2話
颯介が帰っても、むつはしばらくオフィスに残っていた。もしかしたら、山上が顔を出すんじゃないかと思った。だが、顔を出す事はなかった。
仕方なくむつは、戸締まりをしてよろず屋を後にした。そして、今日は駅に向かい電車でゆっくり向かう事にした。
仕事や学校帰りの人で混雑する車内で、むつは携帯を出して何となくウェブサイトを見たりして着くまでの時間を潰していた。
最寄り駅に着き、吐き出されるように出ると、のろのろと階段をあがり改札を出た。そこで、後ろから歩いてきた人がむつに並んだ。むつが横を見ると、西原だった。
「よっ、お疲れ」
「お疲れ様。先輩も呼び出し食らったのね」
「そういう事…何だろうな。話って」
西原はむつの歩調に合わせるように、ゆったりとした歩きながら少しだけ表情を曇らせた。
「さぁ?」
「ま、行けば分かるな。それより、どうだ?あれ以来、不審者とか大丈夫だったか?」
「へ?あ、うん。大丈夫、大丈夫…もしかして、心配してくれてた?」
「そりゃあな…後ろ姿さえ、見れなかったから気を付けようがないし」
「ありがと。大丈夫…何かあったら、先輩がちゃーんと助けに来てくれるって思ってるから」
むつがそう言うと西原は歯を見せて笑い、任せとけと請け負った。