ダークエルフの困惑
翌27日朝ライカ領ネロ領邸謁見室
「なぁクルス殿聞いたか、貴殿は共和国に100人規模の集団なら倒せる戦
力は無いと言っていなかったか?」
「・・・・確かに申しました」
「今の連絡兵は何と言っていた?夕刻には街道は整備され兵士の死体は全て
街道脇で冷え切っていて敵兵らしき死体は一体も無かったと言っていなかっ
たか?」
「・・確かに」
「あの現状の報告は凄かったな、半数は一刀両断、3割は剣も体も細切れと
は一体どんな軍勢なのだろうな、貴殿なら知っているのではないか?」
「申し訳ありませんが存じておりません、本国に問い合わせるにしても
早馬でも往復で20日近く掛かりますので」
「帝国に通じる街道は後2箇所、兵は街道を避ける様指示し既に送っている
もう着く頃合いだろう、距離的におよそ10日後に襲撃の報告が有ればリベ
リオにも多数の軍勢、15日以上で有ればイラリオのみの軍勢であろうな」
「そうなりますね」
「所で貴殿の所から間者を送る気は無いか?」
「と、申しますと?」
「わが国も兵を無駄死にさせる程揃えられる訳では無い、わが国の鑑札で今
は共和国には入れん、況してやライカ人と見た目で判るからな、その点貴殿
達なら問題無かろう?イラリオかリベリオに密偵を送って情報収集をして貰
いたいのだ」
「承りました、準備出来次第出立させます」
ダークエルフ、ライカ領政務外交官クルス・トルバレスは苦虫を噛み潰した
様な顔で退室するのであった。
「閣下、どうされますか?」
ダークエルフ、アルリア駐在政務外交官のマルク・ラスペールは今、アルリ
ア駐在大使のラザロ・ブランキーの返答を待っていた。
「情報部は何と言っている」
「手を引くべきだと」
「そんな弱腰でどううするのだ!あれを手に入れればこの世界を手に出来る
のだぞ!!」
「そう言われましても、閣下はあれに勝てる積もりでいらっしゃるのですか
?」
「そこを上手く手の上で転がして見せるのが情報部の仕事でもあるのだろう
!」
「万が一失敗した場合に処分出来るならやるでしょう、然しあれの場合失敗
すれば、最悪我が里が滅びますよ?閣下も見たではないですか、あのアルリ
アが公開したステータスを、既に人外で殆ど神の領域です、それに我らが首
都テレスにも支店が出来ると領主が喜んで言っておられたとの事です、領主
の許可無く対外工作を続けますと問題が起きた時に失脚されるのは閣下なの
ですよ?領主の喜び様を見ますと表面的には融和に転換された方か得策かと
思われますが?御家族の事を考えますと失脚されるのは不味いのではないか
と」
「・・・・・・私は・・ここに居ない方が良いのかも知れんな・・」
「軍に戻られれば里ですし奥様もお喜びに成られるのではないですか?」
「・・・そうなったら君を推挙しておくよ、君は物腰が柔らかいからな」
「有り難う御座います」