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エレオノーラVSサラ

春から夏へと移り行く乾いた風に乗り小鳥の囀る声が聞こえる静寂の中、テ

ィーカップとソーサーが奏でる硬質な音だけが耳に響いている。

その静寂を破り、声を発したのはセリアだ。

「エレオノーラ様、どうされますか?」

「どうする・・とは?」

「ウチの5位と仕合ってみますか?良い勝負になると思います、全力を出せ

る様にサポートさせて頂きますが?」

困惑顔のエレオノーラにセリアが追加で説明をした。

「剣は私達と同等品をお貸しします、当たっても切れない様にも出来ます、

但し衝撃は面拡散でそのまま伝わりますが如何いたしますか、本気で斬り合

えますよ?」

「・・・御願い・するわ」

訝しむエレオノーラを無視するかの様にセリアが指示を出す。

「サラ!相手をして差し上げて、サラは身体防御魔法のみ、純粋な剣技のみ

、暗器無しで闘いなさい、ニナは剣を貸してあげて、エレオノーラ様の防御

は私がやります」

セリアのテキパキとした指示に追い立てられるかの様にサラとエレオノーラ

が対峙する。

「双方殺す積もりで構いません、それでは始め!」

最初に動いたのはサラ、透かさず突進すると動きの悪いエレオノーラの右足

太腿を切り上げる様に振り抜く。

虚を突かれたエレオノーラは右足を後ろへ蹴上げ前方へ倒れつつ体を右へ捻

り躱そうとするが僅かに弾かれ態勢を崩した。

レイピアの遠心力を使い左回転をしたサラは間髪入れずにエレンに向け、胴

体を寸断するべく上段切りへと移行し振り下ろす。

仰向けに転倒寸前のエレオノーラは正面に右へ流した剣先を振り下ろされた

レイピア目がけ水平に切り払い難を逃れた。

エレオノーラに剣筋を逸らされ、地面に吸い寄せられるレイピアを制御する

サラの隙を利用しエレオノーラは地面のバウンドをうまく使い1回転のみで

立ち上がり剣を構えた。

ここまでは5分の攻防、互いに隙を窺い数瞬の間、静寂が場を支配する。


軽く正剣突きで牽制するエレオノーラに距離を取るサラが一瞬視線を逸らす。

それを見逃すエレオノーラでは無い。

一気呵成にリーチの差を生かし正剣突きを繰り出すもサラの口角が僅かに上

がった事に誘われたと気付いた時には既に遅かった。

サラはエレンの刃に己の刃を側面から軽く当て剣筋を逸らすと共に充てたま

まエレオノーラへとスライドさせ、エレオノーラの剣を押し飛ばすと共に斬

り伏せた。

「そこまで!!」

セリアが勝敗の決着を宣言する。


セリアは防御魔法を解除し、エレオノーラに治癒魔法を掛けながら尋ねる。

「如何でしたかエレオノーラ様、当店の5位は?」

「痛っ・・あれで本当に5位なの?この私が、僅か2合で終わったのよ?」

「それは違いますわ、最初から2合で終わらせる積もりだったのです、エレ

オノーラ様はサラの初手から術中に嵌まってしまったのです」

「それはどう言う事ですの?」

理解出来ずに困惑顔のエレオノーラを諭す様にセリアが説明を始めた。

「貴女とサラの使っていた剣は明らかに長さが違います、リーチの差を使っ

てサラの足許を狙った場合、サラは動きを封じられます、それを嫌い先手の

初撃で足許を狙えば足許へ剣を振らせない為に上半身に攻撃が集中しがちに

なった相手に、動ける上に予測し易くなります。

にらみ合いで正眼に構える貴女は隙を突いたリーチを生かした刺突と攻撃が

予測出来る訳です、それに貴女は構えた時と刺突を狙っている場合、腕の位

置が明らかに違います、下がった腕に刺突と判断したサラは貴女の考える時

間を奪うべく直ぐに視線を逸らし貴女を誘ったのです、貴女は伸長を稼ぐ為

に刺突の時に腕の位置が下がり一歩踏み込む癖が有るようです、それは貴女

の傲りでも有り、甘えでも有るのです、御注意を」

「・・・様は手の平の上で転がされたと」

「言うなればそう言う事ですね、剣の腕前と言うものが反応速度だけでは無

いと御理解頂けて幸いです」

「誰か指南役として派遣して貰えないかしら?」

「私の目の届かない場所で実剣での鍛練は認めかねますし、当方にも予定が

有りますので御辞退させて頂きます」

「そんなに強い方を集めて何をする積もりなのかしら?唯の護衛要員では無

いわよね?」

「そうですね、当面の目標は全ダンジョンの完全踏破です」

「そんな無茶な・・」

驚くエレンを他所にセリアが続けた。

「無茶では有りませんよ、既に4つ攻略済みですし1つは単独踏破です、エ

レオノーラ様なら単独でも40層は行けると思いますよ?ヒーラーは要るで

しょうけど」

「そんな高位のヒーラーなど聞いた事無いわよ?」

「現実的には居るのですが、ダンジョンに携わっていないと高名には成りま

せんから」

「言われてみれば確かに・・では私も連れて行って貰えないかしら?」

「例え依頼で有っても“お客様”を連れてでは命の保証が出来かねます、エレ

オノーラ様は人族で魔法を使えないので100層辺りで1発喰らえば瞬殺、

遺体すら遺る事は無いでしょう、貴族の、しかも大公の御嬢様がそうなった

場合どうなると思いますか?」

返事が出来ぬままベンチへと誘われたエレオノーラは飛んでも無い事を口に

した。

「では貴族で無ければ連れて行ってくれるのですね?」

「残念ですがそう言う意味では無いのです、ダンペールの名を捨てて頂く事

に成ります、家には帰って来れますが果たしてその気に成るかどうか」

フローラが狼狽えながらも口を挟んだ。

「それは出家しろと言う事ですか!?」

「ダンペール大公がお認めに成らなければそうでしょうね、どの道ダンペー

ル大公がエレオノーラ様の出家はお認めに成らないでしょう?フローラさん

にも言って置きますが貴女がもしも付いて来ると言っても同じです、軍を辞

め、家名を捨てなければ同行は認めませんので御承知置きを」


その後依頼書にサインを貰い帰路に就いたが、エレオノーラ様は椅子に座っ

たままピクリとも動かなかった、嘘は言っていないしあれだけ脅して置けば

大丈夫だろうとは思うのだが、半分諦めている自分が居るのも確かだった。











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