27話―奴隷商突撃大作戦(?)
今は『飛翔』で空を飛んでいる。もちろん『光学迷彩』も発動して。
やっぱりこの魔法のセットは役に立つ。日常でも戦闘でも。
「どこに向かってるの?もう行く?」
途中でテルがそんなことを聞いてきた。
頑なに敬語を使おうとしないな。少しは慕ってくれてもいいじゃないか。可愛げないな。
「そんなわけないだろ。一旦うちの宿に行く。そんでお前は置いていく」
「い、いや!私も行く!」
「気持ちは分かるけどね………」
ルーンの言う通り、テルの気持ちも分かる。
自分の手で姉を助けたいというのも。
だがしかし、
「お前を守りながら戦う技術は、俺もルーンも残念ながら持っていないんだ。テルは黙って留守番だ」
「でも………」
「お前が心配せずとも、必ず連れて帰るから。なっ?」
「………うん。分かった」
渋々とだが了承してくれた。
こう言ったんだ。何があってもこいつの姉を連れてこないといけないな。
ほどなくして宿についた。ここには奴隷商が少ない。というか騎士団が宿泊してる宿に近づけばどうなるか、など奴隷商が一番知っている。
ここならテルを置いていっても問題ない。一応騎士に何人か護衛してもらうつもりだし。
「ただいま!大義名分、ちゃんと得てきたよ!」
「レイ殿!他の客もいるのですから少しお静かに!話は部屋で聞きますから!」
「ん?ああ、そうだな」
他の金持ち旅行客がこちらに懐疑の視線を向けている。
部屋の方がいいな。他人に聞かせられる話でもないし。
部屋に戻り、盗み聞きしてる奴がいないか確認してから今日の経緯を話した。
「なるほど。その子どもが依頼人というわけですか」
「そう。依頼人がいるなら遠慮なく突撃していいだろ?こうして地図もあるし」
「………それは構いません。その、テルといいましたか?その子どもを置いていくと言うのですから尚更。ですが、私も同行しましょう」
「お、副団長もウズウズしてた感じか?」
俺がそう聞くと、副団長は自嘲ぎみに笑ってから肯定した。
「そうでない、と言えば嘘になります。私とて、騎士の端くれ。王国の法に反する輩を放っておく訳にはいきませんから」
「本当の理由はそれじゃない、でしょ?」
今度はルーンがイタズラっぽく聞いた。
それにまた苦笑しながら、副団長は答えた。
「ええ。私はルーン殿の、あとレイ殿の保護者です。二人だけで行かすわけないでしょう」
「そこ、俺もちゃんと入ってるんだな」
「当然でしょう。レイ殿はルーン殿の仲間なのですから」
「だってさ、レイ!」
「嬉しそうだな………」
実際、ルーンだけじゃなく副団長も嬉しいのだろう。ルーンに対等な仲間ができて。
「1人娘が双子の姉妹になった」、そういう感じなのかもしれない。
………双子だとすると、姉はどっちだ?やっぱ俺だよな。
「副団長、騎士団で手が空いてる人をテルの護衛に付けてくれないか。襲いにくるとは思えないけど、念のためにさ」
「了解しました。ちょうど1人仕事が終わったところです」
「ありがとさん。んじゃテル、行ってくる。安心して帰りを待ってろ」
「私たち結構強いからね!パパーッとやってくるよ!」
俺たちの言葉を頼もしく思ってくれたのか、テルは張り詰めることなく笑顔で送ってくれた。
「うん!お願い!」
「ああ、任せとけ!」
さて、乗り込むとするか。待ってろよ奴隷商。
休日なのに働きものな、騎士団副団長と勇者と冒険者が、お前らをぶっ潰しに行ってやるから。
♢
スラム街まで来た。
ここまでは特に何の障害もなかった。『飛翔』で来たから当然だ。
ムルクスのスラム街は地球のものとさほど変わらない。地球のを見たことないから分からないけど。
今は三人全員がフードを被っている。バレないように。
「想像以上ににヤバいね。空気がすごく淀んでる」
「闇を隠すなら闇の中、ということなのでしょう」
「ここに自分から入るのなんて、裏社会の人間か、バカかドMだけだろうな」
各々感想を抱きながら道を歩いていく。
路傍には息をしているのかも分からないほど、じっとしている人とゴミが並んでいる。
血の臭い、死臭、その他嫌な臭いが立ち込めている。普通ならあり得ない、というか住めないような環境だ。
奴隷商以外ですれ違う人も、目を合わせないようにするか、殺気を飛ばすかしかしない。因縁を吹っ掛けてこないのが不思議なくらいだ。
………しかし、おかしい。
「………おかしいですな」
「やっぱりそうか」
「え?どういうこと?」
副団長はすでに気付いていたようだ。
ルーンだけ首をかしげている。
「ここは奴隷商のホーム。根城本体じゃなくとも十分危険なんだ。なのに、それっぽい奴が1人もいない」
「たしかに………」
「おそらくですが………誘っているのでは?」
「多分そうだと思う」
ため息を吐きながら首を縦に振った。
とても残念だけど、どうやら不意討ちすることはできないらしい。
「多分、テルと話してるところを見られてた。聞こえずとも、少し心得がある奴なら読唇術も使える。俺が感知できないくらい遠い、でも口の動きが見える場所から見られてたんだと思う」
俺は火山で人狼の襲撃を受けた時から常に『敵意感知』で警戒している。
無意識下なら、半径20mくらい。それより離れたらプツリと切れる。
そのくらいなら望遠鏡を使わなくても、目に魔力を流せば口の動きを確認できる。
………ただ、それは俺ら基準の話だ。
「普通は目に魔力を込めても、10mがいいところだ。ルーンでも15mくらい。てことはルーンより魔力操作で勝ってるってことだ。油断できなくなったな」
「わ、私もちょっと集中すればできるよ!ちょっとだけ!」
「それを数分やってのけてるからすごいんだよ。俺以下と言っても決して油断しちゃいけない」
「レイ殿以下なら、レイ殿は心配する必要ないのでは?」
………たしかに。
まあ、ルーンと副団長に教えられたしそれでよしとしよう。
今のうちに作戦を決めておくとしよう。
「来ることがバレている。ついでに動向もバレている。なら作戦はどうするか」
「裏手から回りますか………しかし、相手は数が多い。どこから攻めようと敵は多いでしょう」
「なら、レイに上から行ってもらう?さすがに空から来ると思わないでしょ。そこに注意が引いてる隙に侵入とか」
「はい、二人とも不正解」
「「え?」」
副団長が言ったのもその通り。奴隷商は王国全体に広がっている組織。ムルクスには最も集まっている。
来るのが知れているなら、どこの入り口にもまんべんなく人員を割くのが常識だ。
ルーンが言う手段も悪くはない。けど、それでも人員を半分ずつ送るくらいだ。二人でもキツイだろうし、何より俺が一番つらい。
「俺が考えた作戦は単純明快。子どもでも思い付く」
「………なんか嫌な予感がするんだけど………」
「二人とも、俺が言う作戦で異議を言わないでくれよ?今まで失敗したことはないし、保険も用意してあるからさ!」
「………よろしいですが………」
「はい、言質はとった」
フフフフ………。奴隷商、運が悪かったな。襲撃するのが普通の奴だと思うなよ。
いきなり襲われる恐怖、お前らの脳に叩き込んでやろう。
♢
───奴隷商本部前。
一見普通の、少し大きめの建物に見えるが、その建物は地下にまで続いている。確認できるだけで地下7階ほど。
奴隷商の人間、オークション会場、奴隷がいる場所も全てここに詰まっている。深くなるのは当然と言えよう。
いつもはひっそりとした建物、そこの正面入り口には、いつぶりかと思うほどの人間が集まっている。その全員が軽く武装している。
「ここまで厳重にする必要はないのでは?相手はたかが二人、それも女でしょう」
「我々の目をくぐり抜け、スコープの監視すらろくに情報が入らなかった。かなりの手練れだ」
ほう、結構買ってくれているようだ。
にしてもすごい数だな。よくこんだけ集めたもんだ。
………さて、ここで問題。俺たちは今、どこにいるでしょうか?
正解は───ここです。
「『大爆発』」
「へ?」
───入り口の人が全員吹き飛んだ。
至近距離で放てばそりゃそうなるわな。
でも安心するといい。風メインだから当たり所が悪くないかぎり死なないから。
………俺たちはずっと入り口にいた。
『光学迷彩』というチート魔法を使って。開発しといてなんだが、やはりこれは反則すぎる。
そして入り口まで難なく到着し、魔法をぶっぱなすタイミングを見計らってたわけだ。
「奴隷商ども。正面からは来ないと思った?残念だったな!裏なんてかくわけないじゃん!」
「………バカだろ………………」
どこかからか細い罵倒が聞こえた気がしたので、もう一回爆発させといた。
そしてズカズカと中に入り、大声で叫んでやった。
「ご用改めだ!武器全部投げて投降しろ!ついでに、ご用改めってどういう意味だ!教えろ!」
「自分で言ったんじゃん!というかこれ何!?作戦?作戦じゃないでしょこれ!ただの正面突撃じゃん!バカの所業じゃん!」
ルーンがたまらずツッコんできた。こいつがここまでツッコむのは初めてだな。
「お前までバカって言うなよ。一回使ってみたかったんだよ」
「それはもういいから!何でこんなバカな作戦にしたの!?」
「だからバカ言うなよ。これはれっきとした作戦だ。いちいち隠れながら行くなんてめんどいだろ?全部まとめて潰した方が楽だし」
「全部潰す方が圧倒的にめんどくさいよ!レイさっき子どもでも思い付くって言ったよね!違うよ、子どもしか思い付かない策だよ!思考放棄してるよ!」
「お、そうこう言ってるうちにゾロゾロ来たぞ」
「あーもう!あーもう!」
ルーンが地団駄踏みながらなんか唸ってる。
元々これは奴隷商を潰す依頼だ。なら余すことなく、徹底的に全て潰してやろうと思ってこうしたんだ。
「大丈夫だって。この三人なら、ちょっと強い奴ら百人くらい恐れることない!全部蹴散らすぞー!」
「………副団長、レイ壊れたよ。どうしようこれ」
「テンションが上がっているのでしょう。実際、レイ殿の策で失敗したことはありません。従いましょう」
「副団長までレイに毒されてきてない?」
副団長も気合い十分。
中は割と広い空間。乱闘くらいはできる。
そして百人ちょいVS三人。
面白いじゃないか。
「ルーン。こういう時ドうするか知ってるか?」
「分からないけどろくなことじゃないのは分かる」
「答えは、『とりあえず当たって砕けろ!』だ!」
「砕けちゃダメなんだけどなー!」
そう言いつつも、もう剣を抜いてるじゃないか。
「一応、殺しはしないでおこう。昏倒させて全員縛り上げるよ!」
「もう分かった!」
「承知です!」
「───じゃあ、バトルスタート!」
『教えて!レイ八先生!』
「何でこんな時間に投稿したかは追及しないでやってくれ。作者にも色々あるんだから、そういうとこをちゃんと汲んでやるように」
「あー、今日は俺1人だ。読者のみんながメタいの好きなのかは知らん。でもこの作品自体、作者の妄想と趣味で成り立ってるんだ。文句言わないように」
「今日は本編では書かれていない、作者がノリで書いたせいで忘れていた設定を教えようと思う。『これからは気を付けます』と本人は言っていたが、信用するな。多分またやる」
「本題は、『《虹龍》の刀身が透明って設定、忘れられてるんじゃい?』ってことだ。なぜルーン、副団長、騎士団が《虹龍》の刀身が透明なことについて何もツッコまないのか。実際俺も気になってた」
「作者からもらったその答えは、『透明というか、ガラスみたいな感じなので、よーく目を凝らせば見れるんですよねー』ということらしい」
「………あとで作者シバいとくから安心しといてくれ。他にも、気になるところがあったら、感想に送っといてくれ。随時、俺が解説しよう。では、次の話をお楽しみに」




