↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春学校  作者: むにょこ
小学校編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/124

小学校編 33時間目 ―朝から大騒ぎ!太志の受難―

〈笹川太志視点〉

(……眠れねえ)

俺は、暗い天井を見つめながら、心の中で呟いた。

昨日のことが、どうしても頭から離れなかった。

圭が突然倒れたこと。

そのあと、圭の体にあった痣を見てしまったこと。

そして、玲士さんが圭を家に帰すわけにはいかないと言ったこと。

(……圭)

俺は、隣で眠っている圭に目を向けた。

……いや。

本当に眠っているのかは分からない。

(……大丈夫かな)

昨日、圭は何度も謝っていた。

別に、圭が悪いことをしたわけじゃないのに。

(……なんで謝るんだよ)

そう思った。

でも、何て声をかければいいのか分からなかった。

俺は、圭の友達だ。

それなのに。

(……何もできなかった)

いつも一緒にいるのに、何も気づかなかった。

……いや。

(……気づけなかった、か)

俺は、小さくため息をついた。

そんなことを考えているうちに、夜はどんどん更けていった。

結局、一睡もできないまま。

気づけば、朝になっていた。

***

(……まだ誰も起きてないな)

俺は、そっと周りを見回した。

みんな、静かに眠っている。

(……起きようかな)

そう思ったけど、やめた。

今起きたら、物音で誰かを起こしてしまうかもしれない。

(……迷惑になるよな)

仕方ない。

もう少し、寝たふりでもしていよう。

俺は、目を閉じた。

すると。

……かすかに、布団が動く音がした。

(……ん?)

薄く目を開ける。

起き上がったのは、帝耀だった。

(……帝耀?)

帝耀は、周りを起こさないように静かに身支度を整えている。

そして、足音も立てずに部屋を出ていった。

(……すげえな)

時計を見る。

針は、午前四時を指していた。

(……四時!?)

早っ!!

(……あいつ、こんな時間から起きてんのかよ)

まだ外も薄暗いのに。

俺なんか、普段なら夢の中だぞ。

(……早起きだなぁ)

そう思いながら、俺はもう一度目を閉じた。

***

それから、しばらく経った頃。

また、誰かが動く気配がした。

(……ん?)

今度は海斗だった。

時計を見ると、午前六時。

(……もう六時か)

海斗は、隣で眠っているるるに近づいた。

そして、そっと肩を揺らす。

「……るる」

「……ん」

「朝だよ」

「……あ、海斗」

るるは、すぐに体を起こした。

「おはよう」

「おはよう」

(……ああ、そういえば)

昨日、るるが海斗に起こしてほしいって頼んでたっけ。

二人は、小さな声で話しながら着替え始めた。

(……俺も起きようかな)

そう思った、そのとき。

「……太志」

(……ん?)

突然、背後から声がした。

「何やってんの?」

「……うわっ!?」

俺は、驚いて振り返った。

そこには。

「……圭!?」

圭が、目を開けていた。

(……いつから起きてたんだ!?)

俺が驚いていると、圭は小さく笑った。

「俺も、寝れなかったんだ」

「…………」

(……そっか)

圭も、眠れなかったのか。

……まあ、そうだよな。

昨日、あんなことがあったんだから。

俺は、何か言おうとした。

でも、その前に。

圭が、声を潜めて言った。

「……それよりさ」

「……ん?」

「太志」

圭は、俺の顔をじっと見た。

そして。

「海斗とるるの着替えなんか見て、どうするつもりだったの?」

「…………は?」

(……え?)

(……はぁぁ!?)

「ち、違っ……!」

俺は、思わず顔が熱くなるのを感じた。

「俺は別に、そんなつもりじゃ……!」

すると。

圭が、ふっと笑った。

「……ああ、なるほど」

「……何が!?」

「太志も、そういうお年頃か」

「……なっ!?」

「なら、しょうがないね」

「な!?」

(……何がしょうがないんだよ!!)

俺は、思わず声を上げてしまった。

……その瞬間。

「……ん?」

海斗が、こちらを振り返った。

「おはよう。朝から元気だね」

(……あ)

バレた。

いや、別に隠れてたわけじゃないけど!!

「二人とも」

るるも、不思議そうに首を傾げた。

「起きてるなら、言ってくれればよかったのに」

「……あ、いや」

俺が答えようとすると。

「実はさ」

圭が、いたずらっぽく笑った。

(……おい)

その顔。

嫌な予感しかしない。

「太志が、二人の着替えてるところジロジロ見てたんだ」

「ち、違っ!!!」

(……お前ぇぇぇ!!)

何てこと言うんだよ!!

そんな言い方したら、あらぬ誤解が生まれるだろ!!

「……え?」

るるが、目を丸くした。

「……太志?」

「違うって!!」

俺は、慌てて首を振った。

「俺、ただ起きるタイミングを考えてただけだから!!」

「……へえ」

圭が、にやにやしている。

(……こいつ!!)

さっきまで心配してた俺の気持ちを返せ!!

……いや、元気そうなのは嬉しいけど!!

***

「太志くん」

突然、別の声が聞こえた。

「気持ちは分かるけどさ~」

(……ん?)

振り返ると、蓮が布団から顔を出していた。

(……お前も起きてたのかよ!!)

蓮は、わざとらしくため息をついた。

「こういうところで、そういうのはね~?」

「……は?」

「俺だって我慢してるのに」

「…………」

(……おい)

お前が言うと、冗談に聞こえねえんだよ!!

「だから違うって!!」

俺が反論すると、蓮はくすっと笑った。

「……あはは」

そして、急に声の調子を落とした。

「ごめんごめん。冗談」

「……ったく」

「……でもさ」

蓮は、少しだけ目を伏せた。

「みんなも嫌だよね」

「……え?」

「こんな奴と一緒に暮らすなんて」

「…………」

(……は?)

さっきまで、あんなにふざけていたのに。

急に、しおらしくなった。

(……なんだよ)

俺は、思わず身を乗り出した。

「そんなことない!」

「……え?」

「別に俺ら、そういうの関係ないから!!」

俺は、慌てて言った。

「蓮がどうとか、そんなの関係ねえよ!」

「…………」

蓮が、俺をじっと見た。

(……あれ?)

何だ、その顔。

……すると。

「……ぷっ」

「……ん?」

「ぎゃはははは!!」

「…………は?」

蓮が、突然爆笑し始めた。

「太志!!」

「……おい」

「太志は本っ当に素直だよね~!」

「……はぁ!?」

「素直っていうか、チョロいっていうか……!」

(……っ!!)

「こんなんじゃ将来、いろんな人に騙されちゃうぞ~??」

「…………」

(……こいつ)

(……こいつぅぅぅ!!)

心配した俺が馬鹿だった!!

蓮は、こういう奴だ。

分かってる。

こいつが、わざとふざけた態度を取っていることくらい。

俺だって、知っている。

……でも!!

今はそんなこと、どうでもいい!!

なぜなら。

(……腹立つぅぅぅ!!)

猛烈に腹が立っているからだ!!

俺は、勢いよく飛び起きた。

「おいっ!!」

「……ん?」

「俺は別に、チョロくなんてないからな!!」

「……あはは!」

蓮は、ますます楽しそうに笑った。

(……くっそぉぉ!!)

***

「……朝っぱらからうるさいなぁ、おい」

(……ん?)

眠そうな声が聞こえた。

華人だった。

華人は、大きなあくびをしながら体を起こした。

「……ふぁぁ」

「……あ」

(……しまった)

起こしちゃったか。

……と思った、その瞬間。

「あ! 華人!」

蓮が、ぱっと顔を輝かせた。

「聞いて聞いて~!」

(……おい)

嫌な予感しかしない。

「太志がね!」

「……ん?」

「海斗とるるの着替えをジロジロ見ててさ~!」

「違うって言ってんだろ!!」

俺の抗議なんて、完全に無視だ。

蓮は、さっきの出来事を面白おかしく華人に話し始めた。

すると。

「……まじかよ!」

華人が、目を丸くした。

そして。

「ぎゃはははは!!」

(……お前もか!!)

「太志きゅんは可愛いでちゅねー!」

「……はぁ!?」

「そんなに気になっちゃったんでちゅか~?」

「だから違うって!!」

(……何なんだよ!!)

さっきまで「うるさい」とか言ってたくせに!!

今、一番うるさいのお前じゃねえか!!

「……あははは!!」

「ぎゃははは!!」

蓮と華人は、二人で大笑いしている。

(……もう嫌だ)

俺は、頭を抱えた。

すると。

「……なんの騒ぎだ……」

(……あ)

今度は、皇輝が起きてしまった。

皇輝は、眠そうに目を擦りながら、俺たちを見回した。

「……朝から騒がしいな」

「……あ、皇輝!」

蓮が、勢いよく振り返った。

「聞いて聞いて!」

「……おい、やめろ!!」

「太志がさ~!」

華人まで、嬉しそうに話し始めた。

「実はな!」

「お前らぁぁぁ!!」

俺は、必死に止めようとした。

……けれど。

二人は、あっという間に皇輝へ説明してしまった。

「…………」

皇輝が、黙り込む。

(……頼む)

頼むから。

お前だけは、まともな反応をしてくれ。

皇輝は、ゆっくり俺を見た。

そして。

「……そうか」

「…………」

「……太志が……」

(……え?)

皇輝は、なぜか俺を憐れむような目で見つめていた。

「…………」

(……おい)

何だよ、その目。

「……皇輝?」

「……いや」

皇輝は、小さく首を振った。

「……人には、いろいろあるからな……」

「違うんだってぇぇぇ!!」

(……もう!!)

頼むから、そんな目で見ないでくれぇぇぇ!!

***

結局。

朝六時過ぎだというのに、部屋は大騒ぎになっていた。

蓮と華人は笑い続けているし。

皇輝は、なぜか俺を憐れんでいるし。

海斗は、呆れたようにため息をついている。

るるは、困ったように笑っていた。

そして。

「……ふふっ」

(……ん?)

圭が、小さく笑っていた。

……いや。

小さく、なんてもんじゃない。

「……あはは!」

圭は、とうとう声を出して笑い始めた。

(……圭)

昨日、あんなことがあったのに。

今は、いつもみたいに笑っている。

(……そっか)

俺は、少しだけ肩の力を抜いた。

……まあ。

(……だからって)

俺がからかわれていい理由にはならないけどな!!

「太志~!」

蓮が、にやにやしながら呼んできた。

「……何だよ!」

「今度から着替えるとき、声かけようか~?」

「いらねえよ!!」

また、部屋中に笑い声が響いた。

(……くっそぉぉ!!)

俺の新生活、初日の朝から散々すぎるだろぉぉぉ!!

〈33時間目・終〉

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。