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4話
「良いんですか?…けど、忙しいんじゃ…」
「良いのよ。若い子がこうして興味を持ってくれてるんだもんね。わたしも、あと1時間は休憩で暇だから気にしないで」
「有り難う御座います。でしたら…お言葉に甘えさせて頂きます」
むつが元気よく愛想よく言うと、女性は鑑賞教室用のパンフレットを出してくれた。むつは料金を支払うと、女性に連れられて館内に入っていった。
チケットの半券を切り、入っていくと吹き抜けの大きなロビーに出た。
「資料展示室に先に行きましょうか。受付前のロビーは公演予定とか建物案内、建物の歴史しかなかったでしょう?」
「はい。ここでは漫才も公演されてるんですね」
「そうなの。色々、やってるのよ。歌舞伎に能楽、人形浄瑠璃が主なんだけどね」
「能楽は…面をつけて舞いをするやつってくらいの感じにしか分からないんですが…」
「そうよ。そのくらいで良いのよ、お嬢ちゃんは、何に興味があったの?」
お嬢ちゃんと呼ばれ、何歳に見えてるんだろうとむつは思ったが、若く見えてるなら都合良さそうとだけ思った。




