2話
何も気にしてない風を装って、むつはクッキーをとると、1枚を晃の口の前に持っていった。少し、引くような仕草を見せたが、晃は大人しくクッキーを口の中に入れた。
「んでさぁ…聞きたかったんだけどね。しろにぃも篠田さんも先輩もいちにぃも、この件に関わっちゃうわけでしょ?4人のメリットにはなるの?例えば、出世の足掛かりになるとかさ」
クッキーを噛みながら、晃は少し首を傾げた。そして、ソファーの上であぐらをかくとむつの膝裏に腕を入れて、さっと持ち上げると、足の間に座らせた。
「うわぁっ‼なーにすんの、びっくりした」
大きなぬいぐるみでも抱っこするように、晃はむつを抱き締めた。後ろから抱きすくめられているむつは、逃れようとするも、がっちりとした太い腕はなかなか動かない。
「重たくないの?」
「まぁ、そうだな。大きくなったし、重たくなったな」
「いつと比べてるの?」
「小学生かな?」
むつは、晃の膝をぱしんと叩いた。
「怒るなって。メリットか…無い事はない。だから、余計に嫌なんだよな」
「どーして?」
「妹の手を借りて作るメリットなんて、かっこ悪いだろ?」
「それは、ほらお互い様だよ?あたしも都合よくお兄ちゃーんって言うし、警察に貸しを作るのも悪くないと思う。篠田さんとこの、こさめとも仲良くなれたのも、強みよ」
むつが得意気に言うと、晃は少しだけ笑った。そして、ぎゅーっと力を込めてむつを抱き締めた。むつは、うっと呻いたもののそのまま耐えていた。