33話―目と目が合ったらバトルはもう常識らしい
どうしよっかな。
いや、どうするかなど決まっている。まずは誤解を解いてもらわないと。
というわけでまず、目の前にいるルーンにアイコンタクトした。
(ルーン!お前から言ってくれ!事の張本人はお前だろ?ガンバ!)
俺の意思を受け取ったルーンは、アタフタとしてから、副団長に念を送った。お前が弁明するんじゃないんかい。
ルーンと俺の視線に気付いた副団長は、「どうしたものか」と悩むようにした後、咳払いをして団長にコンタクトを試みた。
「ゴ、ゴホン。その、団長。この方の前に、その……」
「すまないが、まずはその冒険者の素性から説明してくれ。忍び込んだのなら、ギルドに報告させてもらう」
この人ホントおもしろいな。
「……では、説明しましょう」
「? 知り合いなのか?」
「はい。落ち着いて聞いてください──手紙の話、嘘ではありません」
それを聞いても、団長は要領を得てないような感じだった。
そこに副団長は付け加える。
「できました。ルーン殿に。仲間」
「…………?」
やっぱりピンときてない。
そして、ここにきてやっとルーンからも助けが入った。
「えっとね……。わ、私の仲間になりました!レイです!」
「……………………ハアァ!!?」
あ、やっと理解できたっぽい。
数秒挙動不審になった後、副団長や騎士たちに宥められて、平静を取り戻した。
団長は、ひどく疲れたような顔をして、
「……と、とりあえず、事の顛末を、詳細に説明してくれ」
「はい……」
そう言った団長の耳は、熱せられた鉄のように真っ赤だった。
やっぱこの人すごくおもしろいわ。
♢
宿舎の談話室で、副団長が大まかな流れを説明してくれた。
それを聞いた団長も、多少驚きはしたものの、最後まで取り乱さずにいてくれた。
「はぁ……大体は理解した。女神様がルーンに天啓を与えるほどか」
「そう、そこ。そこが私もよく分かんないんだよね。何でピンポイントでレイなんだろ」
「これだけの逸材なのですから、当然といえば当然でしょうか」
「やめてくれ恥ずかしい」
女神が俺とルーンを引き合わせたのは圧倒的私情だと思うが、この人たちのために黙っておこう。
いきなり団長が椅子から立ち上がって、俺の顔を凝視してきた。
「な、なんでしょうか……?」
「……本当に」
「?」
「本当に倒したのか?ルーンを。まだ勇者としての経験が浅いとはいえ、そう簡単に勝てるほどルーンを甘く鍛えていない」
「スキル使えば勝ててたし。最初から冒険者相手に本気出すのも可哀想だな、って思って手加減してただけだし」
ムスッちした顔のルーンが、控えめに俺が勝ったことを肯定した。
その様子に苦笑しながら、副団長も付け加える。
「実際にこの目で見ておりませんが、レイ殿の実力は本物ですよ。団長なら、私より正確に計れるでしょう?」
「それはそうだが……やはり信じがたい」
「それと、騎士団からの選出は、もうレイ殿で構いませんか?」
「私がなんと言おうと、取り下げるつもりはないだろう?」
「ハハハッ、流石団長ですね」
「ちょっ、いい?」
歓談に水差すようで悪いのだが。
いきなり意味が分からないワードが出てきた。
「選出って何?」
「ああ。前に言ったと思いますが、一ヶ月後に王国魔法剣大会があるのは、レイ殿も覚えているでしょう?」
「…………あぁ!うん、覚えてる」
「忘れてたでしょ。私もだけど」
「……そ、その候補を騎士団から一枠選出できるのです」
「そこに俺が入ると。よく通ったな」
「私が無理を言ってそうしたんだ。騎士から選出することはできないという条件で。もうすぐ決める予定だったんだ」
「どちらにせよ、適切な冒険者を選ばないといけない所に、レイ殿が来たのですから。万々歳ですよ」
そういうことはちゃんと言っとけと。
そこで団長が腕を組んでため息をつく。鎧着てなかったら、持ち上がったんだろうな。胸が。
「……異論はない。実力も素養もある」
「やったー!」
「──が」
団長の言葉が一度切れる。
「一度、私と戦え。最終的にはそこで決める」
「え!?」
「ほほう」
「もちろん、勝てとは言わん。あくまで私が満足するかどうかだ。いいな?ナナセ」
「名前でいいよ」
久しぶりに名字で呼ばれた。
団長の提案に特に驚くことはなく、俺が抱いたのはそんなくだらない感想だった。
聖騎士様と勝負。面白い。俺の戦闘狂にも少し拍車がかかってきたな。
「じゃ、行こうか。死なないでくれよ。騎士団長様」
「いいな。そのくらいの気概がなければ、こちらもつまらない」
そうして対面した俺たちの顔には、どちらも好戦的な笑みが浮かんでいた。
♢
外にある模擬戦用の場所に来た。
大きさはギルドの闘技場とほぼ同じ。やりやすくて良い。
「念のため、回復魔法を使える者を控えておくから、遠慮せずかかってくると良い」
「お互いにな」
「無論だ」
回復魔法は得意分野なんで、全く問題なし。
致命傷は避けていくつもりだが、手加減して勝てる相手と思っていない。
ちょっとした重傷は治せるので、そこら辺は我慢してもらおう。
場外から見守っているルーンたちは、かなり心配してるようだが。
「だ、大丈夫かな……」
「心配はいらないでしょう。レイ殿は勝つ必要ないのですし、団長が大人げなくならないのを祈る限りです」
「むしろ、そこを心配してるんだけど」
副団長は結構達観している。
ま、楽しませるつもりで頑張ろう。
「ルールは冒険者流にしておこう。準備はいいな?レイ」
「バッチグーだ。言っとくけど、やるからには勝つからな」
「……その自信、蛮勇ではないと祈るぞ」
お互い距離を空け、姿勢を取る。
団長の型は、諸手の中段構え。典型的な正統的な剣術。
冒険者の中ではまず見ない型だが、騎士ではこっちが普通だ。一挙一動のが大きく、重い。数ではなく一発でキメてくるタイプだ。
対して俺は……居合いの構え。
そんでもって最初っから《絶剣》も発動。こっちも一発でキメる。今回の俺は、最初からクライマックスだ。
(俺は学習した。強さは分からないけど、とりあえず強いことが分かってる相手には速攻すればいい、と)
団長は確実にスコープより強い。
ならば、速攻あるのみと。我ながら頭良い。
俺の本気居合い切りは音速超えだと最近気付いた。ゲッコウガでも○逸でもかかってこい。
騎士の一人が始めの合図だけしてくれる。お互い、反則しないと分かっているから。
いつも通り、動体視力を強化する。
「───始め!」
手が下げられると同時に、踏み込む。
風と同化したような感覚と同時に、刀を抜く。
全て十分の一秒にも満たない。かわせるはずがない。
…………そんな憶測をするとか、俺は団長を舐めすぎていたらしい。
砂埃が晴れた時、振り抜かれた俺の刀の目の前にいたのは、
「……はは」
「速いな。重心も低く、威力もある。一体どこの流派なのやら」
そう冷静に分析して、評価までしてのける団長がいた。
(受けるかよ……今のを)
団長の大剣は、確かに俺の刀と交差していた。
何の小細工もなく、ただ真正面から音速を超える攻撃を受け止めた。
思わず乾いた笑いが出た。ルーンでも今の一撃は避けるのが精一杯だろうに。流石その勇者の師匠。予想なんてするだけ無駄か。
「さあ、続きだ。まさかこれで終わりではないだろう?」
「当ったり前だ。手数には、自信あるんでねっ!」
刀を寝かせ、滑らせる。そうすると腕は上を向くが、無理やり軌道を逆転させて、袈裟斬りを放つ。
しかし、その攻撃力に偏った斬撃さえ、いとも容易く受け止められる。
それから数手、方向やパターンを変えながら攻撃を繰り返したが、団長に届く剣はなかった。
「あんたも大概バケモンだな」
「お前こそ、な。どこの剣だか全く分からん。一撃かと思えば、連続剣だったり……ただ、行儀が良くないのは分かるな」
「冒険者なんでね、それは多めに見てくれ。それと……もっと行儀は悪くなるぞ」
ジャンプで距離を取り、体勢を整える。
そして、『飛翔』を発動する。
「ふっ!」
剣がぶつかり火花が散るが、先ほどのように交差はしていない。
これも最初から受けられると分かっていたので、当てる剣ではない。これは牽制。可能な限り速度を上げ、隙を見つけてそこをぶち抜く。
この時、俺は魔法の維持と方向転換だけに集中する。剣は全て《絶剣》任せだ。こうでもしないと団長は当てさせてくれない。
(受けてみろよ!六連どころか何十連でもしてやるからな!)
時には星形、時には六芒星、時には立体と、縦横無尽に動き回る。
それでも、団長は最低限の動きではじく。死角からの攻撃も、まるで後ろにも目があるかのように防がれる。
それに少しイラッとしたから、スピードをもう一段階上げる。これで居合いとほぼ同じ速度。俺の魔力と精神力がゴリゴリ削られるが、もうそんなことは些細な問題だ。
──楽しくなってきた。ルーンと戦った時と同じくらい。
「『纏風』」
だいぶ前から作っていた魔法を使う。
『纏風』は『纏炎』と同じく、剣に風を纏わせる。高速回転するつむじ風は、切れ味が増し、刀を振ることもなく当たり、実体がないというスーパー効果。応用は少ないが、単体で十分な威力だ。
難点は、つむじ風の影響でスピードが格段に落ちること。進行方向ではないため、剣がバカみたいに重くなる。
だが、その向かい風を追い風で相殺してしまえばデメリットは消える。
「!」
通り過ぎた後、団長の頬が薄く切れた。
「ようやく当たった。感想はどうだ?」
「……一撃を受けたのは、ルーンに続き二人目だな。レイ、合格だ」
「…………」
「やった!副団長!レイ合格だってさ!」
「……はあ、全くあの人は……」
「?」
副団長は分かってるらしい。
それには俺も分かっている。
──ようやく面白くなってきた、と。
そう目が語っているこの人が、ここで終わるとか。
「──ここからは真剣勝負だ。レイ、私に勝ってみろ」
「最初からそのつもりだっての」
あり得ないだろ。
勝負は、今から始まったんだから。
「一回ここで俺がお願いしてみたら良いんじゃないか、と作者が言ったんで渋々来た。正直めんどくさい。
はあ、えーブクマと感想、よろしく頼む!感想とかもらったら作者も俺たちも嬉しいから。あと、次回はもっと早く投稿させるから、待っててくれ」
「これ、なんか意味あんのかね……?」




