2話
晃の元を後にしたむつは、駐輪場に戻りながら、冬四郎に電話をかけた。暇だったのか、冬四郎は運よくすぐに出た。
『よぉ、むつ。おはよ』
「おはよって…もうお昼よ?」
『まぁな…寝てないから止まったら寝そうだ。お前、遅刻しなかったか?』
余程、眠いのか珍しくも冬四郎はそもそとした喋り方だった。
「遅刻した…ってより、颯介さんからの電話で起きて、いちにぃの所に寄ったからまだ出社してないの」
『…受けるのか?』
少し間を開けて、冬四郎の少し緊張感のある声が聞こえた。
「うん…社長が心配だし。しろーちゃんといちにぃにメリットがあるな、ね」
『兄さん、どんな様子だった?』
「ちょっと変。あと、じんじんする」
『じんじんする?』
「いちにぃね、昔だけど。落ち込んだりすると、あたしを抱っこして後ろから抱き締めてくるのよ。それを久々にされて、力強いから痛かった」
ぶはっと冬四郎の吹き出す声が聞こえ、ややあってから笑い出している。
『そりゃ痛そうだな。お前、可愛がられてんなぁ、良かったなぁ』
「羨ましい?しろーちゃんもして貰ったら良いよ」
『やーそれは気持ち悪いし、想像すると寒気と命の危険を感じるな』
「分からなくはない。あ、でそう、あのね、明日いちにぃと沼井さんに会いに行ってそこで話をして本決まりになるか、な」
『兄さんと一緒に?』
「1人で行くなって。まだ何かあるのかもね…また決まったら報告する~今から会社行かねば」
あはは、と口先だけで笑いながらむつは電話を切った。そして、バイクにまたがると何食わぬ顔で颯介の待つよろず屋に出社した。




