖翔を睨みつけた。

……すると。

「そうだったぁぁぁ!!」

(……うわっ!?)

突然、太志が叫んだ。

「こいつらもいるんだったぁぁ!!」

(……ああ)

忘れてたんだ。

昨日、あんなに騒いでたのに。

(……大丈夫かな、この子)

この生活、耐えられる?

……と、思ったんだけど。

「……ううっ」

太志が、何やら覚悟を決めたように顔を上げた。

そして。

「……今日から、よろしく……」

「…………」

(……え?)

一瞬、食堂が静まり返った。

「た、太志っ!!!??」

「まじでどうしちったの~!?」

俺は、思わず身を乗り出した。

「頭でもぶつけたか!?」

華人まで、目を丸くしている。

「……この世の、終わりか……」

皇輝が、深刻そうに呟いた。

「太志がこんなこと言うなんて、それ以外の選択肢ある?」

圭も、信じられないという顔をしていた。

「大丈夫? 体調でも悪い?」

るるが、心配そうに尋ねる。

「さっきのことといい、なんかあったのか?」

海斗まで、首を傾げている。

(……いやいや)

みんな、言いすぎでしょ!

……まあ、俺もびっくりしたけど。

「うるさいな!!」

太志が、少し拗ねたように言った。

「俺だって、お世話になってるんだから!!」

「……へえ?」

「仲良くまではできないけど……」

太志は、ぷいっと顔を逸らした。

「……まあ、挨拶くらいは……」

(…………)

……おお。

太志なりに、頑張ったんだ。

俺は、少し感心した。

……けれど。

「はいはい、どうも」

莉玖翔が、そっけなく答えた。

「…………」

(……あ)

「っな!?」

太志が、勢いよく振り返った。

「俺、結構頑張ったのに!!」

「……だから?」

「やっぱ莉玖翔となんて無理!!!」

太志は、怒ってそっぽを向いてしまった。

(……あ~あ)

せっかく頑張ったのにね~。

……まあ。

(……莉玖翔も、もうちょっと言い方あるでしょ)

***

「あ、あの……!」

困ったような声が聞こえた。

「み、みんな落ち着いて……」

燈李だった。

(……お)

燈李くん、頑張ってるね~。

「ほらほら」

俺は、すかさずその話に乗った。

「燈李くん、困っちゃったぞ~?」

「……あっ!」

太志が、はっとした顔をした。

「うわぁぁ! 燈李、ごめんね!」

「えっ!? あ、いや……!」

燈李は、慌てて首を振った。

(……ふふ)

太志、燈李には素直なんだよね。

俺たちは莉玖翔のことは嫌いだけど、燈李のことはそんなに嫌いじゃない。

……というか。

むしろ、好きな方。

反応が素直で、可愛いし。

ついつい、からかいたくなっちゃうんだよね~。

「……おい」

すると。

莉玖翔が、口を挟んできた。

「お前ら、燈李困らせんなよ」

(……は?)

せっかく場が落ち着きかけてたのに。

何でそこで、わざわざ言うかなぁ。

しかも、ちょっとイラついてるみたいだし。

「……あん?」

華人が、鼻で笑った。

「お前に言われなくたって、分かってるよ」

「…………」

「てか、お前いちいち出てくんなよ」

「……右に同じ……」

皇輝も、うんざりしたように呟いた。

(……ほんとそれ)

莉玖翔って、いちいち邪魔くさいんだよね。

「……何だよ」

莉玖翔の表情が険しくなる。

(……あ~あ)

また始まる。

そう思ったとき。

「まあまあ、みんな落ち着いて」

るるが、慌てて間に入った。

「莉玖翔くんだって、燈李くんのこと心配してるんだから」

「…………」

(……るる)

「だから、そんな言い方しなくても……」

「るるは莉玖翔側の奴らにも優しくすんな!!」

太志が、突然声を上げた。

「……え?」

るるが、目を丸くした。

(……ああ)

太志。

それ、ちょっと分かるかも。

***

るるは、優しい。

本当に。

誰かが困っていたら、すぐに声をかける。

喧嘩が始まりそうになったら、間に入る。

相手が誰だろうと、できるだけ公平に接しようとする。

(……いい奴なんだよね)

俺は、るるのそういうところが嫌いじゃない。

……でも。

(……ちょっとだけさ)

嫌だなって思うこともある。

だって、るるは俺たちだけに優しいわけじゃないから。

莉玖翔にも。

燈李にも。

古田派の奴らにも。

同じように優しくする。

(……何だかなぁ)

もちろん、それが悪いことじゃないのは分かってる。

分かってるけど。

(……俺たちって、特別じゃないの?)

そんなふうに思ってしまう。

るるにとって、俺たちも莉玖翔たちも同じなのかなって。

(……やだなぁ、それ)

俺たちは、友達じゃん。

一緒に笑って、ふざけて、遊んで。

ずっと仲良くしてきたんだから。

(……俺たちのこと)

るるにとって、特別な存在だと思っていてほしい。

……まあ。

(……ちょっとした独占欲、かな)

自分でも、子供っぽいと思う。

でも、そう思っちゃうんだから仕方ない。

俺は、るるからそっと目を逸らした。

***

「ったく、うるさいなぁ!!!」

(……っ!?)

突然、鋭い声が響いた。

「朝から!!」

(……え?)

振り返ると、そこには女子たちがいた。

(……あれ)

いつからいたの?

全然気づかなかった。

先頭に立っていたのは、紗奈ちゃんだった。

腕を組み、明らかに怒っている。

「あんたらのごちゃごちゃで、朝ごはんが食べ始められないの!!」

「…………」

(……あ)

……ごもっともです。

「美香、お腹空きすぎて死にそう……」

美香ちゃんが、ぐったりした様子で呟いた。

「……あ」

愛理ちゃんが、少し顔を引きつらせた。

「一人称『美香』なんて、相当怒ってるわね……」

(……ん?)

「美香のこと、怒らせると怖いけど……いいの?」

「…………」

(……え)

その言い方。

冗談じゃないやつ?

俺は、そっと美香ちゃんを見た。

「…………」

美香ちゃんは、笑っていなかった。

(……あ、やば)

さっきまでの騒がしさが嘘みたいに、俺たちは静かになった。

(……こわっ)

女の子って、怒ると怖いんだね……。

***

「はーい、みんな!」

そのとき。

玲士さんの明るい声が響いた。

「朝ごはん食べるよー?」

「…………」

「はーやーくーしようね?」

(……あ)

玲士さんまで、ちょっと怒ってる?

……いや。

この人の場合、怒ってるのかふざけてるのか分かんないんだよね。

「……旦那様」

斎森さんが、呆れたように呟いた。

「大人気ない……」

「なっ、じいや!?」

玲士さんが、勢いよく振り返った。

「俺だってお腹すいてんの!」

「……そうでございますか」

「そうだよ!」

(……あはは)

相変わらずだなぁ。

吉沢ホールディングスの社長なのに。

こういうところ、帝耀にそっくり。

……いや。

帝耀が父親に似たのかな?

***

「そういえば、旦那様」

突然、花さんが口を開いた。

「……ん?」

玲士さんが、そちらを見る。

「いつまで、こちらにいらっしゃるおつもりですか?」

「…………」

(……あれ?)

玲士さんが、少し驚いたような顔をした。

まるで。

(……何でそんなこと聞くの?)

って思ってるみたい。

「……え?」

玲士さんは、少し寂しそうな顔を作った。

「花ちゃん、俺のこと追い出したいの……?」

「ええっ!?」

花さんが、慌てて首を振った。

「滅相もございませんっ!!」

「……ほんと?」

「もちろんです!」

花さんは、必死に説明した。

「ただ、旦那様が皆様と朝ごはんを召し上がるなんて、珍しいと思いまして……!」

「……ああ」

玲士さんは、ほっとしたように笑った。

「なんだ、そういうことか」

「はい……!」

「俺ね」

玲士さんは、何でもないことのように言った。

「しばらく、こっちにいることにしたから」

「…………」

(……え?)

一瞬。

食堂が、静まり返った。

「……は?」

「……え?」

「……父さん?」

帝耀まで、驚いたように玲士さんを見ている。

(……おお)

どうやら、誰も聞いてなかったらしい。

(……しばらく?)

玲士さんって、普段は東京の本邸にいるんじゃなかったっけ?

仕事も忙しいはずなのに。

(……何で急に?)

俺は、玲士さんの顔を見た。

でも、玲士さんはいつもどおり笑っている。

何を考えているのか、全然分からない。

「まあ、この話はいいから」

玲士さんは、あっさり話を切り上げた。

「早く食べるよ」

「……え?」

「ほら、冷めちゃうでしょ?」

そう言って、何事もなかったかのように食事を始めた。

(……いやいや)

ちょっと待って。

(……今の、結構大事な話じゃない?)

帝耀も、何か聞きたそうにしていた。

でも、玲士さんはそれ以上何も言わない。

結局。

俺たちは、詳しい理由を聞くこともできないまま、朝食を食べ始めた。

(……ふ~ん)

俺は、ちらっと玲士さんを見た。

楽しそうに食事をしている。

いつもどおりの、優しい笑顔。

……でも。

(……何だろうね)

この人。

やっぱり、ただのお人好しじゃない気がする。

昨日の圭のこと。

俺たちをここに住まわせたこと。

そして、突然の滞在宣言。

(……何か、考えてるのかな)

もちろん、俺には分からない。

……ただ。

(……ちょっと気になるよね)

俺は、そんなことを考えながら、目の前の朝食に手を伸ばした。

玲士さんは、何事もなかったかのように笑っていた。

〈34時間目・終〉

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。